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普段使い慣れているアプリケーションをそのまま利用できるというのが、学生にとって一番理想的。

一橋大学
情報化統括責任者補佐官 松村 芳樹様

導入製品

Google Apps for Education

会社概要

日本でもっとも古い歴史を誇る社会科学の国立大学法人 一橋大学。創立は、1875年 (私塾の商法講習所として誕生)。以来、常に学界を先導し、社会経済と文化の発展に貢献しながら国内のみならず、国際的に活躍する有為の人材を多数輩出しつづけている。図書館や資料室をはじめハード、ソフト両面の資源に恵まれているのも特長のひとつ。学生総数 6,517 名 (男子 4,567 名、女子 1,950 名)、教員数 482 名 (2007 年 5 月現在)。

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一橋大学

普段使い慣れている Google Apps を導入することで、
学生のメール利用率アップ、利用満足度の向上を実現。

24 時間 365 日。止まらないサービスを提供したい

「Google Apps 導入以前は、学生一人当たり 200MB のメール容量を提供していました。しかし、悪質なスパムメールのために、日常的に受信トレイを整理しないと、すぐにメール容量が限度を超えてしまい、新しいメールを受信できない状況となっていました。こうした状況にうんざりした学生達は、学内のメールシステムを利用しなくなり、やがて入学時に提供したメールアドレスも有名無実のものとなっていました」。一橋大学総合情報処理センター助手の松村氏は、Google Apps 導入以前の学内のメールシステムの問題点について話し始めた。

同大学が、大学間コンピュータネットワークを構築したのは、1990 年のこと。国内でも先駆的な試みとして注目を集める。1994 年には、電子メールサービスを開始。この当時のシステムが、バージョンアップを重ねながら Google Apps 導入直前まで採用されていた。

「アカウントごとのメール容量を増やしたり、スパムメール防止対策をいくら試みても一時しのぎでしかなく、根本的な解決とはなりませんでした。つまり、最新技術とスパム業者との『いたちごっこ』です。また、保守点検時やキャンパスが停電した際には、サービスを停止せざるをえないといった問題も抱えていました。24 時間 365 日、サービスを止めることなく、学生に優れたサービスを提供したい。しかし、学内で実現するためには、膨大な開発コストと人的リソースが必要になってしまいます」。

このようなジレンマを抱えながら、ニーズを満たすソリューションを模索していた際に、1 本のニュースリリースを見つける。Google から発表されたニュースリリースには、2006 年 2 月より、サンノゼ・シティ・カレッジ (SJCC) と「Gmail for your domain」という共同プロジェクトを始めること、このプロジェクトで Gmail を大学のメールシステムとして利用し、その対象数が 1 万人以上であることが記されていた。このニュースリリースを読み、やがて日本国内の教育機関向けにも同様のサービスが提供されることを確信した松村氏は、さっそく Gmail の機能評価を始めた。翌年、「Gmail for your domain」は、「Google Apps for Education」として、日本でもサービスを開始した。

7,200 人の学生へ導入開始

度重なる評価と検討の結果、2008 年に Google Apps の導入を決定。導入を決定したポイントとして、スパムのフィルタ機能に優れていること、API が豊富で学内のシステムと統合しやすい点、保守・管理面における大幅なコスト削減を実現できること、があった。

「導入に際して、複数の選択肢がありました。まずは、開発そのものを本学で行なうか否か。情報系を有する理系大学であれば、先端技術を利用した情報インフラを整備することを一番に考えるかもしれません。しかし、本学は『社会科学の一橋』。そこで、学内開発という考えから発想の転換をし、企業提携というスタイルを選択しました。次に、どの企業のサービスを利用するか。この点においてポイントとなったのが、本学の既存システムと連携できるかどうか、ということでした」。

同大学では、アカウント管理のために、Google の API を利用して LDAP と同期するための小規模な開発を行なっただけで、運用開始が実現した。

2008 年 4 月 1 日より、学部生、大学院生、聴講生を含め 7,200 名の学生を対象にサービスを開始した。

エンドユーザである学生からは、メール容量が十分すぎるほどアップグレードされたこと、さらにやっかいだったスパムメールのチェックから開放されたこと、に喜びの声が上がった。そもそも、多くの学生がプライベートでも Gmail を利用していたため、学内のメールシステムが新しくなっても大きな動揺はなかったという。

「普段使い慣れているアプリケーションをそのまま利用できるというのが、学生にとって一番理想的なのかもしれません。管理者としても、利用方法について詳しくトレーニングを行う必要もありませんし」と、ユーザならびに管理者双方のメリットを説明する。

携帯電話を日常的に利用する学生には、Gmail の携帯電話へのメール転送機能も評判のようだ。また、学生の利用率が向上するにつれ、かつて教員から寄せられていた「学生にメールを送っても確認されないし、読まれない」といったクレームもなくなりつつある。

コストをかけずに学生の望む環境を実現

一橋大学では、産業界をはじめ多様な分野において社会のリーダーとなる人材の育成をめざしている。キャッチフレーズは、『キャプテンズ・オブ・インダストリー』。国際化への推進にも余念がなく、50 前後の国々から 500 人以上の留学生が在籍している。また、毎年 40 名近い学生が長期留学を果たしているほか、学術交流協定を結んでいる海外の大学および研究機関は 50 拠点を超える。学術交流やコミュニケーション・コラボレーションなどを通して『より学際的な、そして、より国際的な大学』に向かうのが描かれたビジョンだ。

「そのためには、多言語に対応したネットワーク・ソリューションが不可欠です。しかし、理想と実際の環境を結びつけるためには、大がかりな予算が必要でした。しかし、特別のコストを必要とせずマルチリンガルな環境を実現できたのも Google Apps のおかげです。数多くの言語をサポートしているため、留学生が望む利用環境を提供できるようになりました。これは、大学にとっても意義深い。今後は、情報収集をはじめ学生の可能性を高めるツールとして、大いに活用されていくのではないでしょうか」。

Google Apps には、Gmail をはじめとするコミュニケーションツールのほかに、多様なコラボレーションを実現するアプリケーションがある。今後は、どのような使い方を視野に入れているのだろうか。「現時点では、Gmail をメインとした利用を考えていますが、近い将来、Google Apps の他のアプリケーションを利用して、遠隔地の研究者などとオンラインで文書を共有、共同編集したりと、研究や教育に活かしていくことを検討しています」。

さらに、管理者にとってのメリットとして、運用面において負担が軽減したため、ネットワークや情報リテラシーの教育、今まで後回しにしてきた研究支援への時間を捻出できるようにもなったことだと松村氏は言う。

Google Apps 提案当初は、学生の電子メールを学外のサービスで運用することに対する慎重論も囁かれた。しかし、2 年前より総合情報処理センターによって評価を行っていたため学内の理解を深めることにはさほど時間がかからなかった。そのことを振り返り、松村氏は言う。

「国立大学は、導入決定まで時間を要する傾向があるのですが、『一橋大学が導入した』という前例が追い風になっていけば嬉しいですね」。