ナギナタコウジュ Elsholtzia ciliata

ナギナタコウジュ Elsholtzia ciliata(シソ科 ナギナタコウジュ属)
1年草
花期:8-10月

 日本全土の山地、野原の路端を問わず至る所に見かけられる1年草で、草丈30〜60cm、葉は対生し葉柄があり、卵形または長卵形で3〜9cmほどで、縁が鋸状になっています。
 茎はシソ科特有の四角柱状で分枝し、茎頂と葉腋に長さ 5〜10cmの太い花穂を出し、片側に反る小花を密に咲かせます。全草に心地良いほのかな香りをもっています。

 名前の由来は、漢方の”香需(コウジュ)”(Elsholtziae Herba)に当て、花穂が薙刀のように反り似ることから、このふたつを合わせ、ナギナタコウジュと名付けられたといいます。また”穂荊芥”ともいいます。

 ナギナタコウジュは荒れ地で特によく育ち、郊外の造成地の端に大量に発生することがあります。1年生であるため、年毎に成育地が移動します。また、畑のように耕した肥沃な雑草のない土地には野生ではほとんど見られず、山地などでは畑に通じる日当りのよい路端の芝草類の刈り込まれた所で自生しています。

 今日、世間ではハーブがブームになって全国各地にハーブ園が開設され、咲き競う花々が若者達を香りの世界へと誘うように魅了させています。

 元来ハーブとは薬になる植物の総称で、今、ブームになっているハーブは、その中の一部の香草を呼んでいるようです。特に外来種で、強い香りのものを選択してポプリ作りを楽しんでいます。
 日本にも香草は沢山あり、食生活や風習の違いによって異なる方法で利用してきました。例えば、食品としてはこのナギナタコウジュのシソ科の代表種の”紫蘇”は梅干しの香り付けと紅色の化粧に、和菓子でも風味と薬効を加える桐生名菓の”紫蘇入花パン””甘露梅”など、いずれもハーブを主体にした食品で、食物が強健でよく発達した肉体を造るという根本から作り出されたものです。さらに日本ハッカも同様にアメ菓子やシロップなどに古くから使われているのも周知の通りです。
 毎日の食事の中に薬効と味覚を同時に得る”薬味”という方法で”ネギ”や七味を加えた”トウガラシ”なども代表的な日本のハーブの優れた使い方です。  またさらに、野菜の漬物などを”香の物”として賞味するのも日本特有の芳しい香りの文化です。

 これらは皆、今でも生活に実用されていますが、毎日々々 繰り返し行うので真の価値が無意識化されてしまっているようです。そして近代の細分化された社会の中では人々は、自分の得意分野に全力を向けて行動するあまり、利便さだけを安易にまねて、貴重な真価についてはいつしか意識の中から薄れさせ、やがて忘れてしまう。

 ナギナタコウジュは、昔は大変貴重な民間薬であったといいます。その薬効は、利尿、発汗、解熱、全身浮腫、腹痛、吐瀉、発熱悪寒などに効用されてきました。しかし、昭和30年代頃(1955 -1960)から民間薬の必要性が薄らぎ今日ではほとんど利用されていないと言っても過言ではない状況です。が、先日体調が思わしくないので病院に行って、診療を受けて渡された薬袋の中に、”専門医”曰く、「この薬は漢方薬で前の薬と違って副作用がなくて安心できる薬です。このような漢方処方薬が沢山できると良いのだがね。」と。近代医学を誇ってきた化学合成医薬品が今、自然の神秘の効力に再認識を加えてきたのでしょうか。

 緑の草木が人間生命の根元であり、その緑の大地こそが真の母体であることから、これを母なる大地と人は呼んでいます。
 母なる大地から生育されたナギナタコウジュは芳しい香りと薬効を秘めて無言で咲き誇ります。内に秘めた効力を、今流に使うのも一つの方法でしょう。

 日本人はお風呂好きの民族ですので沢山の種類の浴湯剤が市販されています。清い水が燦々と満ちる土地に住むことのできる日本人の恵まれた習慣で浴湯の醍醐味は格別な楽園です。
 開花期を待ち、刈り取った地上部全草を陰干しにして保存し、適量を浴湯に入れて使います。ナギナタコウジュの天然のミネラルを家庭のお風呂に入れて、観光地の温泉をしのぐ我家の薬湯温泉にとっぷりと浸り、美女に変身するのもいかがでしょうか。

腰痛、神経痛、リュウマチ、乾燥皮膚のひきしめと肌の潤いなどに効用ありとされています。