業界別デジタル マーケティングのトレンド 【官公庁編】

2016年11月11日

日本は今、世界の観光需要を取り込み、地域活性化・雇用機会の増大を図る「観光立国」実現に向けて取り組んでいます。さらに地方の人口減少に歯止めをかけて国全体の活力を高める「地方創生」も大きな課題です。日本の成長戦略に対して、デジタル マーケティングが貢献できることはなんでしょうか。

今回は、グーグル株式会社 広告営業本部 観光立国推進部長の陳内 裕樹に、地方自治体での成功事例を通じた、官公庁におけるデジタル マーケティングのトレンドを聞きました。

遅れている日本のデジタル マーケティングへの投資

- 日本の官公庁では、デジタル マーケティングへの取り組みはどこまで進んでいるのでしょうか?

世界的には、民間企業同様、国や自治体もデジタル マーケティングへの投資に積極的です。アメリカでは観光行政のマーケティング予算の約 6 割をデジタルが占めるというレポートもあります。一方アジア圏に目を移すと、タイは 45%。韓国は約 36%。対して日本はわずか 5% 未満で、特に地方自治体のデジタルシフトはまだこれからといった段階です。

官公庁のデジタル マーケティング 国別デジタル プロモーション予算

現在、訪日観光客は約 2,000 万人を数えます。2020 年までに 4,000 万人に倍増させ、2030 年には 6,000 万人を達成するというのが国の目標です。地域活性化には、経済波及効果の高い、海外からの観光客を呼び込むことが不可欠です。これは、旅行者一人当たりの消費額が海外観光客は国内の日帰り旅行者の約 10 倍という統計データ*1 から見ても明らかです。

*1 国土交通省観光庁「訪日外国人の消費行動(平成 28 年 4-6 月期)」「旅行・観光消費動向調査(平成 27 年)」

自治体のプロモーションこそ費用対効果の可視化が不可欠

- これまでの外国人観光客誘致のプロモーションにおける課題・問題点とはなんでしょうか?

訪日観光客向けに、英語・中国語・韓国語といった多言語の観光パンフレットを置く自治体はありますが、たとえば多言語対応のスマートフォンのアプリを制作するといった例はごくわずかです。また、自治体が運用する観光情報ウェブサイトも、パソコンからの閲覧向けで、スマートフォンに最適化されていないケースが多いです。

官公庁のデジタル マーケティング 訪日計画時の情報収集

一方、訪日観光客の情報収集方法は、圧倒的にデジタル メディアが多いのです。また、日本滞在中の情報収集にスマートフォンを活用している観光客が 68% にのぼり*2観光客の認知を向上し、来訪してもらうにはデジタル メディア、特にスマートフォン対応が必要です。観光地として知ってもらうことができない限り、彼らの旅行先の候補にすら選ばれないのです。

*2 国土交通省 観光庁 「訪日外国人の消費動向(平成 28 年 7月~9 月期)」

- これからの観光施策で必要なこととはなんでしょうか?

世界から注目を集める日本が様々な取組みを実施しているのはとてもいいことだと思いますが、ポイントは、その地域への観光客が増えたのかどうか、効果が見える化することではないでしょうか。税金を使ってプロモーションをするのであれば費用対効果を明確にすることが大切です。

デジタルでプロモーションの成果を可視化する

- 官公庁、地方自治体の観光プロモーションで、デジタルを活用するメリットを教えてください。

三重県伊勢市の事例があります。伊勢市では伊勢志摩サミットを契機に、海外観光客の認知度向上を目的に YouTube 動画広告を使ったプロモーションを実施しました。このときは試験的にサミット参加国の 1 つであるイギリス在住で、旅行に関心が高い層にターゲットを設定し、伊勢市の魅力を詰め込んだ美しい動画を配信しました。その結果、当初の目標であった 100 万回をはるかに上回る 180 万回再生を達成し、「Ise Japan」の検索数も大幅に増加しました。

伊勢市の YouTube を活用したインバウンド施策の事例

動画広告を完全視聴した人にターゲットを絞って、さらに情報を届けるリターゲティング機能もあります。たとえば伊勢市の場合なら、伊勢市の動画広告を見た人に対して、春には美しい桜の景色などを盛り込んだ動画を配信するなど、さらなるアプローチが可能です。

デジタル広告を使えば「広告を配信してユーザーのデータを取得し、その結果を振り返って再度アプローチする」という具合に、マーケティングの基本である PDCA の流れを作ることができます。

- 動画広告以外に活用できるデジタル施策にはどんなものがありますか?

日本に興味がある人に向けたバナー広告や、旅行の情報を集めている人に向けた検索連動型広告などがあります。たとえば東京駅周辺にいる人に、東京から 1 時間半で行くことができる静岡のイベントを紹介するというように、位置情報を活用した広告もあります。

こうした多様なサービスによって、自治体の目的や呼び込みたい外国人観光客の属性や行動に合わせて、プロモーション手法を使いわけることができます。

官公庁のデジタル マーケティング インバウンド施策について

「地域としてどうありたいか」の想いを実現するデジタル活用

- 自治体がデジタル マーケティングに取り組む際の心構えは?

デジタルの導入はハードルが高い、と感じている官公庁や地方自治体のマーケティング担当者の方もいらっしゃいますが、Google にはデジタルを活用した観光客誘致や地域創生を推進するチームがあります。デジタル化したいが、どこから手をつけていいかわからないというご相談も歓迎しています。デジタル化におよび腰な上司を説得してほしいというご依頼にお応えすることもあります。

「地域としてどうありたいか」という想いがあれば、Google はそれを実現できるパートナーとして支援します。効果的なデジタル マーケティング施策で、ビジョンと現状の間にあるギャップを埋めることができます。

デジタルシフトの流れは止まりません。デジタル マーケティングで観光客の行動とプロモーションの成果を可視化し、稼げる地域を作ることが必要です。私は日本における地方のポテンシャルは高いと思っています。多くの観光客を呼び込み、地方に活気を取り戻せれば、観光立国化、地方創生の双方を実現できるのではないでしょうか。

 

この記事のまとめ

  • 訪日観光客の情報源がデジタルにシフトする一方、日本の観光客誘致目的のデジタル マーケティングは遅れている。
  • 観光客誘致目的のプロモーションには、成果の可視化が求められている。
  • デジタルを活用することで、成果の可視化だけでなく、自治体の目的や呼び込みたい外国人観光客の属性や行動に合わせてプロモーションを行うことができる。

 

本記事の担当者

陳内 裕樹 Hiroki Jinnai
陳内 裕樹 Hiroki Jinnai
グーグル株式会社 広告営業本部 観光立国推進部長

大手旅行代理店にて ウェブ戦略を担当。Google に入社後は、日本における観光立国・地域創生を担当。デジタル マーケティングの導入支援や、未来の観光産業をテーマにした講演などを全国各地で行っている。観光立国推進協議会委員、東京ブランド推進委員、ジャパン・ツーリズム・アワード審査委員を務める。

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