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BMW C400X(MR/CVT)

これまでの常識は通用しない 2018.07.07 試乗記 河野 正士 2017年のEICMAミラノショーで発表された「BMW C400X」。新開発の350cc単気筒エンジンと新型フレームを採用し、“アーバンモビリティー=都市部における移動手段”というカテゴリーへ切り込むべく開発された新型スクーターだ。今回は、そのC400Xの国際試乗会に参加しテストすることができた。ここでは、その詳細やインプレッションを紹介する。

“スクーター=つまらない”という固定観念を覆す

BMW C400Xには、良い意味で期待を大きく裏切られた。スクーターは機能とパフォーマンスの割り切りが明確で、それが“コミューター”をうたうものであれば、そのベクトルはライダーを満足させるものではない場合が多い。しかしBMWは、「C400XはA地点からB地点までを移動するためだけの道具ではない」と明言した。バイクらしい乗り味と操る楽しさを持ち、さらにスマートフォンを介して車体とライダーをリンクさせることで、新しいバイク体験を創造するためのプロダクトだと。

したがって、バイクのようなライドビリティーを追求して排気量や車格を決定し、エンジンの出力特性および車体を造り込んだという。もちろん、日本やアジアにおけるスクーター市場の、車体もエンジンもコンパクトな150ccクラスへと向かうトレンドとは異なる思考で開発されている。開発陣も「メイン市場は欧州だ」と述べていた。

排気量250cc以上のミッドサイズスクーター市場は、欧州がその中心だ。移動手段としてその地位が確立され、ラグジュアリー志向のユーザーも、スポーツ志向のライダー&ドライバーも、スクーターを日常的に愛用している。したがって、その選択眼は厳しい。しかしC400Xを試乗した印象からすれば、このバイクは彼らを納得させるに十分なフィーリングを有していた。

2017年11月にEICMAミラノショーで世界初公開された「BMW C400X」。BMWのスクーターとしては、「C650」シリーズや「C600スポーツ」よりコンパクトなエントリーモデルとなる。
2017年11月にEICMAミラノショーで世界初公開された「BMW C400X」。BMWのスクーターとしては、「C650」シリーズや「C600スポーツ」よりコンパクトなエントリーモデルとなる。拡大
「C400X」には「BMWモトラッド コミュニケーションシステム」が用意されており、携帯端末と同システムに対応したヘルメットを接続すれば、ハンズフリー通話や音楽を聞くことが可能となる。
「C400X」には「BMWモトラッド コミュニケーションシステム」が用意されており、携帯端末と同システムに対応したヘルメットを接続すれば、ハンズフリー通話や音楽を聞くことが可能となる。拡大
エンジンの排気量は350cc。日本に導入されれば、電動スクーターの「Cエボリューション」と同じく普通二輪免許で運転することができる。
エンジンの排気量は350cc。日本に導入されれば、電動スクーターの「Cエボリューション」と同じく普通二輪免許で運転することができる。拡大
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快適さとバイク的な“走りの楽しさ”を両立

C400Xの駆動レイアウトには、エンジンがCVTなどのドライブトレインと一体となり、スイングアームとして動く「ユニットスイング式」が採用されているが、このバイクにはそれを感じさせない安定感があり、そして車体の軽さが際立っていた。

ラウンドアバウトやワインディングロードでの車体の切り返しが軽く、かつ安定している。ユニットスイングを採用するスクーター特有の、アクセルON/OFF時に起こるリアの上下動をほとんど感じないのだ。フロントまわりの信頼感も高く、フロント重視のブレーキ操作をしても安心感、安定感は損なわれない。

車両骨格はスチール鋼管を組み合わせた専用開発のスペースフレーム構造で、広いフットスペースを必要とするため、スクーター用のものとして一般的なU字形状のフレームを採用している。

一般的にスクーターは、シート下のスペースを確保する必要があること、エンジンと駆動系が一体となったユニットスイングを採用することからリアへビーとなり、U字型に湾曲したフレームに大きな負担がかかる。しかしC400Xは直径や肉厚の異なる鋼管を使用し、その組み合わせ方を吟味することで、高い剛性を実現していた。

また“スイングアームピボット”というべきか、フレームとユニットスイングの連結部分には「ディカップリングシステム」という独自の構造が採用されている。そもそもはエンジンの振動をキャンセルし、乗り心地を向上させるために開発されたものだが、そのラバーマウントがユニットスイングの横方向への動きを抑えつつ、上下や前後の動きをコントロールすることで、ハンドリングや走行安定性を向上。CVTの緻密なセッティングと組み合わされることで、アクセル操作に対するリアの上下動を抑えるとともに、乗り心地の良さとバイク的なライドビリティーを実現している。

イタリア・ミラノのワインディングロードを行く「C400X」。軽快さと、ミドルクラスのスクーターとは思えない安定感が走りの特徴となっている。
イタリア・ミラノのワインディングロードを行く「C400X」。軽快さと、ミドルクラスのスクーターとは思えない安定感が走りの特徴となっている。拡大
エンジンは一般的なスクーターと同じく、CVTなどと一緒にリアスイングアームに取り付けられている。
エンジンは一般的なスクーターと同じく、CVTなどと一緒にリアスイングアームに取り付けられている。拡大
サスペンションは、前がφ35mmのテレスコピックフォーク。後ろはアルミ製のスイングアームを2本のコイルオーバーで支持する構造となっている。
サスペンションは、前がφ35mmのテレスコピックフォーク。後ろはアルミ製のスイングアームを2本のコイルオーバーで支持する構造となっている。拡大
「C400X」ではエンジンの振動を抑制するため、メインフレームとユニットスイングの接続部にラバーマウントが採用されている。
「C400X」ではエンジンの振動を抑制するため、メインフレームとユニットスイングの接続部にラバーマウントが採用されている。拡大
動力性能については、0-100km/h加速が9.5秒、最高速が139km/hとアナウンスされている。
動力性能については、0-100km/h加速が9.5秒、最高速が139km/hとアナウンスされている。拡大
欧州では2018年秋に一部の国でデリバリーがスタートする「C400X」。グローバル市場では、2019年に本格的な導入が開始される予定だ。
欧州では2018年秋に一部の国でデリバリーがスタートする「C400X」。グローバル市場では、2019年に本格的な導入が開始される予定だ。拡大

日本導入が待ち遠しい

エンジンもパワフルだった。新規開発された水冷単気筒OHC 4バルブエンジンは、シリンダーが地面に平行に近い角度に配置された横置き型。ウェイトローラーの重量とプーリーの形状のバランスを徹底的に造り込んだCVTと合わせることで、ダイレクト感のある、そして力強い加速を実現していた。試乗序盤、シグナルスタートでうかつにアクセル全開にしてしまったとき、振り落とされそうになったほどだ。高速道路で100km/h巡航時からの追い越し加速も十分で、高速道路の制限速度付近(130km/h。まだまだ加速に余裕があった)での安定性も抜群だった。もちろんABSとASCは標準装備されている。

2018年7月に生産をスタート、同年10月頃に欧州の先行導入国でデリバリーを開始し、ワールドワイドな展開は2019年を予定しているという。正確な車両価格は現在未定だが、欧州マーケットでは7000ユーロ以下(6.5インチTFTディスプレイとそれを操作するマルチコントローラーなどを持たないスタンダードモデル)での販売を目指して調整が進められている。したがって、日本への導入のタイミングや価格などは未定だ。

しかしBMWは、スーパースポーツモデルやアドベンチャーモデルで得たバイク造りのノウハウをもって開発・製作したC400Xに大いに自信を持っているし、筆者自身は今回の試乗で、その自信に確かな裏付けがあることを実感した。日本のバイクファンが、その車両をどう判断するか、いまから楽しみである。

(文=河野正士/写真=BMW/編集=堀田剛資)

 
BMW C400X(MR/CVT)【レビュー】の画像拡大
 
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【スペック】
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=2210×835×--mm
ホイールベース:1760mm
シート高:775mm
重量:204kg
エンジン:350cc水冷4ストローク単気筒OHC 4バルブ
最高出力:34ps(25kW)/7500rpm
最大トルク: 35Nm(3.6kgm)/6000rpm
トランスミッション:CVT
燃費:3.5リッター/100km(約28.6km/リッター、WMTCモード)
価格:--円

河野 正士

河野 正士

フリーランスライター。二輪専門誌の編集部において編集スタッフとして従事した後、フリーランスに。ファッション誌や情報誌などで編集者およびライターとして記事製作を行いながら、さまざまな二輪専門誌にも記事製作および契約編集スタッフとして携わる。海外モーターサイクルショーやカスタムバイク取材にも出掛け、世界の二輪市場もウオッチしている。

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