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飲料開発ほぼゼロだからできた、お茶に“健康”という付加価値 『ヘルシア緑茶』が変えたユーザー意識

 2003年に花王から発売された『ヘルシア緑茶』。350ミリリットルで180円(当時)と少し割高ながら、当時一般化し始めていたペットボトルの“茶系飲料”に、“健康”という新たな付加価値を加え、業界に大きな衝撃を与えた。その後、現在まで続く“健康ブーム”の火付け役ともいえる同商品は、どのようにして人々の生活に浸透していったのか? 当時、飲料開発の実績がほぼなかった花王がなぜ動いたのか。当時の時代背景や人々の健康への意識の変化について、同社のライフケア事業部門 ヘルス&ウェルネス事業部 ブランドマネジャーの柳田雄一氏に話を聞いた。

健康油『エコナ』での“脂肪代謝”研究の知見をいかし、飲料開発に挑戦

 そもそも、日本の“茶系飲料”が本格的に一般向けて発売されたのは1980年代。伊藤園が、それまで長時間の品質保持が難しく、家で急須から淹れて飲むのが一般的だったお茶の飲料化に成功。お茶が缶飲料として「外でも飲むもの」になっていった。さらに1990年代に入ると、伊藤園の『お〜いお茶』(伊藤園)の大ヒット。1997年頃には500ミリリットルのペットボトルが普及すると、「手軽に持ち運べるもの」に進化。以降、各社から発売され、飲料業界における“茶系飲料”の消費は拡大の一途をたどっていた。

 花王で『ヘルシア緑茶』の開発が始まったのは、そんな時代を背景にした2000年(発売は2003年〜)。「当時、お茶のペットボトルのカテゴリーはまだまだ伸びていくという予測をしておりました」(柳田氏/以下同)と話すが、花王といえば、洗剤や石鹸・シャンプーなどの日用品や美容商品などのイメージが強いメーカー。当時実績のなかった“健康飲料”の開発を決断したきっかけは、同社が販売していたある商品が関係していた。

「弊社では当時『エコナ』という健康油の商品を販売しておりました。その関係で(ヘルシアに生かされている)脂肪代謝をはじめとした研究に1980年代から取り組んでおり、深い知見を持って健康事業に携わる人材がたくさんいました。そうした研究での成果を(『エコナ』以外にも)何とか人のために使いたい、世のために生かしたいという背景がありました」

健康食品で一番大事なポイントは「いかに手軽に継続して摂取してもらえるか」

 ただ、当時は今ほど“健康”への意識が高くなく、「メタボリックシンドローム」などの言葉もまだ一般化していない時代。一方で、厚生労働省の「栄養調査」を見ると、平成8年(1996年)以降の報告書で、「30代〜60代の男性の、1/3ほどに過体重・肥満がみられる」というようなデータがでており、花王が考えたのは、“健康”を必要としている人に、いかに届けるかだった。

「『売れる売れない以前に、本当に健康が必要なのは誰なのか?』という視点から消費者を定めたときに、弊社が目をつけたのが40〜50代の男性。日本人の特徴である内臓脂肪型肥満が多いことに着目し、そこにターゲットを絞りました。当時、ダイエットの観点から、女性向けの痩身を目的とした商品は出ていたと思うんですが、内臓脂肪に着目した健康を切り口にした商品はそこまでなかった。2000年頃は、男性1人の摂食が増えた時代でもあり、そこにどうアプローチするのか考えました」

 健康食品としては当時では珍しい中年男性をターゲットにした商品開発。特に花王は“脂肪の代謝”に関する知見に秀でていたため、そこで“茶カテキン”の効果に注目する。

「体脂肪の中には皮下脂肪と内臓脂肪があります。『ヘルシア』は諸悪の根源である内臓脂肪に効く飲料。臨床試験では12週間連続で毎日飲んでいただくと、腹部全脂肪面積が25平方センチメートル減るという効果が見られました。健康食品業界で一番大切なポイントとである『いかに継続的に摂取してもらえるか』を考えたところ、手軽なペットボトルの“お茶”の開発へと行き着いたのです」

 開発について、あまりにも新たなチャレンジであるため、そのコストも膨大。柳田氏も、「社内で『日用消費材の会社がいきなり飲料業界に行って成功するのか』という反対もありました」と話すが、社外での反応は、そういった声を打ち消すかのように、好評だった。

「発売前に、飲料系のバイヤーさん、流通関係の方々に、『ヘルシア緑茶』のコンセプトが、どう受け止められるかとヒアリングしたところ、『お茶に健康的効果が付与された商品』ということに“新しさ”を感じてくれた人が多く、『ぜひ置いてみたい』という声が多数あったと聞いております。また、メディアの方も、『これまでにない物』が新たに出てくる期待感みたいなものを感じてくれて、自分事化してくれたおかげで、こちらからお願いしなくても、さまざまな媒体で紹介していただいたのが非常にありがたかった、と伺っています」

あの“苦み”はわざと残した?「健康を効果実感してもらえる」

 こうして、2003年に発売された『ヘルシア緑茶』は、当初のターゲットである中年男性だけでなく、女性も含めた幅広い層に愛され、空前の大ヒットを記録。その売れようは、茶系飲料の年別の販売数をグラフ化したものを見ると、発売された2003年を境に急激な角度で伸びるほど。350ミリリットルで180円と従来発売されていたお茶よりも少し高めながら、「少し割高でも“健康効果”を得られるなら」と、特にコンビニで飛ぶように売れたことが大きな要因と言えるだろう。

「一般的なのお茶よりも(脂肪代謝効果のある)茶カテキンの含有量が多いので、多少高くなるのはビジネス上しょうがない部分。ただ、男性サラリーマンをターゲットにしている以上、あまりにも高額な金額では受け入れ性が低いと考えたため、毎日コンビニで気軽に手に取ってもらえる金額ということで180円という価格になりました。また、食事はもちろん、いろんなシーンで飲んでもらえるようにペットボトルにして、常に人々の生活に『ヘルシア緑茶』が寄り添えるようにしました」

 “健康効果”を得られている実感として、真っ先に、思い起こされるのがあの独特な苦味。これは、茶カテキンが普通のお茶の5倍入っていることに由来するのだが、研究に研究を重ね、ある程度調整できるなか、その“苦味”は敢えて残したという。

「継続して飲んでいただいている方々からも、『あのガツンと来る苦味がクセになる』というお声をいただいています。また“良薬、口に苦し”と申しますが、その言葉通り、その“苦さ”が効果を実感することにつながるという意見もあります。そもそも、味だけ美味しいお茶を飲もうと思ったら、他を探すと思うんです。でも『ヘルシア緑茶』は健康というものを意識して飲むので、やはりそういう効果実感を感じることが重要。すっと飲めるものはそのまま通り過ぎるのですが、苦いものはなんか体に良さそうな感覚を残すことができる。最初の一口の違和感、“ガツン”で、効果を実感し、それがクセになる、という味を追求し、それがお客様の舌と脳に響いていったのだと思います」

「ダイエット」の本来の意味は“痩せる”ではなく「生活」「生き方」

 2003年の発売から19年。当時ヒットしつつあったペットボトルのお茶に「健康」という“付加価値”をつけた『ヘルシア緑茶』。現在につながる「健康」ブームの一助に同商品がなったことは言うまでもないが、人々の健康意識はどのように変化していったのだろうか?

「発売当時『痩せたい』などの想いはあったと思いますが、健康意識は、今と比べるとそこまで高いものではなかったそうです。ですが健康は生活に直結します。40〜50代になって不健康になると自分のやりたいことができなくなる…その“生活価値”に落とし込む“文脈”が、時代と共にどんどん発達していった感覚があります。自身が健康でいること、痩せていることが自分のありたい姿にもつながりますよね。高度成長期やバブルの時代は“物”で解決できていたかもしれませんが、今は多分、“物”だけではなくデバイスを含めたソリューション(解決や解答)が求められている。健康へのソリューションが求められ、デバイスにより実感も結果も出ていく。ソリューションの進出と健康意識の高まりが相乗効果で高まっていったと弊社は見ています」

 そもそも、「ダイエット」という言葉の本来の意味は「生活」「生き方」だ。単に“痩せる”というニュアンスから、語源の意味に近づいているのが現代。『ヘルシア』という商品名も、元々の意味は「ヘルシー・シスト」。「健康というゴールを決めるのは、あくまでもお客様であり、ヘルシアはそのアシスト役。自分がなりたいと思う姿や生活に近づくために、『ヘルシア』がアシストとして寄り添う。継続的に飲むというライフスタイル、その思想を実現していけるようなブランド商品として今後もあり続けたい」と柳田氏は語る。

 現在、飲料だけでなくヨーグルトなど、さまざまなトクホや機能性表示食品が世に出回っているが、今後市場はどのようになっていくのだろうか?

「トクホがあり、機能性表示食品も2015年から出てきました。さまざまな健康食品や飲料があふれているからこそ、何を基準に選ぶかは人それぞれ。国から認められたトクホというお墨付きに魅力を感じて下さる方も変わらず多い。今後もトクホという安心感は一定程度保たれ、今後も発展していくのではないかと考えられますが、それだけに頼らず、お客さまから信頼されるブランドになっていきたいと思います」

取材・文/衣輪晋一

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