大分県職員自殺、遺族が憤り 「孤立無援の中で」

 大分県福祉保健企画課の富松大貴さん=当時(26)=の両親が4日、息子が昨年6月に自殺したのは過重労働が原因として公務災害認定を申請した。県庁で記者会見した父幹夫さん(60)と母貴子さん(59)は、息子が苦しみを訴えた無料通信アプリ「LINE(ライン)」などの内容を明らかにした上で、「孤立無援の中で自殺したわが子がかわいそうでしかたない」と声を震わせた。

 「疲れて死ぬ。仕事がつらすぎる」(4月11日)▽「誰も代わってくれんし教えてくれん」(同28日)▽「仕事をお願いしても迷惑がられてやってもらえない。人が怖い」(5月31日)▽「駄目だった。どうしよう、どうしよう。寂しい、寂しい、悲しい、死にたい」(6月9日)。幹夫さんは、大貴さんが電話やLINEで両親に伝えた言葉を、涙をぬぐいながら紹介した。

 大貴さんは18年4月に同課に配属され、決算資料の作成を担当。県が記録していた大貴さんの時間外労働は亡くなるまでの3カ月間で月平均26時間。だが、両親や代理人弁護士がパソコンの使用履歴などから時間外労働時間を算出すると、月平均113時間に達していたという。

 県人事課によると、県庁では時間外労働をする場合、上司の承諾が必要で、翌日、職員が報告した時間を勤務管理のシステムに入力する仕組み。当時はパソコンの使用履歴など参照せず自己申告に基づいていたことから、両親は「サービス残業をさせるためのシステムだった」と批判した。

 さらに、自殺を発表しなかったことなども批判。「亡くなって1年近くたつが原因も分からず、知事をはじめとして上司や同僚は誰1人として線香をあげてくれない」と語気を強めた。

 県では15年12月に観光・地域振興課の男性職員=当時(34)=が不整脈で死亡。直前4週間の時間外勤務は過労死ラインを超える107時間で、17年3月に公務災害と認定された。県は18年3月、長時間労働を防ぐため、職員の負担軽減を図る行動指針を全職員に伝達していたが、大貴さんの自殺を防げなかった。

 大貴さんの前に同課で決算を担当した職員は異動で東京に転勤しており、両親は大貴さんは孤立していたと主張しているが、県人事課は「課内には過去に決算を担当した同僚職員もおり、できる限りのサポートはしていた」と説明。「結果として、勤務実態の把握や大貴さんの精神面のサポートが十分だったとは言えない」と釈明した。

  • 西日本新聞

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