静岡県庁
「東海大地震」に備え Google Earth Enterprise Server 活用による画期的な危機管理システムを構築。
被害状況を視覚的 瞬間的に判断
黒潮が北上する太平洋に面し、気候が温暖な静岡県。一方で、その太平洋の沖合には駿河湾奥に端を発する「駿河トラフ」が存在しており、ユーラシアプレートの下にフィリピン海プレートが潜り込み続けている。そのため、ここを震源地とする「東海地震」が周期的に発生しており、大きな被害をもたらすマグニチュード 8 級の大地震がいつ発生してもおかしくないと警戒されている。その対応を進めている静岡県は、静岡市にある県庁舎内に「危機管理センター」を設置して、震災などの災害発生に備えている。
「危機管理センター」には、103 インチの大モニターを囲んで会議テーブルが設けられている。災害時には、県内の各市町村などから被害状況などの情報が「危機管理センター」のサーバーに集められ、モニターに刻々とグラフィカルに表示されるシステムが構築されている。そして、同センターに駆けつけた県知事が、状況を踏まえて自衛隊への出動要請を決断 指示するほか、避難誘導、救援物資輸送など必要な措置を一元管理の下で行えるようになっている。このモニターに静岡県全域の 3D 地図を表示させる GIS(地理情報システム)として、Google Earth Enterprise Server が採用された。
「それまでは、災害が発生すると電話やファックス、総合行政ネットワークなどで情報を集めていましたが、それだと被害状況は表やグラフなどでしか表現できず、経験値の高い人でないと現地の被害レベルなどを判断することが難しかったのです。そこで、状況を視覚的 瞬間的に判断できるようにしたいと考えて、この表示システムを構築しました」と静岡県危機管理部危機情報課兼防災通信課主査の内山敬介氏は言う。
ビュー機能を活用し確認範囲をコントロール
同システムの概要は次のとおり。
災害が起きると各町村は家屋倒壊、火災、道路寸断などの被害状況を確認してフォーマットに入力し、CSV ファイルで危機管理センターに送信する。そのデータが自動的にシステムに取り込まれて、画面上に被害状況を示すアイコンとして表示されるというしくみだ。被害状況は一定のメッシュ単位で表示されるようになっており、GoogleEarth の寄り 引き、斜め上からの俯瞰といったビュー機能を活用して、確認範囲を自在にコントロールできる。
また県内各地の地盤の状況や住宅密集度、および避難所や救護所、ヘリポートなどに供される県内各地の施設、道路などの位置があらかじめ GIS 上に入力されており、被害によってそれらの状況がどう変化しているのかも確認できるようになっている。
「例えば、市や町が災害時に学校などの校庭をヘリポートとして用いると決めて登録しておくのですが、『本来は大型ヘリが離着陸可能』、『倒木などの障害物があって中型以下ならば離着陸可能』といった情報も逐一表示されるようになっています」
被害情報は CSV ファイルでの送信だけでなく、県や市町などのスタッフが手持ちの携帯電話で被害状況の写真を撮影して GPS の位置情報とともに送信すると、それも表示されるしくみも付加されている。
「この情報を自衛隊などに提供することで、救援物資の輸送路や避難ルートの確保をスムーズに行うことができるはずです」
また、モニター脇には県内の主要地域を撮影しているライブカメラの映像も常に表示されている。これらの情報収集手段で、できるだけ県内の被害状況を即時に把握できるように工夫されているのだ。



システム開発プロセスはスムーズに推移
静岡県がこの GIS を活用した危機管理システムの構築に着手したのは、2007 年 11 月のこと。
「システム構築を任されていろいろ調べたのですが、そこで Google Maps をマッシュアップすればイメージしていたシステムができることがわかりました。そこで、そのシステム構築ができるインテグレーションベンダーに声をかけてプロポーザル方式での入札をお願いすることにしました」
GIS に詳しいインテグレーションベンダーを選定し、検討を進めた結果 Google Earth Enterprise Server の採用を決定した。
「当時の Google Maps のマッシュアップでは、一部の機能が使えないことが判明しました。また、地震が起きた時にネットワークが切断して使えなくなってしまうのはまずいので、県庁舎内に専用サーバーを置く必要がありました。その条件で同様の製品をいくつか比較検討しましたが、Google Earth Enterprise Server がベストであることがわかったのです。Google Earth ならば、静岡県だけでなく、ゆくゆくは各都道府県に展開できるという思惑もありました」
システム開発プロセスは、スムーズに推移したという。
「たいていのシステム開発では、こちらの望む機能ができる、できないといった議論になるものですが、それがほとんどなく済んだことに驚きましたね」
他の都道府県にも簡単に展開可能
2008 年 9 月にベースとなるシステムが完成し、翌年には携帯電話からの情報入力などの機能を拡充。2009 年 8 月 11 日に駿河湾を震源地とする震度 6 弱の地震が発生した際は、初の実稼動をして各機能の使い勝手のよさが確認された。
「幸い、屋根瓦が落ちるくらいの軽微な被害で済みましたが、このシステムが効果的に使えるものであることの検証はできたと思います」と内山氏は胸を張る。2010 年は、県庁の危機管理センターだけでなく、各市町のパソコンでも見られるように拡張させる計画だ。
「さらに、県民や観光などで静岡県に来られた方が被災した際に、携帯電話などからアクセスして最寄の避難所や救護施設がわかるようにするなどのバージョンアップをしていく予定です。Google Earth Enterprise Server ならば、そうした機能拡張にも柔軟に対応することができるのがいいですね。なお、他の都道府県にも簡単に展開させることができるのは、地震国 日本にとって大きなメリットだと思いますね」
ここまでの画期的な危機管理システムを構築したのは、静岡県が日本初。いずれ襲ってくる東海大地震の地元としての危機感がもたらしたことは、いうまでもないだろう。
