巨人残留が決まった右腕、1年目13勝3敗と躍進した要因は?

 巨人のマイルズ・マイコラス投手(27)の残留が米メディアで報じられ、数日後、巨人からも発表された。今年は13勝3敗という成績で、巨人には欠かせぬ存在となった。見事に2年契約を手にした。

 一部ではメジャー復帰の可能性も報じられていたが、あるスカウトによるとマイコラスの評価はアメリカでは「決して高くない」というものだった。日本で実力を発揮したが、前出のスカウトは「今、マイコラスが戻ってもローテーションに入れるかどうかはわからない」としており、評価は来日前と大きく変わっていなかった。マイコラスはシーズンを通して投げられ、自身を高く評価しているジャイアンツを選んだ。自分自身をしっかりと見つめた契約だったと言える。

 最初はメジャーリーグと日本の野球に戸惑った。2ストライクまで追い込んでからが課題だった。「日本のバッターはミートしてくるのがうまい。それに追い込んでからファウル、ファウルで粘ってくる。向こうに比べると三振を取る数が少なかったと思う」。来日当初は2ストライクにすると、余裕の気持ちからか、意図せず軽い気持ちで投げたツーシームを痛打された。この繰り返しで要所を抑えられず、成績が伴わなかった。

シーズン序盤に原前監督からかけられた言葉

 外国人投手ならば、誰もが来日1年目のピッチングには苦労する。言葉や文化の違いに戸惑い、日本特有の調整方法に嫌悪感を示すことも多い。しかし、マイコラスは原前監督や投手コーチの言葉に耳を傾けた。発言や行動は奇抜なことも多かったが、球場内で見せる練習する姿はとても真面目だった。

 調子の上がらない4月中旬。ブルペン投球を見ていた原監督は「どうも違う。マイコラスはマイコラスで良いんだぞ」と声をかけた。

 2人の間にしかわからない感覚だったのだろう。マイコラスは「どこかで監督に良いところを見せようとする自分がいた。日本で成績を出せない焦りがあったのかもしれない。あの言葉で何か救われた気持ちになった」と見栄を張るのをやめた。

 日本語も覚えることにこしたことはないが、ストレスになるくらいならやめようと、開き直った。自然体にすると不思議と勝ち始めた。

印象に残っている打者は…、「アウトを取るのが大変なバッターだった」

 謙虚に物事を受け止めるようになった。「ミートを重視してくる日本ではいろんな球種、ストライクゾーンを広く使わないといけない。空振りを取るために配球、組み立てというものを学んだことが大きい。それをしないと勝てないと気がついた」。メジャーリーガーのプライドよりも、日本で1つでも勉強するという考え方に変えた。

 対戦したバッターで印象に残っているのは阪神の福留。「ホームランも打たれた。ヒットも打たれた。とにかくファウルで粘られ、アウトを取るのが大変なバッターだった。ベテランというのもあるが、彼も元メジャーリーガー。アメリカから来てた人との対戦に慣れている」と話す。

 粘るだけではなく、粘った後に打ってくる福留のしぶとさを感じ、日本人打者は簡単には打ち取れないという考えを持った。

 自分を冷静に、客観的に捉えられたことが13勝の成功につながったといえる。来年は相手も研究してくる。来日2年目、真価が問われる。