大阪ガス株式会社
拠点の変動のたびに生じた煩雑な手間を Google Maps が一掃。しかも低コストで、誰もが簡単に使えて大幅な効率化を実現。
警備員が駆けつけるルートの提示に利用
大阪ガスのリビング事業部は、一般家庭への都市ガスの供給のほか、ガスコンロやガスファンヒーター、ガスコージェネレーションシステムなどのガス機器の販売や修理を手がけている。 2009 年 9 月、同事業部が手がけるサービスの運営に Google Maps API Premier を導入し、大幅な業務効率化を実現した。
そのサービスとは、「くるぴこ」という、加入者に安心・安全を提供するしくみ。同サービスに加入すると、加入者宅にガス警報器や火災警報器が設置され、 24 時間 365 日にわたり電話回線で監視センターと結ばれる。警報器が火災、ガスもれ、CO(一酸化炭素)の発生といった万一の事故を感知した場合、ガスを止めて担当スタッフが加入者宅まで出動し、必要な対応を行うというものだ。実動業務は、グループ会社の大阪ガスセキュリティサービスが担当する。
警備業法には、警報器が事故を関知した場合、警備員は所定の時間内で現場に駆けつけなければならないと定められている。警備サービスへの加入契約時に、警備員の待機所からどういうルートを使って駆け阪ガスでは、そのルートマップを出力するシステムに Google Maps API Premier の利用を決めた。
拠点の変動があっても事務局が更新するだけで OK
「くるぴこ」の販売および契約を行うのは、大阪ガスのサービスショップ(販売代理店)。以前は、各サービスショップに市販の商用可能な地図ソフトを配布し、ルート検索やルート情報の出力を行わせていた。「サービス契約の増加に応じて、警備員の待機所が増えたり、移転することがしばしば起こります。配布していた地図ソフトは、ルート検索時に出発地点と目的地の住所を入力しなければならなかったので、待機所の増加や移転のたびに、数多くのサービスショップに連絡する必要がありました。また、サービスショップも増加するので、その都度ソフトを送る手間が生じたり、1 年に 1 度のライセンス更新もしなければなりませんでした。3 年ほど利用しましたが、煩わしさを感じるようになって、何かいいシステムはないものかと考えていたのです」とリビング事業部リビング開発部住宅 IT チーム副課長の川端篤志氏は言う。
ちょうどその頃、リビング事業部計画部情報化推進チームマネジャーの松居啓作氏から川端氏に声がかかった。同チームは事業部の情報システム全般をフォローする部署で、このほど、以前から同社が所有している GIS (地理情報システム)基盤に Google Maps API Premier を組み合わせた地図情報システムのプロトタイプを完成させ、そのシステムの本格的な活用を社内に働きかけていたのである。「プロトタイプは、営業部隊が取引実績などの顧客情報を地図上で管理することで営業活動の効率化につなげることを想定して開発しました。このほど、顧客情報 DB や GIS 基盤、Google Maps 間の連携などに支障がなく、お客さまサービスにも問題なく使えることが検証できたので、広く活用してもらおうと社内営業を始めたのです。そこで、『くるぴこ』が困っていることを知り、双方の思惑が一致しました。Google Maps API Premier によるこの地図情報システムならば、Web 上で稼動するため、従来のように拠点の増加や移転があってもいちいちサービスショップに連絡したり、各サービスショップが更新作業をする必要がなく、事務局で更新するだけで済みます。オペレーションの負荷が大幅に削減できることが見込めたので、すぐに第 1 号としての本格活用が決まりました」と松居氏は言う。
既存のシステムとの連携性と安さで Google に
ガス会社は、ガスを供給するために地中に埋設されている導管を管理しなければならない。いつ、どこに、どのような導管が埋設されたかを管理するために、大阪ガスでは 20 年以上前から地理情報システムが導入されている。「今回の取り組みにおいても既存システムとの親和性も考慮し、従来型の地図情報システムも検討しましたが、ミドルウェア購入やアプリケーション開発といったイニシャルコストに加え、導入先が 100 か所を超えるので導入後の維持運営費といったランニングコストといった面で不向きであると判断しました。また、このシステムを使用することが直接、売り上げ増加につながるという性質のものではありません。したがって投下するコストについては厳しく評価する必要がありました。また、システム開発に当たっては既存のシステム基盤との技術的な親和性は重要ですが、必要コストや導入に要する期間などでのリスクはできるだけ最小化したい。競争が厳しいなか、いかに早く安くシステム構築し、業務で使用できるか、つまりお客さまへのサービス提供に寄与できるかということに力点をおきました」
そこで、松居氏らはいくつかの地図情報サービスを検証。結果的に、Google Maps API Premier がベストであることが確認できた。「ほかの有力な Web サービスには、既存の GIS とマッチしないものもありました。Google Maps は既存の GIS との連携がしやすく、また広く使わこれらが決め手になりましたね。以前は大変高価であった地図情報サービスが手軽に利用できるようになった効用を実感しています」(松居氏)
導入後の問い合わせは 0 件
導入後に、松居氏らのその思惑は見事に証明された。「普段、Google Maps で飲み会の店を探すのと同じような感覚で操作できます(笑)。導入時は簡単な説明をしただけで、導入後にサービスショップからの使い方に関する問い合わせは 1 件もありません」とリビング事業部リビング開発部住宅 IT チーム係長の山中敏弘氏は言う。「以前の地図ソフトでは、警備員の待機所と契約先の 2 つの住所を入力する必要がありましたが、このシステムでは待機所はあらかじめ登録してあるので打ち込む必要がなく、作業負荷は半減しています。また、Google Maps は郊外でも都心部同様の細かい縮尺で見ることができます。それも好評ですね」と川端氏は補足する。
現在、同システムは、契約時における非常時に警備員が駆けつけるルートの提示だけではなく、契約前に営業先の顧客が営業エリアの範囲内にあるかどうかを確認することにも使われている。「今後、技術的に可能になれば、携帯電話などのポータブル端末でこの地図情報システムが使えるようにしていきたいと考えています。そうした確認作業が出先でできるようになれば、さらに業務が効率化できるからです」と山中氏は今後の課題を口にする。「今回、Google Maps API Premier を活用してのシステムを完成させたことで、住宅 IT チームという営業部門におけるシステム運営からの手離れが可能となり、本業により専念できるようになりました。我々スタッフ部門としては、あるべき姿が実現できたと考えています」と松居氏は締め括った。
