株式会社ネクスト
不動産情報の検索に、使いやすい地図情報は不可欠の機能。 Google Maps API Premier で高い支持を獲得、利用率倍増。
日本最大級の「住まい」のポータルサイト
掲載物件総数約 150 万件という日本最大級の住宅 不動産情報ポータルサイト「HOME'S」や日本最大級の地域コミュニティサイト「Lococom(ロココム)」の運営を手がけるネクスト。日本全国の不動産物件に関する情報をすべて公開することで、不動産業界とエンドユーザーの間に存在する「情報の非対称性」を解消するという志を抱いた井上高志氏が 1995 年に創業した。同社は、不動産業界を改革し、エンドユーザーの「不便」「不安」「不満」といった「不」の存在を解消することを目指している。
「HOME'S」には、賃貸、売買、注文住宅、リフォーム、不動産投資などのサイトがある。「Lococom」は、それぞれのエリアにおけるお店やイベントなどの口コミ情報の投稿や閲覧ができる。両サイトにおいて、Google Maps API Premier による地図情報が活用されている。
「不動産物件を選ぶに際しては駅からの距離やルート、周辺環境などが非常に重要な要素。したがって、物件を探すユーザーにとって地図は必要不可欠のものと捉え、いち早く地図情報をサイトに実装してきました」と同社の HOME'S 事業本部技術 開発部部長の山田貴士氏は言う。
Google と他の地図情報の技術レベル格差は歴然
地図情報は当初、地図画像を表示するだけで動的な拡大縮小や縦横へのスクロールはできなかった。2006 年になると、Google がそのような動的な機能を搭載した地図情報の無償提供を開始。しかし、対象はあくまでも個人ユーザーを想定しており、利用回数制限が設けられていた。
「当社が利用するとしても、すぐに上限に達してしまうことが明白だったので採用は見送らざるを得ませんでした」
2007 年、国内の地図情報会社がそういった動的な機能を搭載した地図情報のサービスを開始し、すぐ採用することにした。ネクストは物件情報を提供するにとどまり、地図情報画面の開発作業はその地図情報会社が行うこととなった。
「したがって、物件情報が地図に反映されるまでにタイムラグが生じてしまうことが課題でした。それ以外にも、細部の調整がやりにくいといった問題点が明らかとなりました」
2008 年になると、他の地図情報会社が API のサービスを開始する。「社内で開発を行うことができるので、タイムラグや細部調整の問題がクリアできる」と乗り換えることに。ところが、出来立てのサービスということもあり、システムとしての完成度が低く、地図の配信が遅れるなど稼動も不安定であった。仕様もよく変更になるなどマイナス面が目立った。
「それでも何とか試行錯誤しながら利用を始めましたが、Google のサービスと他社のサービスを比べると技術的な差は歴然としており、やはり Google を使いたいと思いましたね」と開発にかかわった技術 開発部アーキテクトグループの吉江輝政氏は述懐する。
数多くのカスタマイズ情報が開発の参考に
そんな時に、「Google Developer Day」という技術者向けセミナーが開催され、吉江氏らはそこで Google が地図情報のエンタープライズ版 API の提供を開始することを知る。さっそく、導入を検討。
それまで利用していた地図情報サービスのスピード感がネクストの求めるレベルをキャッチアップできていなかった一方、Google はその心配がないばかりか、「ストリートビュー」など次々に新しいサービスをリリースしていた。かつ全世界で数億人というユーザーが使っていても、ダウンすることがないといった実績を評価。「HOME'S」において圧倒的に使われている賃貸サイトからの導入を決定した。
「当時はまだ Google の日本支社で対応されておらず、アメリカの本社と直接交渉しました。ドル建てで使用料を支払い、英文の契約書を交わして導入しました」(山田氏)
開発プロセスにおいてもメリットがあった。
「非常に多くのユーザーが様々なカスタマイズ方法を書いたドキュメントやソースコードをネット上に公開しており、それらを大いに開発の参考にすることができたので、つくりやすかったですね」(吉江氏)
賃貸サイトにおいては、物件を探すに当たり、都道府県を選択した後に「沿線」「住所」「通勤時間」そして「地図」から検索できるようになっている。「地図」を選択し、エリアを指定すると、そのエリアの地図上に物件のアイコンがプロットされ、賃料や間取りなどの条件を入力して物件を絞り込むことができる。地図以外の検索方法においても、詳細画面を開くと、周辺地図を見ることができるようになっている。物件によっては、ストリートビューを見ることもできる。
「当初はトラフィックの集中を避けるために、ボタンをクリックして別画面で表示させるという形にしましたが、とても好評だったため現在は同一画面上で表示させています」と賃貸事業部クリエイティブユニット コンシューマーグループ長の倉林寛至氏は言う。
コストメリットも大きい Google Maps API Premier
「こうした機能で 2008 年 11 月にサービスを開始すると、次第にユーザーに予想以上に見られるようになるという傾向が鮮明に。
「半年後に利用状況を確認した時に、当初予測の倍近いペースとなっており、あと数か月で契約の上限に達してしまうことが判明しました。そこで、コストなどの観点から、サービスを打ち切るか、さらに利用制限を上げるかを検討し、後者に決めたのです」(山田氏)
ある時、サイトをリニューアルした際に一時的に地図表示ができなくなることがあった。そのときは「なぜ表示できなくなったのか」というクレームが殺到し、結果的に地図表示の重要性を再認識したという。 「ユーザーの立場に立つサイトという理念から、打ち切ることは考えられなかったですね」(倉林氏)
2009 年 6 月、Google の日本支社と大口ユーザー契約に更新。上限を心配することなくサービスを提供できる体制に改めた。 「もし、以前の地図情報のままでこの利用ペースであったら、契約形態的に莫大な利用料金が発生していたところでした。その意味で、Google Maps API Premier はコストメリットも大きいと思います」(山田氏)
地図やストリートビューで業界の風通しを良く
ところで、物件情報にはストリートビューがついていないものも多い。それ以前に、地図を表示することに抵抗感を持つ不動産仲介会社も多いという。地図表示が嫌がられるのは、物件を管理している会社に直接アプローチされて、仲介会社を介さず問い合わせされてしまうなどのリスクがあるから。また、ストリートビューについては、評価を決めかねている会社が多いからである。
「不動産業界はかなり保守的です。しかし、ユーザーがこれらの機能を活用することによって、より確度の高い見込み客情報を不動産会社に返すことができるにようになれば、結果的に不動産会社のためになると考えています。したがって『常に革進することで、より多くの人々が心からの「安心」と「喜び」を得られる社会の仕組みを創る』という理念に基づき、これまで不動産業界に地図表示やストリートビューの導入を働きかけてきました」山田氏は力を込める。
地図から探す機能やストリートビューを導入したのは、「HOME'S」が先駆者。しかし、現在では競合するサイトも導入している。
「歓迎しています。どんどん真似して欲しい。それで業界の風通しが良くなることこそが、当社の望みですから」と倉林氏。
Google Maps API Premier は、「HOME'S」においては賃貸サイトから利用され始めたが、今後全サイトに適用される方針である。
