大坂なおみ選手をアニメで「白人化」と非難され、日清食品が謝罪

画像提供, Nissin

画像説明, PRアニメに登場する大坂なおみ選手(右)と錦織圭選手(左)

ハイチ人の父親と日本人の母親を持つテニスプレイヤー、大坂なおみ選手(21)は、全豪オープン(オーストラリア・メルボルン)で日本勢25年ぶりの4強進出、さらには日本勢初の決勝進出を果たした。本来ならばこの快進撃が、彼女に関する見出しの全てだったはずだ。

しかし、大坂選手のニュースにまたしても、テニスとは関係のない内容が紛れ込んでしまった。しかも今回も、漫画での描かれ方について。

今回はインスタントラーメンなどを展開する日清食品がPRアニメで、大坂選手の肌の色を実際よりも白く描いた、いわゆる「白人化」したと批判されている。大坂選手は日本とハイチの「バイレイシャル(二重人種)」だ。日清食品は大坂選手と所属契約を結んでいる。

なぜまたしてもこんなことになってしまったのか、大勢が首をひねっている。昨年9月には、オーストラリア人の漫画家が、大坂選手を小柄な金髪の白人女性として描き、セリーナ・ウィリアムズ選手の描き方と併せて物議を醸した。論争が終息するまで2週間かかった。

今回のキャラクターデザインを手がけたのは、漫画「テニスの王子様」の作者、許斐剛さんだ。許斐さんがソーシャルネットワーク上に絵を載せると、「なぜ本人とかけ離れた肌の色に変えるのか?」と疑問視する声が上がった。

テニス日本代表スポンサーの日清食品は、騒ぎになったことを謝罪した。同社広報は「意図的に白くした事実はない」とした上で、「配慮が欠けていた。今後は多様性の問題に、より配慮したい」と述べた。

一方の大坂選手は、この件についてコメントしていない。開会中の全豪オープンの戦いに集中しているのかもしれない。24日にはカロリナ・プリスコヴァ選手(チェコ)との準決勝に2-1で勝利し、全豪で初の決勝進出を決めた。

画像提供, Reuters

画像説明, 全豪オープンでウクライナのエリナ・スヴィトリナ選手を下し、4強入りを果たした大坂選手(23日、オーストラリア・メルボルン)

日本での人種問題

この騒動は、日本における人種と差別の問題を再び浮き彫りにした。

日本は今でも、極めて均質的な国だ。したがって、日本国内で人種や人種差別の問題が日常的に意識されることはあまりないのかもしれない。

しかし、日本における人種差別は繰り返し指摘されている。とりわけ2015年には、国連の特別報告者、ドゥドゥ・ディエン氏が、日本政府として対処するべき「深く重大な」問題だと警告している。

現在の日本では、人種についての考え方や、国の均質性に対する意識は変化している。日本で生まれた新生児の50人に1人は、大坂選手のような「バイレイシャル」だ。大坂選手は主にアメリカで育ったが、大阪で生まれている。

陸上のケンブリッジ飛鳥選手やメジャーリーガーのダルビッシュ有投手、柔道のベイカー茉秋選手は言うまでもないが、大坂なおみのようなスター選手でさえ、日本語で混血を意味する「ハーフ」と呼ばれる人々は、いまだに偏見にさらされる。

<関連記事>

米国人の父親と日本人の母親をもつ宮本アリアナさんが2015年のミス・ユニバースの日本代表に選ばれた時には、「ハーフ」が日本を代表していいのかと疑問視する声が上がった。

宮本さんは当時、大勢に応援されて勇気を得たと話していた。しかしBBCに対して、学校の親友が自殺したことを明かし、「バイレイシャル」として日本で育つ中で感じる孤独感が理由の一端だっただろうと話した。

自分も「バイレイシャル」で、日本で14年暮らすケイティ・サチコ・スコットさんは、香港紙サウスチャイナ・モーニングポストに対し、「私たちは活躍した時だけ、日本人だと認められほめられる」と話している。

日本で15年近く暮らすアフリカ系アメリカ人のバイエ・マクニールさんによると、日本でどれだけ差別されるかは、どこの国との混血なのかによって異なる。

中国や韓国など、日本人と外見がそれほど違わない場合に比べて、たとえば親が西アフリカ出身の人は、肌の色が目立つだけに、差別の対象になりやすいという。

だから日清のPRアニメは、大坂選手のハイチ系の特徴を薄め、肌の色を白っぽく、顔立ちも西洋人のように白く描いたのだろうか? そうではないかもしれない。

画像提供, Nissin

画像説明, 大坂選手の描かれ方が非難された

マクニールさんは「日本では、アニメのキャラクターは西洋風に描かれることが多い。そういうスタイルなんだ」と話す。

「しかし、アニメに登場するアフリカ系は、今回のような描かれ方はしない。明らかに茶色い肌の持ち主が、このように描かれるのは初めて見た」

しかも、マクニールさんが指摘するように、人気の漫画やテレビアニメのキャラクターのほとんどは、完全に架空の人物だ。一方で、大坂選手は実在する。

日本の意識変化

しかし日本では、人種への意識が変化している兆しもある。

2015年の宮本さんに続き、インド人と日本人の両親を持つ吉川プリアンカさんがミス・ワールド2016の日本代表に選ばれた時、人種に関する議論はほとんどなかった。そして、日清食品など、日本企業は自分たちの過ちから学んでいるようだ。

東京オリンピックやラグビーワールドカップなどの国際的イベントを控えているほか、日本を訪れる外国人観光客も増えている。こうしたことから、かつて世界から孤立していた日本は、日に日に少しずつ、世界と交わっている。

この変化は、マクニールさんに希望を与える。

人種差別に反対する目立った運動はないものの、「これまでのように気付かないふりはできなくなってきている」とマクニールさんは言う。