Ⅰ. USB-DACの製作と機材の準備

 USB-DACとはどんなものかについて簡単に解説し、自作するキットの入手方法と製作について説明します。また、今回新たに必要となる機材をとりまとめます。

1.USB-DACとはどんなものか

 お馴染みのCDもDVDも、そしてダウンロードした楽曲ファイルも、みなデジタルデータであることはご存じの通りです。本来はアナログである音声の波を、時間軸で微細に区切って(サンプリングして)数値化しているわけです。少し細かい話になりますが、このサンプリングの密度をサンプリングレートと言い、CDでは16bit/44.1kHz、つまり1秒間に16ビット単位で44,100回ほどデータをサンプリングしています。ハイレゾ音源では24bit/96kHz~192kHzと情報のサンプリング単位と回数が大きく、より高解像度でクリアなデジタルデータの作成・再生ができることになります。
 パソコンも多くのモバイル機器も、これらのデジタルデータを音楽として再生できるのは、デジタル信号を再びアナログ信号に戻すためのデジタル/アナログ変換、つまりDAC機能を持っているためです。しかし内蔵DACでは機器内部のノイズや設置スペースなどの関係で性能面の制約があり、これに代わって外付けのUSB-DACが今やPCオーディオの定番になっています。文字通りパソコンとDACをUSBケーブルで接続するだけで、簡単にオーディオ再生できるのが特徴です。

2.USB-DACを自作する

①USB-DACキットの購入

 USB-DACの値段はピンキリで、ハイレゾ対応の高級品はかなり高額のものもあるようです。完成品を購入しても良いのですが、ここでは経済性を重視してキットを利用することにします。ネット上でも話題の多い秋月電子通商から発売されているUSB-DACキットは、1,700円と廉価でネットから購入することができます。まずは、次のリンクで詳細をご覧ください。
      USBオーディオDAコンバーターキット(AKI.DAC-U2704)
          ===> ユーザーガイド

 キットを注文すると次のようなパーツ類1式が届きます(同社Webサイトの写真から転載)。
        上の8本はコンデンサー(左6本は電解コンデンサー、右2本はフィルムコンデンサー)、
        真ん中の4本は抵抗器、下左は基板、下右の2つはRCAジャックです(白:L側、赤:R側)。

②キットを組み立てる前に

 ほとんどの部品はボードに取り付け済みなので、電子工作に慣れていれば30分前後で完成します。念のために、はんだ付けに必要なものを掲載しておきます。

(図①)はんだごて 30W 先が尖ったもの
(図②)ヤニ入り糸はんだ
(図③)はんだ吸取線
    これは付き過ぎたはんだを吸い取るのに必要です。







 同梱の説明書には組み立て手順や部品の取付方法などの記載がないので、初めての人は個々の部品が何であるかをしっかり確認してください。抵抗器については、ユーザーガイドの部品リストに5本帯のカラーコードが「15Ω(茶緑黒金茶)」などのように記載されています。


③キットを組み立てる

 部品を基板の正しい位置に取り付けます。電解コンデンサーには極性があり、リード線の長い方がプラスなので注意してください。取付位置に間違いがないことを確認したら、それぞれのリード線を少し外側に曲げて、裏返しても部品が落ちない程度に調整します。
 はんだごてを穴のメッキ部分とリード線の接合部に当て、糸ハンダを穴に注入するような感じで溶接します。穴が小さいのではんだが溢れないように注意しましょう。特に隣接した穴とくっつかないように注意してください。はんだが付きすぎた場合は、はんだ吸取線をその部分に置いて、はんだごてを押しつけて加熱すると簡単に吸い取ることができます。
 作業終了後はリード線に触るなどして溶接が確実にできていることを確認し、ニッパーでリード線を切り取れば完成です。
        (写真は電解コンデンサーの一部を別規格のものに取り替えています)

3.その他の所要機材

①パワードスピーカー

 製作したUSB-DACはアンプを内蔵していないので、出力側はアンプを通してスピーカーにつなぐことになります。この点についてはすでに「全体の構想」で述べましたが、アンプ内蔵のパワードスピーカーを使うことにしました。
 いくつかのスピーカーを比較検討した結果、ヤマハのパワードスピーカー NX-50(B)に決定。本来はパソコンやテレビの外付けに用いられるようですが、デザインも音質もまずまずで気に入っています。

②オーディオ変換ケーブル

ヤマハ NX-50はステレオミニジャック接続なので、USB-DACとの間に変換ケーブルが必要になります。富士パーツ商会のFVC-342A「オーディオ変換コード: ピンプラグ x 2 <-> φ15mm ステレオミニジャック 長さ1.5m」を使用しています。