AUDIO PCI / Ensoniq

GoldenMelody SC972 / Formosa


接続バス:PCI Bus (32bit 33MHz 5V)

サウンドコントローラ:ES1370 / Ensoniq + AK4531-VQ / AKM

対応機種:PC/AT互換機

動作確認マシン/マザーボード:PC-9821Xv13/W16GA-586HX2MS-5164GA-586SGTI5VG+ / Taiwan My CompGA-686BXSY-6BA+GA-6BXEMS-6163P3B-F


 1997年に入って突如登場し、瞬く間に市場を席巻した傑作、ES1370を搭載するPCIバス対応サウンドカード。

 同一デザイン(リファレンスデザイン)による台湾メーカー製カード(但し基板の仕上げや実装パーツには幾らか相違があった)が大量に出回った事で知られるが、筆者が使用したのは上記の通り、Ensoniq自身の手になる純正品(恐らくGateway向けOEMの流出バルク品。基板裏面に1370-0001-01及びE15240134 Rev.Eという表記があり、98年第8週に製造。外部入出力コネクタが赤/黒/緑で成型されており、基板面のGNDパターンがベタではなく網目状になっているという特徴がある)と、Formosaなる台湾メーカー(実はFICの別ブランド)の製品(GNDがベタで外部入出力コネクタが全て黒い)、の2枚であった。

 ES1370はDOS/Windows上でのSound BLASTER 16互換(イニシャライズを専用ユーティリティ/ドライバで行う為、リソース決め打ちでDOSを介せず直接ブートするメガデモなどは正しく動作しない場合がある)環境と非常に優秀なWave Table方式のハードウェアシンセを実装する、シンプルかつ強力なチップで、AC'97制定直前に誕生したため内部処理などで同規格からやや外れる部分もあったがこれにかなり近い仕様で、事実チップ構成もD/A・A/Dコンバータを外付けのAKM製Codecチップ(AK4531-VQ)に任せてノイズ対策を容易にするなど、後のAC'97準拠チップ群に酷似した設計となっているのが見て取れる。

 音質的にはやや厚みに欠けるきらいもあるが、この種のサウンドカードとしては充分以上の出来で、特にEnsoniq純正品は非常にローノイズで好評を博した(但し、SC972の方もヒスノイズが結構抑えられていた)。

 これらのカード/チップのセールスポイントは何よりそのローノイズ設計(実用に足る音質を実現したまともな量産PCIサウンドカードという意味では、恐らくこれが最初の例だったのではないだろうか)と、名高いEnsoniqオリジナルWaveTable音色ファイルの利用が可能な事、それにPCIデバイス故の低CPU負荷率の3点で、殊に音色ファイルは、当初(Ver.1)2MBのGM互換配列音色と、4MBのGS互換配列音色(但しEnsoniqの個性が強く、SC-55を前提とするデータの再生時にはかなり違和感が残る)の2種が提供されていたが、EnsoniqがCreativeに吸収合併(1997年12月10日合併)される前後にリリースされたVer.2以降の音色ファイルで提供される様になった8MBのGS互換配列音色ではMIDIシンセとしての表現力が4MB版と比べても大幅に高まっており(もっとも、GSデータの再現性の点では相変わらずであった)、ドライバ更新による3Dエフェクトの追加やアナログ4ch出力のサポート(Codecチップのミキサの内部切り替えで実現し、Line Inをリアスピーカーに割り当てる)もあって、これらは非常に使い易い優れたサウンドカードとして市場に受け入れられる事となった。

 何より、その高性能にもかかわらず、ドライバがコンパクトであるのも魅力の1つで、安定性も高い為、今なおあちこちで愛用され続けている。

 これは余談だが、PCIバス搭載のPC-9821シリーズでこの系統のチップを搭載するカードを利用する場合、カードの取得するリソース(I/Oポートの0020H)をデフォルトから変更(例えばWin9x用ドライバの場合、バイナリエディタでEAPCI.VXDあるいはES1371.VXDに含まれる66BA2000と66BAA000というデータ列を探し出して前者を66BA0000、後者を66BA0800に書き換える)しておかないと、98本体のシステムタイマーを叩いて時間設定を滅茶苦茶にしてしまうという、一見気付きにくいが非常に恐ろしいトラブルを引き起こしてしまう(例えばこのカードを98に挿したままの状態でWindows 2000をインストールしようとすると、PnPでInBoxドライバが自動インストールされる為、インストール中に強制的に時計が滅茶苦茶にされ、その結果書き換えた時刻の前後関係に依存するファイルの判別が出来なくなってインストールプロセスが停止してしまう)ので注意を要する。

 98でこの系統のカードを利用される方はこの点について特に注意していただきたい。

 Ensoniqブランドとしては、AC'97に対応した改良型のES1371に進化した後、Creative Ensoniq名義でSound BLASTER Audio PCIあるいはSound BLASTER PCI64としてベンダコードをCreativeのものに変えて生産・販売が継続され、その後OEM用のES1373やCT5880等へと発展して今なお現行製品の座に留まり続けている。

 EnsoniqがCreativeに吸収合併された結果、Ensoniq純正品を対象としたリファレンスドライバの進化は(かなり意図的というか作為的に)止められてしまったが、その一方でCreativeに引き継がれた事によって一種の「純正品」として認知される様になったのも確かで、前にもまして大量に世界中にばらまかれたお陰で各種OSのサポートも充実しており、SPDIF出力必須という事にでもならない限り、恐らく今後も世界中で長く愛用され続ける事だろう。

 何より、その資格が充分に備わった素晴らしいチップであり、カードである。

 但し、この記事を読んで今からこの系統のカードを中古を捜される方には、Ensoniq純正品、さもなくば(Windows2000をお使いならば特に)Sound BLASTER Audio PCIあるいはSound BLASTER PCI64を求められる事を強くお勧めしておく。


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