笹本玲奈（２）痛いところをつかれた

―― ここを見てほしいという場面は？

笹本：　たくさんあります。基本的にジュリーとビリーの場面はシリアスなのですが、それと対照的にキャリーとスノウの２人はプラス思考でポジティブで、夢をどんどんつかんでいく、まさに当時のアメリカンドリームを象徴しているカップルで、２人が舞台に出てきて歌うとガラッと空気が変わるんです。昨日の通し稽古で、客観的に観ていて１８０度空気が変わるのがとても面白いと思いました。ジュリーとビリーが退場して、キャリーとスノウが登場した瞬間にがらっと明るい赤とか黄色い色の空気になる。この対照的なカップルが面白いです。
　それと最近のミュージカルでバレエシーンってなかなかないですよね。この作品の見どころの１つとして、バレエシーンがすごく素敵に出来ているんです。踊りだけで表現するシーンが突然出てきて、それがファンタジックなんです。

―― 場面として全然浮いてないんですよね。

笹本：　そうなんです、きっちり必要なシーンとして描かれています。それにジュリーの立場として、娘のルイーズが踊っている姿を観て、すごく感動して涙が出てきたんです。母親の目線で見ていたと思うんですが、ルイーズってとても傷ついた心を持った少女なので、踊った後、ぽつんと取り残されたルイーズを見て、すごく切なくなりました。

―― 笹本さんご自身の場面では？

笹本：　ジュリーが「それだけのこと」というナンバーを歌う場面で、痛いところをつかれたなと思いました。ビリーに暴力を受けた後、女性たちに向けて、彼を愛してることが重要なんだから、そのほかのことはどうでもいい、考えても仕方ないじゃない、と歌うんですが、初めて台本を読んで歌詞を見たときにズキンときたんです。本当にジュリーって心が大きいと感じて。
　本来、こういう風に思っていなくてはいけないんだなってわかってはいたけど、なかなかそうは言えないというところをジュリーの歌に突かれたというか、痛いところを言われたなというか。たぶん女性の方は観ていて心を動かされるんじゃないかなと思います。とてもジュリーらしいし、ジュリーの性格をすべて表しているシーンだと思います。

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