ニュース

ソフトバンク副社長の榛葉氏に聞く、“ノーカウント”プランの背景や是非

 ソフトバンクは、“動画SNS放題”とうたう新料金プラン「ウルトラギガモンスター+(プラス)」を発表した。

 同プランは、大手キャリアとして初めて、特定サービスのパケット通信量を“ノーカウント”にするサービス。同時に、一般的な2年契約では、端末割引施策の「月月割」を提供しない“分離プラン”としての位置づけも明らかにしている。

 8月29日に開催された発表会には、ソフトバンク 代表取締役 副社長執行役員兼COOの榛葉淳(しんば じゅん)氏が登壇、その内容を解説したほか、質疑応答の時間に報道陣からの質問に答えた。また本誌では、榛葉氏に単独インタビューをする機会も得た。

 なお「ウルトラギガモンスター+(プラス)」などについてニュース記事は別途掲載している。

ソフトバンク 代表取締役 副社長執行役員兼COOの榛葉淳氏

分離プラン、競合について

――“分離プラン”としての導入により、(端末と合わせて)トータルで支払う金額は今までと比べてどうなるのか。

 価格の比較は端末価格にもよるが、従来と同等か、もしくはそれよりお得な形で提供できるような、思い切った形にしている。

 キャンペーン期間中はすべて使い放題。それ以降も、動作・SNSが使い放題と、内容は従来よりアップしている。

――分離プランを導入する理由は?

 ユーザーの声に、そういうものも多かったというのがひとつ。従来からストレスフリーをうたい企画・立案してきたが、ひとつの選択肢としてこういうプランがあるべきと考えた。

 ただ、選択肢を広げるということ。月月割も残している。

――なぜ分離プランを求める声が多かったと考えているのか。

 ユーザーの利用方法、利用シーンの中で、そういう声も多かった。選択肢を広げるべきと考えた。

――ワイモバイルのユーザー層と競合するのではないか。その対策は。

 ソフトバンクとして、ワイモバイルのブランドも育ててきた。ワイモバイルはすでに新しい発表を行っているが、社内でも議論して、ユーザーが迷わないよう、利用シーンを(ソフトバンクとワイモバイルで)分けた形で企画・立案している。

 いわゆるカニバリ(共食い)は無いよう、準備を重ねてきた。懸念はない。

――“SNS放題”はLINEモバイルも提供している。食い合いの懸念は?

 検討の上であり、ユーザーの特徴などを踏まえ、分別できると考えている。

「ギガノーカウント」について

――“ノーカウント”は50GBのプランに適用されるが、容量の少ないプランに展開する予定は。

 現時点では「ウルトラギガモンスター+」のみで考えている。

――“カウントフリー”の導入で、網内でのデータ圧縮を行うのか。

 技術的な細部は重要なところで、コメントは控える。

――具体的にどうやって判別しているのか。DPI(Deep Packet Inspection)などか。

 各コンテンツプロバイダーの「識別子」を見ながらということになる。それ以上のコメントは控えたい。

――ノーカウントの対象サービスを選べないとなると、ネットワーク中立性の観点から問題もあるのではないか。どういう議論の結果サービス提供に至っているのか。

 事前に総務省にも確認し、これであれば問題ないと、(総務省と)相談しながら進めた。

 ネットワーク中立性の観点では、常にオープン。サービス開始当初の8サービスは、個別に話をして合意に至ったところと実施している。今後はオープンに、技術的にマッチしたコンテンツプロバイダーには是非、という形になる。

4割値下げ問題

――菅官房長官の「4割下げられる」発言が話題だ。今日発表のプランは、政府からの要望に応えられるものということか。

 通信事業に参入した時から、ソフトバンクはプライスリーダーとして自負を持って取り組んできた。安価に提供できるワイモバイルのブランドも育ててきた。選択肢としても、従来からのウルトラギガモンスターなどを含めて、お得に利用できるプランを、先進的に、リードして作ってきた。

 今回の「ウルトラギガモンスター+」は、従来と比較して、通信料が25~30%以上は割引される形になると予想している。この面でも、(要望に)応え、マッチしていることになるのではないか。

 補足だが、昨年までの、我々が頑張ってきた金額との数字。「ミニモンスター」の1980円という数字や、ワイモバイルの1480円という数字も、その意味では(政府の要望と)同じ方向ではないか。

――政府から値下げ圧力がかかることに対して、どう考えているのか。

 政府側からみれば、国民のことを考えての、今回の発言だと思う。我々はユーザーの声で判断している。最終的には、国民でありユーザーであり、同じゴールを見ているのではないか。

 我々は、より一層ユーザーの声を真摯に受け止めて、できることからやっていく。

――今回は「4割削減」ではないが、今後さらに値引きしていくのか。

 30%(下がる)という話もしたが、議論する場合に、比較を同じ土俵でしないと議論がおかしくなる。キャリアの事業は価格もあるが、品質も重要。海外にいくと通信でストレスを感じることは多い。

 4割という数字は大切かもしれないが、こうしたトータルで判断・議論していくことも大切ではないか。

榛葉氏にインタビュー

ソフトバンク 代表取締役 副社長執行役員兼COOの榛葉淳氏

――新規受付を終了するプランもいくつか案内されている。料金プランのラインナップを整理し、今回の「ウルトラギガモンスター+」を一番オススメのフラッグシップに位置づけるということか。

 結論として、イエスだ。

 スマートフォンが普及していく中で、我々はストレスフリーを標榜し、ソフトバンクとして最も優先順位が高い取り組みとして、昨年にウルトラギガモンスターという答えを出した。新規・機種変更の7割のユーザーが選び、90%のユーザーが満足と回答するなど支持を得ている。そういう意味でもやるべきことは、ウルトラギガモンスターを進化させ、ストレスを感じているところを改善したかった。

 50GBを60GBにするというようなことではなく、一番パケットを消費する動画とSNS、そのトップ2つをフリーにしようと考えた。8つのサービスでほとんどメジャーなところをおさえている。この時代、この内容は実質無制限ではないか。

――利用増が見込まれるが、ネットワークの対策を新たに行うのか。

 技術陣と議論を重ねた。大丈夫だ。これで遅くなったら大変だ。

 背景として、2016年に提供したギガモンスター、2017年のウルトラギガモンスターで、過去2年に渡って大容量プランを提供してきた。その蓄積したデータやノウハウ、マッシブMIMOの実績などを持っており、それが活かされている。

 また、長年エリアを拡充していく過程で、小セルで、今に至るネットワーク網を構築してきた。これは現在のような、通話よりもデータ通信、大容量通信の時代に即していた。こうした過去10年間の技術陣の取り組みも大きく貢献している。

――「月月割」は終了する方向なのか。

 社内でも議論したが、トータルでみたユーザーの支出は、それほど変わらない。

 もうひとつの議論のポイントは、(従来は)ユーザーから見て分かりにくいこと。モバイル業界の人ならともかく、一般の人、これからスマホデビューする人に「月月割」と言っても、その仕組みは分かりにくい。

 分かりやすさという意味では、今回のプランのほうが支持が得られるのではないか。

 長期の利用などでも変わってくるので、しっかりと説明して、(月月割があるプランを含めて)選択していただく。

――「月月割」が無いとなると、端末の購入方法は48回払いのプログラムが推奨されるのか。

 推奨しているわけではないが、高機能な(高額な)端末は、残債免除施策などもあり、結果的に選択されるのではないか。

――楽天への対抗という意味で、今回の取り組みは。

 今の時点で(楽天のことを)語るのは早計な部分はあるが、4キャリアとなった時点で比較して、私ならこのプランだなと、あるいはワイモバイルやLINEモバイルだなと、選ばれるようにしていく。今できることを、ユーザーの声を大事にしながら、各ブランドの特徴を活かして進める。ある意味では急がば回れで進めていく。