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▽レス始

「白の乱考察文(鬼畜王)」

キツネそば (2006-10-04 06:45)

リーザス帝国初代皇帝ランス。数々の逸話を残す彼であるが、一つだけ間違いのないこととして、彼が卓越した軍人であったことはいうまでもない。私は彼の行った一連の諸キャンペーン(注釈:一定の目的をもった各種の組織的な運動や働きかけ)のうち、最も興味深い「白の乱」と呼ばれる内戦について稚拙ではあるが編纂してみたいという衝動に突き動かされ、本稿をまとめあげることにした。

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1.内戦発生とその鎮圧まで
 ランス王がその覇道の道程として行った最初のキャンペーンはリーザス国内に起こった内戦の鎮圧であった。
 彼は、それ以前の重大な事件である「ヘルマン第三軍によるリーザス城征服およびその解放戦」についても多大な貢献をしたのだが、これについては戴冠以前のものであり、且つその後の彼の大陸制覇には直接的に関わらないため(リーザス内部、特に軍部に対して強力な新派を作ったなどという点では、非常に重要なキャンペーンではあった)、ここでは内戦鎮圧をもって彼の最初のキャンペーンと位置づけることにする。


 この内戦はランス王の即位を発端とする。その初心演説があまりにも鬼畜非道なものだったため、軍の清流派がこれに反抗し、リア・パラパラリーザス王女に政権首班復帰を望んだというのが、当時の公式な内戦の発生理由である。


 内戦の規模は極めて大きかった。結果だけに注目すると、あまりにあっけなく終わったため、反乱軍は過小評価されがちであるが、実状はまるで異なる。
 当初作成されたと見られる反乱軍の計画では、総司令官にリーザス軍筆頭であり、黒軍主将(注釈:当時リーザス軍は主力となる歩兵部隊を「黒白赤青」からなる4軍に編成していた)でもあるバレス将軍を迎え、リーザス城を圧倒的戦力で包囲して王に退位を迫るといったものであった。
 だがこの案は、バレス将軍の不参加により破棄される。代わって総司令官に祀り上げられたのは白軍主将エクス・バンケットである。

 当初、エクスはこの反乱には加担しないつもりであったが、一旦司令官を引き受けてからは、全力でこの任に当たった。

 まず戦力であるが、正規軍では白軍全てと黒軍の約3分の2を味方につけることに成功し、また、味方にならなかった者についても、プロパガンダ等を駆使しサボタージュを発生させるなどした。更に、元白軍主将ペガサス・フォードに代表される義勇兵団などが加わり、単純兵力では正規軍のそれを上回ることに成功する。

 そして根拠地は、反乱支援勢力の政治的要因もあって南リーザスになったのであるが、これは中々に上手い立地であるといえた。
 当時リーザス王国が国境を接していた勢力は、北にヘルマン帝国、西にゼス王国、そして南に自由都市群であった(注釈:東は大陸の果てである)。
 ヘルマン帝国とリーザス王国は、その国家建国からの宿敵ともいえる間柄である。
 そもそもリーザスはヘルマン帝国の一領土にすぎなかったのであるが、建国の英雄グロス・リーザスにより、ヘルマン帝国に反旗を翻して独立した国家である。当然ながらヘルマン帝国はこれに強く反発し、両国の間には度重なる戦争があった。
 つい前年には、ヘルマン帝国第三軍による首都リーザスの陥落などもあり、リーザス王国の敵対国のトップにくるのがヘルマン帝国であると言えた。
 そしてゼス王国であるが、こちらは数年来干戈は交えたことはなかったのであるが、隙あらば伺おうとする「仮想敵国」である。
 そんな中、自由都市群は各自治体統治ということもあり、唯一リーザス王国の脅威になり得ない勢力であった。
 南リーザスに勢力を張るということは、自由都市との接点は持つことになるが、前述二国との接点は無い。つまり、国境守備にある程度の兵力を割かねばならない正規軍に対して、反乱軍は後背を気にすることなく、その全戦力を内戦に投入することが出来たのである。

 こうして上記のように戦力を整えた反乱軍は、本拠地をオークスに置き、自陣営の町々に防衛戦力を残すと、サウスの町からリーザス城目指して進軍を開始した。
 通常、要害に寄った敵を打倒すには三倍からの戦力がいるといわれる。堅城を謳われるリーザス城を攻めるならば、もっと必要であっただろう。だが、反乱軍の狙いは「リーザス城に進撃している」というニュースであり、実力で攻め落とす事は考えていなかったようである。つまり、これは内戦であり、この事柄によって国内の日和見勢力や現状の敵対勢力に対して「反乱軍有利」を印象付け、可能であるならばこれを吸収したいという意図であった。
 また、ありうる事態として、正規軍が出戦してくるということがあるが、これこそエクスとしては望むところであった。最終的な勝利は当然であるが、他国の介入や民情を考えると、可能な限り早期解決を望んでいたからである。
 会戦になった場合であるが、反乱軍側は兵士数、砲数共に勝っており、絶対はないにしても優位に推移できると踏んでいたようである。
(注釈:当時戦場での魔法兵の役割は十数人からの大規模魔法による曲射砲撃が主攻撃方法であった。今日における野戦砲の役割を果たしていたのである。これは単独での魔法は威力はともかく射程という点で弓矢程度と代わりがなく、且つ魔法使いというものは、複雑な術法を行うにあたり、その動作を妨げないために鎧などをつけることが不可能であったため、前線に出た場合、弓兵の好餌としかならなかったためである。
 またLV2以上の魔法使いは、単独でこの大規模魔法が詠唱できるため、単純に砲が一門増える算段となり貴重であった。)


 反乱軍の情報を得たランス王は、貴下の軍隊を招集すると、これを撃破するためサウス方面に進軍を開始した。急な出撃であったため、一部遅れが出たが、これは青軍副将であるキンケードにより纏められ、主力を追うということとなる。

 両軍はリーザス、サウスのほぼ中間にある「オステロリッツ丘陵」にて会合することとなる。世に言うオステロリッツ会戦である。
 オステロリッツ会戦に参加した当初戦力は以下の通りであった。

 正規軍
  歩兵:20,000、 魔法兵:400
 反乱軍
  歩兵:28,500、 魔法兵:1200

 また、正規軍は別にキンケードによって主戦場に向かっている歩兵約5,000がいたが、開戦には間に合っていない。当時のリーザス全軍が約8万と言われていたから、両軍とも動員兵力の略全てを叩きつけてきた計算であった。
 反乱軍は同地で最も高度のある丘を占拠することに成功し、そこに本陣を張り、至極真っ当な野戦布陣を取った。これに対して正規軍側は、同丘陵に正対する比較的見晴らしの良い丘を本陣とし、布陣したのであるが、ここでランス王は右翼の兵数を少なく配置する。

 エクスはこのあからさまな敵右翼の弱体をいぶかしむが、この措置により敵側を利する点を見出せなかった為、当然のように敵右翼に対して攻勢を取ることを決めた。
 兵数で優位なこともあり、特に自軍右翼及び中央から戦力を抜き取ることもせず、左翼部隊のみで敵右翼に攻勢をかけさせて、崩れたところを予備兵力投入で抑える算段であった。
 昼前の開戦と同時に、この行為によるリアクションはすぐに現れた。反乱軍側から見て右翼と中央は互角に推移するが、左翼部隊は敵右翼を攻め立て圧倒していったのである。
 正規軍右翼を担当していたのは青軍主将ゴルトバ・バーンである。彼率いる青軍は、防衛戦に優れ「リーザスの青い壁」とまで謳われる部隊であったが、それは十分な防衛設備の建設能力とそれを生かす能力が高いということであって、純粋に各兵士の防御力が高いというわけではない。
 したがって、このような会合即開戦的な戦闘では青軍の特徴であるそれを十全に発揮することは出来なかったが、それでも彼らは、戦闘前の僅かな時間での準備と戦闘での献身的な努力で、崩れそうになる戦線をかろうじて繋ぎ止めていた。

 優勢に展開していた自軍左翼であったが、ゴルトバの必死の指揮もあり、これを敗走させるためには後一撃決定的な何かが必要であった。
 エクスはここを決勝点とするべく、自軍魔法部隊を再編成し左翼支援に当て集中砲撃を行った(魔法砲撃による敵陣形攪乱)。また同時に来るべき瞬間のため、自軍予備兵力を左翼に投入すべく配置しなおす。この時点で反乱軍側の注意は完全に左翼(正規軍右翼)に集まっていた。

 午後1時頃、このような反乱軍側の努力により、正規軍右翼の戦線に綻びが現れた。ここで反乱軍は予備兵力を投入し、一気に敵右翼の撃滅を図る。投入された予備兵力はその力を存分に発揮し、敵右翼をほぼ壊滅させることに成功する。後はそのまま回り込んで、敵の暴露した側面を脅威すれば勝利は確実と思われた。
 だが、そこに後発であったキンケード率いる部隊が到着する。これにより、正規軍は多少歪であり、また極めて弱いものであるが右翼を再構築することに成功し、そして貴重な時間を得ることになる。

 この反乱軍側の左翼攻勢と同時刻に、正規軍の左翼も攻勢を掛けていた。しかしそれは反乱軍側の直接的なそれに比べ、多分に間接的なものであり、劇的に流動しているゴルトバ将軍側の翼側に比べれば、非常に静かな推移であった。
 正規軍左翼を担当していたのは黒軍主将バレス・プロヴァンスである(注釈:中央はランス王による直接指揮であった)。彼は自軍戦力から一部を抜き出し、それを最左翼から敵背後を脅威すべく企図し行動させた。当然ながらこの動きは、反乱軍右翼でも察知し、それを防ぐべく自身もさらに自軍右翼に部隊を展開させることで対応する。
 この一連の奇妙な機動合戦により、正規軍左翼と反乱軍右翼は、その兵数に比べて著しく長い戦線を持つこととなる。そして、バレスによる自軍最左翼からの攻勢開始により、反乱軍右翼はさらに牽引される結果となり、自軍中央との間に決定的な空洞を生じることになった。
 反乱軍にとって不幸であったのは、この時点で反乱軍は左翼に大攻勢を行っていたことである。
 通常であれば、この類の間隙は密度のある中央軍、もしくは予備兵力により埋められるものであるが、戦場の目はほぼ全てが左翼大攻勢に向けられており、またこの方面の動きが多分に間接的であったため、注意が左へ集中してしまいエクスのところまで報告が届くのに致命的な遅延が生じたのだ。

 ランス王はこれを見逃さなかった。自軍の魔法兵力に対し、敵右翼と中央の結節点に集中砲撃することを命じると、予備兵力全てをこのポイントに投入したのだ。
 正規軍予備兵力として用意されていたリックアディスン将軍率いる赤軍の約3000名は素晴らしいスピードで、バレス将軍の牽引により密度の薄くなっていた結節点を一気に破壊すると、そのまま回り込み、孤立した敵右翼(注釈:バレス将軍側)の翼側に対して攻勢をしかけた。

 自軍右翼との連結を断ち切られた反乱軍は、当然のように右翼を救うために数度に渡る攻撃をかけた。しかし、それらは正規軍本隊により全て跳ね返され、さらに反乱軍右翼が想像以上に早期崩壊したことで(注釈:元々リーザス軍であったため、不利になると粘りはなく、投降の呼びかけに簡単に応じた)戦場のバランスは一気に正規軍側に傾くことになる。
 この間、反乱軍左翼はゴルトバ、キンケード両将軍の守る翼側を継続攻撃していたのだが、反乱軍結束点を破壊したことを見届けたランス王は、ここに増援を差し向けていたので、この戦場は一進一退となっていたのである。

 そして、正規軍左翼(注釈:バレス部隊)が反乱軍中央を圧迫する局面となると、反乱軍は持ちこたえることが不可能となり、遂に敗走することになったのであった。

 こうして、オステロリッツ会戦は正規軍側の完勝で終わった。
 この勝利により、内戦は時を置かずして完全に鎮圧される結果となる。
(注釈:反乱軍はオステロリッツにおいて致命的な打撃を受けたが、エクス主導による献身的な撤退により、防勢を主眼として戦いを継続するだけの戦力は残していた。しかしそのようなことになれば、国土の荒廃と他国の介入を得るだけとし、エクスは軍を率いて降伏したのである。)

 オステロリッツ会戦は、絶妙としか言いようのない右翼援軍到着が全てであった。もし仮にキンケード将軍の援軍が、中央圧迫後(注釈:反乱軍による)であったならば、右翼再構築を成せずに正規軍は敗れ去っていただろうし、予備兵力投入前(注釈:反乱軍による)に到着していたとすれば、反乱軍側の結束点暴露という事態は発生しえなかったかもしれない。
 後世、オステロリッツ会戦は、ランス王会心の作戦の一つに数えられるが、以降この手の作戦群は後のリーザス軍総参謀長となるアルコート・マリウス立案であったことを考えると、この当時彼女はいなかったわけであるから、その立案、実行はランス王自身に求めることとなる。
 だが、オステロリッツ会戦は、事前に取り決められた作戦要領などに上記のような事柄は見受けられない。つまり、キンケード将軍の来援時刻は計算されたものではなく、あくまでも偶然の産物であったという可能性が高いのである(注釈:来援した場合、右翼投入は決められていた)。
 これを強運とか武運と人は言うのであろう。しかし、その後このファクターを素早く取り込み、更にバレス将軍の機動を奇貨とし、決定的なポイントに予備兵力を叩きつけたのは彼の卓越した戦術眼のなせる業といえる。

 彼のこの直感的戦術眼、そして戦略眼は、その退位まで共にあり、彼の栄光に多大な貢献をする。そして後にアルコート・マリウスという作戦能力を手に入れた時、激烈な化学反応を起こし、リーザス常勝の金字塔を築くことになるのである。
(注釈:アルコートの計算された幾通りもの作戦案の中から最良のものを常に選択していったのはランス王である。また、アルコートが予測出来そうもないこのランス王の「直感」までも計画骨子に含めていたことは、瞠目に値する。ちなみに、政略に置いてアルコートと同様、もしくはそれ以上の役割を果たしたのはマリス・アマリリスであったことは言うまでもない)

 後の歴史を知る者にとっては、彼の生涯における戦いの中で最も賭博性に富んでいた戦いは、間違いなくこの内戦鎮圧であったと言う。この後、彼が行う幾つかのキャンペーンでは、彼は常に相手に対して優位な何かを持ち、またそれを活用することでそれらの戦いを有利に進めていくのであるが、この内戦においてはそういった、この後の彼の戦い方の特色が全くなく、純然たる戦力の衝突であったことは興味深い。

 だが、多くの成功者がそうであったように、その成功の序章として乾坤一擲の勝負に出、それに勝ち残ったものこそが、資格を得ていることを考えると、この時のランス王は内戦を勝ち抜いたことで、資格を得たといえるのであろう。また、成功者は常にその勝ち取った果実から、最大限の収穫を得ることに長けたものに限られることも、歴史上の事実である。

 この点において、ランス王は非凡であった。

 まず彼は、反乱を起こした軍兵士に対して一切の責任を問わなかった。反乱軍の主将に置かれたエクス・バンケットですら、軍部除籍処分であり、また後に白軍司令官に復帰していることを考えると、真実無罪放免を一貫したといえる。
 このことで、彼が元々持っていた軍部に対しての支配力は、益々確固たるものとなり、リーザス王国軍は「ランス王の私兵」と言い換えることが出来るほど、親王派となっていくのである。

 他方、ランス王が戦後行った内政へのメスは、メスというより「鉈」と表現して差し支えがないほどであり、半歩間違えれば暴虐とも言える処置であった。
 冒頭に記したが、この内戦は「ランス王即位時における初心演説があまりにも荒唐無稽だったため、軍の清流派が蜂起した」というのが当時の公式発表であるが、内実は当時王女であったリア・パラパラ・リーザス王女が、どの派閥にも属さない、一般人(冒険者)であったランスという王を迎えたために、国内の実権獲得を狙っていた力ある貴族主導の反乱であったというのが実状である。
 ランス王は、この事実を確実に捉え、反乱軍に協力した貴族、「協力したと疑われる貴族」を課税や処分により、殆ど無力化する。そして、新法により彼らの所有していた広大な荘園の、その多くを国営とし、平民階級に対してこれを与えたのである。
 また、有力な資産家や商人が牛耳っていた商業資本を解体することもし、これによって不具合も出たが、大部分では流通などが活発化することとなり、リーザス王国は未曾有の好景気に突入することとなる。
(注釈:内政に関する改革は、ほぼ全てが筆頭侍女マリス・アマリリスの手によるものであったと現在では判明している。しかし、それを決断し実行したのは間違いなくランス王であった。)

 これらの施策により、ランス王は「軍部の忠誠」と「民衆の支持」という確固たる足場を持つこととなる。

 旧来勢力の排除、自己権力の確立。終わってみれば内戦により最大の利益を被った者は他でもないランス王であったことは意義深いといえる。このような結果を見て、一部史家には「ランス王は内戦を誘発した」と主張するものさえいるほどである。
 これは今後の研究課題として、非常に興味深い題材であるといえるものであるが、現在信頼に足る資料に、これを裏付ける事柄を発見できていないため、ここでは言及を控えるものとする。
 ただ、あえて言うのならば、故意に誘発したにしては、鎮火のために用意された水は少なすぎたのではないかというのが、筆者の意見ではあるが…


LP200X年  とある史家のレポート抜粋


おしまい


え〜とこちらでは初めまして、キツネそばです。
鬼畜王クロスに影響されて、妙なものを書きました^^;

後世の史家視点で白の乱について記載された書物という風に見てもらえれば
助かります。

書かれていることは、めちゃめちゃ私の脳内設定なので、お許し下さい。
ゼスとの「数年来干戈は交えたことはなかった」ですが、鬼畜王時点では
ゼスとの戦争記述がないため、これを採用しています。


△記事頭

▲記事頭

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