雑感
◎某古書店にて
三島由紀夫の処女作『花ざかりの森』を入手。ラッキーなことに、並単行本価格でした。早速に
置付けを確認。なるほど応急に手当した著者略歴の貼紙小紙では大正十四年生になってますけど、この小紙の下に、同じ体裁で大正四年生の誤印刷があるんですね。剥がしてみょうかしら。
◎江戸川乱歩編集の探偵小説雑誌
「宝石」を入手。昭和35年の4月号~7月号の4冊揃いでした。6月号には予定をオーバーして連載最終回の乱歩随筆
「探偵小説四十年」のが「探偵小説三十五年」としてあつたり、7月号には
植草甚一のコラムがあったりして楽しめますが、4月号には何と、当時の雑誌読者がシオリとしてつかったハサミの入った鉄道乗車券がありました。
東海道線経由・東京都区内→大阪市内の普通乗車券ですが、どういういきさつで未回収のまま残されたものか、いかにもミステリー専門誌らしく、オマケまで謎つきなのです。
◎某古書店にて
「ある夢想家の手帳から 1」沼正三を入手。パラパラしてたら、
表見開きにサインありました。少々びっくり。だって沼正三って、あの「家畜人ヤプー」の著者ですもの。代理人・天野哲夫をスポークスマンにして、正体を伏せているんですからね。あっ、そういえば、その天野氏が数年前のエッセイ集で、沼正三はすでに亡くなったなんて公表してましたね。また天野氏の
「異食的作家論」芳賀書店、S48年刊には意味深にも「日本人とユダヤ人」のイザヤ・ペンダサン(山本七平)と
代理人対談がありました。
《「家畜人ヤプー」の覆面作家はどちら?》なんて記事(昭和57年10月2日、読売新聞夕刊)も妙でした。「ある夢想家の手帳から」シリーズ、最初の都市出版社版では新書サイズでしたよ。
◎今日、サンリオ文庫はあまり見かけません。先日、古書店で
ジャリ「馬的思考」を入手。
表紙折返しの
著書紹介には驚嘆です。1893年に生まれたアルフレッド・ジャリという作家は超早熟児だったようです。
◎昭和27年のゴールデン・ウィークです。電車の座席に腰かけていた「中央公論」の読者が上野駅で下車します。それから、その真新しい雑誌を手に、鈴本演芸場で落語や漫談を楽しんだんですね。その出し物は・・・・。某月某日、古書店にありました。
「中央公論」のバックナンバーを入手。昭和27年4月25日発行で
≪春季文藝特集号≫なんです。パラパラしてたら、ページの間に
チラシありました。開いてみると、。
上野・鈴本演藝場5月1日~5月10日の番組表なんです。もとの雑誌所有者が栞かわり挟んだものでしょう。
演舞場の番組表もバラエティに富んでいねけど、雑誌の方もいいですね。
〇古雑誌は当時の風情を偲ばせてくれますね。
「劇と映画/THE PLAY & MOVIE」国際情報社の1巻2号を入手。
表紙の裏面からもわかりますが、
映画と演劇いっしょのグラビア雑誌です。この号≪大震災号≫大正12年11月の刊行でした。
編集記によると創刊号のあとの2号が掲載記事もある関東大震災で大幅に遅れたようです。
◎某月某日
上野陽一「能率学者の旅日記」プラトン社、大正14年刊を入手。
1921より22年にかけての欧米旅行記です。
前書きによると大阪府立産業能率研究所では能率的見地から、わが国でも将来は洋書のように左横書き、カナ活字がベストと、意気込んでいたようです。この
旅行記の活字でも、横書きに適したカナ活字を用意しっちゃってますから。
献呈サインだってアルファベットなんです。
◎某月某日 H古書店で文庫棚をながめてたら、岩波文庫のトマス・ハーディ『緑の木陰』阿部知二訳あります。手にして
タイトル・ページをめくるとエンピツ素描の美人画ありました。よく見たら
奥付けページ前にも、別のあります。可愛らしいので買いました。初版昭和11年11月30日発行の昭和13年11月30日第五刷/定価40銭でした。古書店では、これといった探書なくても、愉しい本に出会えます。
◎某月某日 H古書店にて中古レコード。タイトルは「過去との遭遇」日本コロンビア(WX7020)です。早速、針をのせると、
織田信長/豊臣秀吉/徳川家康/芳村真理(これ比較用)/ベートーベン/リンカーン/マンモス/縄文人/インカ人/幾松/坂本竜馬/モナリザ/
三億円犯人/
吉良上野介/
浅野内匠頭/
宮本武蔵/シーザー/聖徳太子/板垣退助/西郷隆盛/夏目漱石/与謝野晶子/武田信玄/
と次々に歴史上の人物達の語りかけです。
モンタジュ・ヴェイスの権威者・鈴木松美氏がデーター化した愉しいレコードです。1978年10月プレスです。
著書もあり「音の犯罪捜査官・声紋鑑定の事件簿」徳間書店1994年刊です。
〇上記では、音質を重視したモンタジュでしたが、音韻考証を重視した復元レコードもありましたっけ。「紫式部・源氏物語の平安朝日本語復元による朗読/夕顔・須磨」を思い出します。これも日本コロンビア(JX29)で1972年3月プレスです。言語監修・金田一春彦/作品監修・池田弥三郎/朗読・関弘子。音韻考証にて《「源氏物語」の本文を紫式部がしゃべったと思われるとおりに実現》してみせせます。こんなニュアンスで当時しゃべってたのかなぁ。
「夕顔」より。
「須磨」より。
〇変なレコードありますね。「夢のスーパーカー・レース」VICTOR(SJX8070)1978年のプレスです。
説明を引用しますと
《このレコードは画期的なレコードです!!。このレコードは、レコードでゲームを競えるというまったく新しい遊びで、世界中の子供たちに大きな話題を呼んでいます。普通のレコードには入り口が一ケ所しかありませんが、このレコードには10ケ所の入り口があります。どの入り口に針が入るか、きわめて運命的で、それがゲームのおもしろさを高め、君を興奮のルツボにたたき込みます。》
注意事項①レースの結果をよく注意して聞いてください。結果をもう一度くり返して聞くことは不可能です。
注意事項②このレコードを使用して金銭の授受を行うこと、法律により処罰されますのでご注意ください。
ということですから、注意してレコード表面をみたら、中心に向かう十本の溝が確認できました。
なんてたって普通、レコードの溝は一本ですからね。あっ、両面で二本ですね。