看板

久々に通常サイクルの更新。
入稿終わったから気がねなく出来たわ。
記憶のかさブタもついに28回目。
継続しましたねぇ。
今回はこれまた再放送の定番だったこちらを紹介します。
前回画像少なかったから今回は増量。

ドロロンえん魔くん

1973年10月4日〜1974年3月28日 全25話
フジテレビ系放映・製作 東映動画




70年代に生まれた社会派妖怪アニメ
あらすじはこう。えん魔くん

妖怪の吹き溜まりと化した1973年の日本。
えん魔大王の甥っ子であるえん魔くんが
妖怪パトロール日本担当として赴任してきます。
お供は雪女一族の姫君・雪子姫に
河童のカパエル。智恵袋的存在の
シャッポ爺、そこに前任者の二股膏薬的存在ダラキュラも
加わって、日本に巣くう多くの
地獄より脱走した非行妖怪達を
送還・退治していきます。
しかし、えん魔くんの前には
多くの難題が山積していました。
それは妖怪だけではなく、
日本を汚染し続ける公害だったのです。


変身ブームが下火になり、マジンガ−Zなどの
スーパーロボット物が人気を集めていた1973年、
東映が「ゲゲゲの鬼太郎(カラー版・1971)」に
続いて発表した妖怪物がこちら。
なぜこの時期に妖怪物が?と
思われる方もいるかもしれませんが、
この時期はスポ根もの、時代劇もの、
懐かしの30年代ヒーローものと
みんな次に当るジャンルを
模索していた時期だった訳で、
雪子姫とカパエルそこにヒットメーカーになった永井豪に
「ダイナミックプロ版鬼太郎」を依頼した
東映さんの気持ちもなんとなしに
解るような気がするのです。
スタッフは鬼太郎のスタッフも
参加していましたが、
70年代独特の空気の中で製作された
ことによってカラーが一変。
さらに東映動画ではじめて
チーフディレクター制が導入された
事もあり、作品の方向性が
統一される事になりました。
えん魔くんのテーマは
「公害汚染された日本」
「心身ともに退廃した人間ども」
「加害者でもあり、被害者でもある妖怪」

といったところでしょうか。えん魔くんでは舞台を
日本に限定する理由を最初の段階で
明白にしています。
なぜ、妖怪は日本にのみ現れるのか?それは日本が
公害で汚染されきっており、人々の心も病んでいる
最悪の土地だからであり、故に妖怪が降臨しやすく、
結果日本は妖怪の吹き溜まりと化している、
という設定だからです。
さらに皮肉なのは、
住み良い土地を求めて脱走してきた
不良妖怪たちが、公害汚染によって心身を蝕まれ、
地獄よりも酷い環境に
悲鳴をあげているという設定です。(もっとも、この設定は
初期に集中していて、後半はやや希薄になる。)

70年代特有の痛烈なアイロニカルさが
えん魔くんの世界を構築していたと言えますね。
無論、「鬼太郎」と似ている個所も多々あります。
(ねずみ男的キャラ・ダラキュラとか妖怪アンテナとか。)
しかし印象が異なるのはやっぱ主役・えん魔くんの性格と
ヒロイン・ユキちゃんの存在による所が大きいですね。



原作はおふざけ100%。
さて、そんな社会派の印象の強いアニメ版えん魔くんと相対するのが
週刊少年サンデーにて連載されていた永井豪の原作漫画。
現在も中央公論社から文庫本がでていますが、
これがもう全編ふざけ倒し。アニメで感動した子供がマンガみたら
「ふざけるな!」と怒ること請け合い。とにかく全編通して
ハズす、スカす、パロる、おちょくるの4段攻撃。
いきなりオールナイトニッポンのギャグから始まる、と
言うだけで、このマンガがどんな性質のものか
推して知るべしでしょう。
毎回毎回強敵妖怪「怒黒」が扉に登場するものの、
えん魔くんってばず〜っとすかしてほったらかし。
しまいにゃ怒黒自身が「今回こそ相手してもらえると思ったのに〜!
ちゃんと戦ってくれ〜!」と泣きを入れる始末。
そんでやっと念願の対決、と思ったら1コマでバッサリ。
何週にも渡って引っ張ってコレだからね。
もう息抜きで描いてるとしか思えない脱力系マンガでして。
神経緊張させて真面目に描いてる「デビルマン」の
反動でしょうか?でも、
この時期の永井豪マンガはこういう脱力系も
脂が乗り切ってる時期だけに
面白いんですよね。ただ、TVのえん魔くんと同じ目で見ようとすると
エライ目にあいますが。

非行妖怪たちの悲しい宿命

お話は再びアニメ版に戻ります。
えん魔くんに登場する妖怪は、
結果的に悲劇にまき込まれてしまうキャラが大変多いです。
そんなエピソードを紹介。

「日本列島大爆発の日」

コバンザメは寂しがり屋の妖怪で、やさしいお兄さんになってくれる
人間を探しているのですが、
妖怪怒黒なぜか出会った人間が次々に発狂して殺人鬼になり、
死んでしまいます。
実はコバンザメは死神妖怪・怒黒(原作マンガとは別物)
によって人間を発狂させる
「怒黒菌」を体内に注入されており、
そうとは知らないコバンザメは次々と人間を殺してしまい、
結果怒黒は新鮮な人魂を大量に捕食できるのです。
利用されている事に気づかないまま、
大量殺戮を続けるコバンザメ。
コバンザメは怒黒と縁を切ろうと話を切り出しますが、
そんなコバンザメを怒黒は最後の仕事につかせます。
その仕事は、戦争に出撃する水爆搭載の重爆撃機の
搭乗員を発狂させ、日本に5千メガトン級の水爆を落とし、
一億人の人魂を作る事!
「もし、日本に水爆が落ちたらどうなるの?」
「ドロドロに溶けちゃうだろうな。」
「日本中が海に沈んでしまうわ。」
「さよう。富士山のてっぺんだけが海に浮かんでる事になる。」
計画は実行され,重爆撃機のパイロットは発狂し、
国会議事堂の真上から水爆を投下します。
しかしえん魔くんのマントが水爆をキャッチ。
怒黒も倒され危機は去ります。
しかし、残ったのは5千メガトンの水爆。
処理が出来ないとえん魔くんは
水爆を地獄に持っていってもらう事に。
「水爆なんか持ち込んだら、えん魔大王も
人間界に愛想を尽かすじゃろうて。」

シャッポ爺が人間界をいぶかしげに見つめつつ呟きます。

「妖怪イヨマントの復讐」

古い毛皮の姿をした妖怪イヨマントは、
長年自分を大切にしてくれるお嬢様に
恋心を抱いていました。
妖怪イヨマントえん魔くんも状況を理解し、
イヨマントを見逃します。
日々の幸せを噛み締めるイヨマント。
が、ある日そのお嬢様が
車にひき逃げされてしまいます。
かろうじて命は取り留めたものの、
植物人間になってしまうお嬢様。
ひき逃げ犯人を探そうとイヨマントは怒り狂って
逃げたドライバーを襲います。
えん魔くんも協力して犯人を逮捕するものの、
イヨマントはお嬢様のそばに一生居たいと地獄帰りを拒否。
えん魔「けどよお、もうどうにもならないんだぜ…」
シャッポ爺「さよう、その娘さんは眼も口もダメじゃ。
もうどうすることも…」

イヨマント「わかってるよ!だったら…
せめて傍についていてやりてえんだ!」

えん魔「わからずやめ!こうなったら力づくで
てめぇを連れて帰るぞ!」

空中でえん魔くんとイヨマントの大激闘。
その際発生した雷が偶然お嬢様を直撃!
カミナリのショックでお嬢様は
意識を回復します。(おいおい。)
が、意識を取り戻したお嬢様はイヨマントをみて
「ばっ、バケモノ!」と言って失神してしまいます。
イヨマント「ば…ばけもの……? 」
シャッポ爺「さよう…人間の目からみればお前は醜いバケモノじゃ…。」
失意のどん底に落ちたイヨマントは地獄に帰っていきました。

「妖怪父ちゃん」

息子を亡くし、哀しみの余り地獄を脱走した妖怪オロロン。
偶然、新聞配達の少年サブを見つけ、
父親が蒸発して居ない身の上を知り、
サブの父、又八に姿を変えてサブと暮す事にします。
しかし、地元の開発を強引に進める鬼塚組の乱暴に
怒ったオロロンはついに妖怪の姿に戻り、
連中を撃退はしたものの、
妖怪おろろんサブに妖怪の正体を見られてしまいます。

「たのむ!もう一度オレを父ちゃんと呼んでくれ!」
「いやだ!お前は妖怪だ!父ちゃんじゃない!」
やがて妖怪だという事で通報され、警官隊が包囲。
自暴自棄になったオロロンは暴れ出します。
「おれが人間になるのを邪魔する奴は
みんな殺してやる!」
えん魔くんはドロロン号を使って
止めようとしますが、
オロロンの怪力の前にドロロン号は破損してしまいます。
もうダメかと思ったその時、声がしました。
「父ちゃん、もうやめとくれよ!」
サブがオロロンを止めます。
「おれ…父ちゃんが妖怪でも構わない!だから…
暴れないでくれよ。昔みたいにまた一緒に暮らそうよぉ…」

涙を流すオロロン。しかしもう昔の様に暮らせないと悟ります。
オロロンはサブに涙ながらに語ります。
「サブ!お前の父ちゃんはきっとどこかで生きている!
その父ちゃんの帰りを待つんだ…!」

そう言い残したオロロンは、地獄へ帰る事をえん魔くんに 告げます。
空に上っていくオロロンをサブは大声で見送ります。
「父ちゃ〜ん、妖怪父ちゃ〜ん」
その後、サブの父が帰ってきたかは定かではありません。が、
サブはまた新聞配達に出かけます。
妖怪父ちゃんの思い出を抱きながら。



これらのエピソードに共通するのは
「人に憧れや愛情を持ちながらも、願い叶わず虐げられるものの哀しみ」でしょう。
差別意識の渦巻く人間界においては、
異形の妖怪は悲しい運命を辿るしかない…
という、どこか諦めたかのような退廃的なテーマも随所に見られます。
そして虐げられた者が最後に逆上して暴れ、退治されて終わる…
果たして本当に悪いのは妖怪か?という疑問を抱きつつ終わるストーリーが多く、
良い悪いは別として、いろんな意味で情念のこもった脚本を
メインの辻真先・雪室俊一・上原正三氏は
この時期量産しています。



最終回・妖怪大決戦
最終回はいきなり地獄界のテロリスト・
大金塊が目覚めるところから始まります。
部下にえん魔くんの幼馴染の虎御前を従えて
大金塊はえん魔抹殺計画を実行します。
妖怪大金塊 なにしろコイツ、力も妖力もあるくせに
やる事が狡猾で卑怯。
まずは手始めに街中の人間を金塊に変えて
陽動作戦を展開。その上で
ユキちゃんとカパエルを人質に
えん魔くんに御妖船ドロロン号の引渡しを要求。
しかし開放したのはカパエルだけ。
ユキちゃんの開放の条件は
えん魔くん自身の命の放棄。
えん魔くんは「さあ!殺しやがれ!」
大の字になって身を晒します。
大金塊の角がえん魔くんの心臓を貫き
えん魔くんは死んでしまいました。
ドロロン号を手にいれた大金塊は
「これから地獄界に攻め入って、
えん魔大王を倒してくれる!」
と意気揚揚。
結局ユキちゃんを解放せず。
まだ使い道があるとそのまま
連れ去ってしまいます。

一方のえん魔くん、一度しか使えない蘇生術で生きかえり、
大金塊を追って、連中の本拠地の鬼ガ島にむかいます。
しかし、そこでも大金塊、ユキちゃんを人質に
えん魔に殺されるよう要求してきます。
大金塊「ギブアンドテイクといったところかな?
貴様が死なんのなら雪子を殺すまで!
ワッハッハ。さあどうする!ユキ子の命か、お前の命か!」

徹底的に卑怯なからめ手を使ってくる大金塊。が、
虎御前「…また騙すつもりなんだ。大金塊めぇ…!」
その行状にかつての幼馴染に
思いを馳せていた虎御前が裏切り、
ユキちゃんを逃がします。
怒った大金塊に殺される虎御前。
虫の息になりつつ雪子姫の縄を解きます。
御妖船ドロロン号 雪子姫「あなた、私を助けるために?」
虎御前「あたしはもうダメ。雪子姫…
えん魔くんを大切にしてあげてね…
…フフフ。オレが女の言葉を使うなんて…変だなぁ…
雪子姫…あばよぉ…。」

人質のいなくなった大金塊に襲いかかるえん魔くん。
が、大金塊も目潰しで応戦。 一瞬の隙を突いて、
大金塊がえん魔くんの心臓を突ん裂きます。
瀕死の重傷を負いつつも、
えん魔くんは妖怪ステッキをマサカリに変化させ、
大金塊の首を跳ねます。
そのまま全身の血を垂れ流しながら
ドロロン号に乗り込む えん魔くん。
えん魔くん「えん魔くん最後の大奮戦!
てめえら名誉と思って死ねぇ…!」

えん魔くん鬼ガ島にドロロン号で特攻。
島もろともテロリスト妖怪達を全滅させます。

戦いおわって、えん魔くんは危篤状態。
雪子姫「えん魔くん!しっかりして!」
えん魔くん「ムリ言うなよ。
さすがにオイラも今度ばかりはダメみてぇだ。
えん魔能力、タネ切れだい。ユキちゃん…いや、雪子姫」

雪子姫「ユキちゃんでいいわ…えん魔くん。」
えん魔くん「おまえだけでも…助かって…よかったな…」
雪子姫「えん魔くん!死なないで!お願いしっかりして!」
閻魔大王 えん魔くん、そのまま息をひきとります。
シャッポ爺「死んじゃった…
 死んじゃったジャジャ…」
と、そこに現れたのはえん魔大王。指から稲妻を発し
えん魔くんを生きかえらせます。
えん魔くん「あれ?おいらまだ生きてるの?」
シャッポ爺「大王様の御力じゃ。
 広大無変の御力じゃ。」

えん魔大王「ようやった。そのファイトにめでて、
特別に新たな復活のエネルギーを与えたのじゃ。
わけても雪子姫を想う心の強さ暖かさ。
ゆくゆくは夫婦となるがよい。大王が許す!
さらば行け我が甥っ子よ。
甦った妖力でいつまでも守るがよいぞ。」

えん魔くん「ハイ!ありがとうございます大王様!」
最後はテーマソング流れる中、
ドロロン号の上でキッスするえん魔くんと雪子姫のシーンで幕を閉じます。

ただ、疑問がひとつ。人間界のツトムやとばっちり先生が冒頭大金塊によって
金塊に変えられてしまったままなんですが、その後のフォロー一切なし。
親友が金塊にされたままなのに…いいのかえん魔くん?



ドロロンえん魔くん スタッフ
原作/永井豪とダイナミックプロ(週刊少年サンデー・小学館学年雑誌・テレビランド掲載)
企画/別所孝治・旗野義文
チーフディレクター/矢吹公郎
演出/矢吹公郎・森下圭介・永樹凡人・生頼昭憲・山吉康夫・しらどたけし他
脚本/雪室俊一・辻 真先・上原正三・山崎忠昭
作画監督/白土 武・森 利夫・大貫信夫・白川忠志・野田卓男 他
美術/福本智雄・下川忠海 他

音楽/筒井広志
OP/ドロロンえん魔くん(作詞・中山千夏 作曲・小林亜星 編曲・小林仁三/唄・中山千夏)
ED/妖怪にご用心(作詞・中山千夏 作曲・小林亜星 編曲・小林仁三/唄・中山千夏)
OPは第8話からSE、セリフ入りに変更。
EDは第7話まで1番の歌詞、第8話から2番の歌詞に変更。


ドロロンえん魔くん放映リスト

放送日サブタイトル
1973.10.4地獄から来た奴ら
1973.10.11恐怖の妖怪団地
1973.10.18くさった川の大妖怪
1973.10.25妖怪たたみ返し
1973.11.1美しいバラにはトゲがある
1973.11.8妖怪地獄めぐり
1973.11.15妖怪あすなろ小僧
1973.11.22妖怪耳ずき
1973.11.29日本列島大爆発の日
1973.12.6妖怪の涙
1973.12.13妖怪雨女郎
1973.12.20妖怪火々爺
1973.12.27 妖怪かまいたち三兄弟
1974.1.10噴火だ!津波だ!東京ピンチ
1974.1.17挑戦!えん魔大王
1974.1.24大怪獣ゾウワシ
1974.1.31なるかみ山の大妖怪
1974.2.7妖怪イヨマントの復讐
1974.2.14妖怪まどろ眠
1974.2.21妖怪木枯し小僧
1974.2.28御妖船ドロロン号
1974.3.7妖怪地獄別荘
1974.3.14妖怪父ちゃん
1974.3.21妖怪きちがい竜魚
(※妖怪くるった竜魚)
1974.3.28妖怪大決戦

※再放送時にはタイトルが変更されています。

キャスト
えん魔くん(野沢雅子)
雪子姫(坂井すみ江)
カパエル(肝付兼太)
シャッポ爺(滝口順平)
ダラキュラ(神山卓三)
つとむ(近藤高子)
閻魔大王(柴田秀勝)
とばっちり先生(島田 彰)
(北川国彦)(桂 玲子)(西尾 徳)(野田圭一)
(増岡 弘)(大竹 宏)(沢田和子)(はせさん治)
(富田耕生)(石丸博也)ほか 青二プロ

と、今回も無事終了。
次回は夏コミ直前くらいの更新かなぁ。
なんかやります。多分70年代のアニメとは思いますが。
それでは次回。

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