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Android 端末があれば、その場で空室状況を確認し、その場でクロージングをすることができる。この差は非常に大きいと思っています。

営業企画部 マネージャー
住本卓巳氏

導入製品

Google Apps for Business

会社概要

1956 年に東急観光株式会社として創業以来、全国 世界各地にネットワークを持つ国内有数の旅行会社として発展してきた。2006 年に会社創立 50 周年を迎え、社名を同社の商品ブランドとして長く親しまれてきた「トップツアー」に改め新たなスタートを切った。創業時より団体旅行を得意分野とし、教育関連、企業・法人、官公庁などから広く利用されている。そのため、渉外営業を事業の核として展開しているのが特色。

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トップツアー株式会社

Google Apps for Business + 約 1000 名の営業担当者全員に Android 端末を導入。「歩く店舗」という究極の効率化を目指す。

経常利益率 1% 程度の生産性をいかに高めるか

旅行業大手のトップツアー株式会社(旧・東急観光)は、2010 年 4 月から Google Apps for Business の全社一斉運用を始めた(従業員数約 1800 名)。その背景には、従業員の大半を占める営業部門の業務効率化への強いニーズがあった。「旅行業界全体にいえることですが、経常利益率が 1% あればいい方といわれる生産性をいかに高めるかが積年の課題です。そこで、当社も私の所属する営業部門を中心に、部門横断的なプロジェクトを作り、その対応策に取り組んでいます」と旅行営業本部営業企画部部長の脇坂克也氏は言う。

同社のビジネスは、他社のようにネットを使って格安ツアーを大量販売するといったことではなく、企業や官公庁、学校など法人を相手に団体旅行を提案・獲得するところに強みを発揮している。したがって、営業担当者の渉外業務が同社の事業活動の柱となっている。「即ち、生産性向上は一つの案件の提案・獲得から旅行後の入金までのプロセスをいかに短縮化するかということにかかっているわけです」

一方、同社では古くなったグループウェアの更新時期を迎え、2009 年 8 月からその検討を始めた。その検討ポイントに、営業活動の生産性向上があったのはもちろんである。「当時のグループウェアは社外からのアクセスを完全に制限していたので、営業現場からはモバイル端末でアクセスできるようにしてほしいとい出力や報告書の作成といった作業が必要となるたびに帰社しなければならず、非効率の温床となっていた。しかしながら、システムとしては社外からのアクセスも不可能ではなかった半面、セキュリティ面から開放するわけにはいかなかったのである。「国内外に拠点が約 100 カ所あり、それらにおける社外からのアクセス運用ルールを本部ですべて管理するのは事実上不可能。したがって、アクセスそのものをシャットアウトするしか手がなかったのです」と安原氏は述懐する。それ以外にも、動作が重く(遅く)なって情報の検索に時間がかかるなどの問題も生じていた。

約 1 億円の増益効果が出せると試算

脇坂氏と安原氏は生産性向上プロジェクトで連係し、既存のグループウェアのバージョンアップおよび代替システムの導入を比較検討。代替システムとしてまず挙がったのは、脇坂氏がメールマガジンで興味を持ったある CRM のシステムであった。しかし、検討を進めると、営業担当者が最も活用するメールやカレンダーはほかのシステムで補完する必要があること、CRM の部分は既存の自社のシステムが使えることが判明。一方、その CRM システムを通じて "クラウド" の魅力を再確認し、検討プロセスで知った Google Apps for Business に注目した。「実際は一気に 1800 アカウントで始めましたが、30 アカウント程度と小さくスタートさせることもできること、月額のランニングコストが 1 人あたり 500 円という安さ、そして様々な機能が使え、しかも Google サイドで常にバージョンアップをしてくれるという将来への発展可能性、機能拡張性などを評価しました」と脇坂氏。安原氏も次のように続ける。「既存グループウェアのバージョンアップでは、肝心の社外からのアクセスにセキュリティや操作効率を伴わせることが難しく、根本的に変えるということにはなりません。Google Apps for Business ならば、脇坂の言うメリットに加え、社外からのアクセスも容易になります。セキュリティ面においても、その堅牢さにおいて全世界でサービスを提供し続けていることに安定感や信頼感を持ちました」

そして、同時に Google Apps for Business に親和性の高い Android 端末の全営業担当者約 1000 名への導入もセットで検討。これによる生産性向上で少なくとも約 1 億円の増益効果が出せると試算できた。また、Google Apps for Business の総導入費用は、グループウェアのバージョンアップの 40% 程度で済むことと合わせ、経営会議に提案。2009 年 12 月に正式に導入が決定された。

Google ドキュメントで手間を大幅に削減

要件定義および移行のための開発作業に 3 か月ほどをかけた。その間、既存のグループウェアで使っていた約 70 種類のデータベースを 30 ほどに集約し、Google サイト に移し替える作業を行った。「移行作業は内容を熟知している社内の人間が行ったほうがよいという判断で、人事発令も伴わせながら半ば強権発動して 3 週間かけて行ってもらいました。この作業が今回の導入プロセスで一番きつかったと思います」と脇坂氏は述懐する。しかし、Google Apps for Business および Android 端末を導入後、まもなく効果が表れ始めた。「通勤時間を利用してメールチェックできる、報告書などを書くためにいちいち会社に戻らなくても済むようになった、メールを検索で探せるのが便利、といった時間節約効果が出始めていますね。また、メールボックスの容量がそれまで 1GB であったところが 25GB に増えたので、『もうメールを削除しなくていいですよ』と伝えたら、社内にどよめきが起きました」と脇坂氏は笑う。それだけでなく、Google ドキュメント のスプレッドシートを活用して帳票類の作成業務を効率化させている。「それまでかかっていた、帳票をメール添付で送り、回収して集計するという手間が大幅に削減できました。社内に一種のカルチャーショックが走りましたね(笑)」と安原氏は目を細める。また、掲示板機能を活用して社員による情報投稿を促進している。「例えば、いいレストランを見つけたら、お客さまとの接待やお客さまに情報提供できるので、みんなで共有しようというものです。この情報には Google マップ を連動させていく予定です」(脇坂氏)

その場で空室状況を確認、その場でクロージング

Google Apps for Business および Android 端末はまだ使われ始めたばかりで、脇坂氏らは今後のさらなる活用を目論んでいる。「現段階では既存システムとの連携で売掛金の状況や企画商品の空席状況などの確認をできるようにしましたが、今後は営業概況報告や各種申請を出先から Android 端末で作成・送信させることを検討しています」と営業企画部マネージャーの住本卓巳氏は言う。そして、Android 端末の活用による営業効率の向上を、脇坂氏は次のように目論んでいる。「これまでは、お客さまからホテル予約のご依頼を受けると、営業所に戻って予約状況を確認し、お客さまに報告し受注するという流れでしたが、急いでいるお客さまなどにはその間に他社にアプローチされてしまうという機会損失もあったわけです。それが、Android 端末があれば、その場で空室状況を確認し、その場でクロージングをすることができる。この差は非常に大きいと思っています。」「Google Apps と Android 端末による IT 武装の先には、全国の営業拠点のネットワーク再編や、SOHO 化、提携販売店への当社営業プラットフォームの貸与など、さまざまなことが考えられます。さらに、個々の営業担当者を "歩く店舗" にすることもできる。地方の営業担当者は車を使って営業していますが、営業車自体がオフィス化できる可能性があります。社内の営業スキルやノウハウなどを全員で簡単に共有する仕組みを構築し、時代の変化に対応した "仕事のしかた" を確立する、つまり BPR (業務プロセスの再構築)とそれによるコスト削減により、一層の生産性向上を目指します」と脇坂氏は続ける。

Android 端末を 1000 名を超える営業担当者に一斉導入するのは、日本初のケース。こうした先端性で、トップツアーは営業生産性の向上という課題を真っ先にクリアしていくに違いない。同社の将来が楽しみだ。