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No.2299の一覧
[0] ランスⅦ ~魔人の娘 黒姫~[Shinji](2007/01/23 23:38)
[1] ランスⅦ ~魔人の娘 黒姫 其の2~[Shinji](2007/01/26 13:21)
[2] ランスⅦ ~魔人の娘 黒姫 其の3~[Shinji](2007/02/04 16:34)
[3] ランスⅦ ~魔人の娘 黒姫 其の4~[Shinji](2007/02/09 17:32)
[4] ランスⅦ ~魔人の娘 黒姫 其の5~[Shinji](2007/02/15 00:19)
[5] ランスⅦ ~魔人の娘 黒姫 其の6~[Shinji](2007/02/25 00:59)
[6] ランスⅦ ~魔人の娘 黒姫 其の7~[Shinji](2007/03/03 10:29)
[7] ランスⅦ ~魔人の娘 黒姫 其の8~[Shinji](2008/07/31 07:28)
[8] ランスⅦ ~魔人の娘 黒姫 其の9~[Shinji](2008/08/03 06:37)
[9] ランスⅦ ~魔人の娘 黒姫 其の10~[Shinji](2008/08/07 11:07)
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[2299] ランスⅦ ~魔人の娘 黒姫~
Name: Shinji 次を表示する
Date: 2007/01/23 23:38
――――島津家。

カイロ・モロッコ・アマゾン・南アフリカの4ヵ国、
"アフリカ大陸"を領地とする、4人の優秀な兄弟が治めている国である。

各々がどれ程優秀なのかと言うと、彼らの生まれる代がそれぞれ違えば、
その一人一人が国主に相応しい人間になっていたと言うほどだ。

その為か女性達に圧倒的支持があり、とにかくモテてモテてモテてモテまくっているらしい。


≪ヒュウウゥゥ……≫


「…………」


そんな島津家の客将として生活している、"黒姫"。

彼女は島津の城の天守閣で風を感じ、遠い"東の方"を眺めていた。

黒檀の着物に、風に揺らぐ黒く長い髪……肌も薄黒く、その名の通りの"黒の女性"。


「……(刻が、近付いて来ている……)」


何故か何百年と年を取らず、その理由を知るものは島津でも彼女自身しかいない。

そうなれば恐らく人間では無いだろう……とは言え、
4兄弟達は彼女を慕っており、敬愛するあまり抜け駆けすら許されない存在である。

また黒姫にとっても、愛とまではいなかいが、彼らは可愛い息子のような存在であり、
だからこそ……こうして"あの者"に対しての不安を募らせていた。


「……(そうなる前に、私は此処から離れる方が……でも……)」

「黒姫。」

「……ッ? ヨシヒサ。」

「また、此処に居たのか?」

「ええ。」

「最近、そうしている事が多いようだが……何か悩みでもあるのか?」

「……ッ!」


そんな一人考える黒姫の後ろから、渋い男の声が聞こえた。

島津ヨシヒサ……タバコを咥えるこの良い男は、島津四兄弟の長男であり国主だ。

よって振り返る黒姫に、勘の良い彼は彼女の心境を察するが、
ヨシヒサの言葉に黒姫は一瞬だけ瞳を見開くだけで、ゆっくりと彼に近付き――――


「黒姫?」

≪――――ぱっ≫

「もうッ、ヨシヒサ。 煙草は此処では吸わないでって言ってるでしょ?」

「おっと、すまない。 "そのまま"来たのでな。」

「全くもう……その癖は何度言っても直らないんだから。」

「ふっ……それより黒姫、皆が待っている。」

「……ごめんなさい、行きましょう。」

「ああ、冷える前にな。」


厳格な表情で黒姫はヨシヒサの咥えているタバコを奪い取り、
彼は"やれやれ"と彼女からソレを受け取り、携帯用灰皿に吸殻を入れた。

ヨシヒサが何度言われても直らない癖……それは、
"女と寝た後"の一服であり、戦の前や戦の後の一服も、彼の生活の一部なのだ。

さておき、ヨシヒサは夕食の時間になっても現れない黒姫を迎えに来たので、
何気なく肩に手を掛けられながら、黒姫は天守閣から戻って行った。

――――最後にもう一度だけ、東の方向を振り向きながら。


              ラ ン ス Ⅶ 
            ~魔人の娘 黒姫~


翌日、天満橋を渡り終えた2人の旅行者の姿があった。

どちらもJAPANの民には"異人"と呼ばれる、大陸の人間。

……まずは鬼畜戦士・ランス。

いつもの緑の衣服の上からの鎧姿で、偉そうにマントを靡かせている。

……もう片方は奴隷兼、魔法使い・シィル。

天満橋を渡る前、既にJAPAN風の歩き易い着物姿に着替えているようだ。


「ふ~む、やれやれ。 やっと到着か。」

「まずはどうしますか? ランス様。」

「そうだな……まずは茶店でのんびりしたい。」

「あっ、そうですね。 私もお腹が空いちゃいました。」

「馬鹿者、お前は水だ。」

「うっ……しくしく。」


そんな何時もの会話の中、2人はモロッコの街中を歩く。

モロッコと言っても、どこぞの発展途上国(失礼)なような街造りでなく、
列記としたJAPANの町並みであり、ランスの視界に一軒の茶店が入った。

よって2人は自然とその茶店に足が進んでいったのだが――――


「おっ……おぉ~ッ?」

「どうしたんですか、ランス様ッ?」

「ぐふふふふ、なんか変な格好をしてるが、なかなか可愛いなぁ、あの女。
 少し腹が減ってはいるが、あの娘をJAPANセックス旅行の第一号にしよう。」

「えっ、えぇ~ッ!?」

「良し! 善は急げだーッ!」

「いきなりそんな~っ、ちょっと待ってくださいよランス様ぁ~ッ!!」


≪だだだだだだっ!!≫


茶店の近くの公園の前で、一人の女性が立っていた。

誰かを待っているのか、右足の爪先をトントンと鳴らしている。

しかし、JAPANの女性にしては変な格好をしており、着物姿では無く槍を持ち、
色黒の肌に刺青、頭にはヤシの葉と仮面のような装飾品をしていた。

ランスはそんな娘といきなりセックスしようと決めて走り出し、
シィルはツッコむ暇も無しに彼の後を追うしかなかった。


「まったく、何時まで掛かってるんだ、カズヒサの奴……

≪ぺろんっ≫

 ……ひゃあぁっ!?」

「おぉ、なかなか良い尻だ。」

「こッ、こらぁ! いきなり何をするんだっ!?」

「何って……尻を触っただけだぞ。」

「そんなのは判ってる! ナンなんだ、お前はッ? チカンか!?」

「チカンじゃあ無いぞ。 ところで君、名前は?」

「わ、ワタシは……アギレダだが?」

「ほぉ、アギレダちゃんか。 どうだ、俺様とセックスせんか?」

≪グッ≫ ←親指を人差し指と中指の間に挟む。

「は……はあぁぁ~~ッ? 何言ってるんだお前、頭オカしいのかッ!?」

「なんだと、失礼な。 俺様はナンパをしてるだけだぞ?」

「(ランス様~……いきなりお尻を触ることから始まるナンパなんて、聞いた事ないですよぉ……)」

「ふざけるな! 誰に破廉恥な行為をしたのかを、教えてやるッ!!」


≪――――チャキッ≫


アギレダと名乗った女性の後ろから近寄り、いきなりお尻を触ったランス。

それにアギレダは当たり前の反応をするが、ランスは全く悪ぶった様子は無い。

するとアギレダは"異人のチカン"に槍を構えて威嚇するが、
このようなタイプの女性に対して、ランスはどうセックスまで漕ぎ着けるかを学習している。

よって彼もカオスに手を掛けると、不敵な笑みを浮かべながら抜こうとするが――――


「ほぉ、やる気か~? それなら、俺様が勝ったら君がセックスさせてくれると言うのはどうだ?」

「面白い冗談だな! やってみろ、ワタシは負けないッ!」

「(ぐふふふ、勇ましくてグットだ! 第一号だし、これくらいじゃねぇと――――)」

「……やめときな、アギレダ。」

「んっ……?」

「か、カズヒサ。」


自分のペースだ……と、ランスが心の中でも笑った時、
公園の公衆便所から、一人の男がズボンのベルトを締めながら現れた。

"熱くさっぱり"女を翻弄する島津カズヒサ……島津四兄弟の次男であり、
アギレダが待っていたのは、この男だったのである。

そのカズヒサの登場にランスとアギレダの注意が向くが、彼はハッと何かを思い出したようだ。


「あッ……いけねぇ、手ぇ洗うの忘れたぜ。」

≪たたたたたっ……≫ ←公衆便所に走る。

「…………」

「…………」

≪すたたたたっ≫ ←戻って来た。

「ふ~、危うくションベン付いた手で過ごすトコだったぜ。」

「んで……何処のどいつだ、お前は?」

「んっ? あぁ……俺はな。」

「カズヒサ! 邪魔するな、ワタシはコイツを懲らしめてやるんだッ!」

「おぉ、そうだったな。 熊男、お前いいから帰れ。」

「いんや~、そうもいかねぇぜ。」

≪がしっ≫


マヌケだが何故か憎めない登場に若干脱力したランスを、
カズヒサはひとまず無視し、水の慕った手をズボンで拭きながらアギレダに近付く。

すると、カズヒサはいきなり武器を構えるアギレダの腕を掴み、槍を奪った。

そして"ずいっ"とアギレダを庇うように立ち、何とも正義の味方のような行動だ。


「か、カズヒサ!?」

「やめとけ、こいつは強いぜ? 多分、お前じゃ勝てね~よ。」

「そんな……でもッ!」

「いいから、いいから。 俺に任せとけって。」

「カズヒサ……」

「ランス様ぁ~、この人強そうですよ? あ、謝って許して貰った方が~……」

「うるさい! 奴隷が主人に口出しするなッ!」


ニヤりと口元を歪ませながら宥めてくるカズヒサに、アギレダの頬が赤くなる。

こうなれば、傍から見るとランスは完全に悪役と撮られても仕方ないだろう。

ランスもそれを何となく自覚してしまったのか、結構ご立腹のようだ。

こうして、ランスvsカズヒサと言う対戦カードとなり、2人はジリジリと距離を詰める。


「さ~て、悪党退治と洒落込むかぁ~?」

「えぇい不愉快だ。 殺す、絶対殺す!」

「イクぜ!!」

「どりゃあぁーーーーッ!!」


≪がしいいぃぃんっ!!≫


……


…………


ランスとカズヒサとの戦い。

その決着はナカナカつかず、約30分にも及んだ。

戦いの場も何時の間にか公園の中央に移り、二人とも肩で息をしている。


「ふひぃ~……」

「ぜぇぜぇっ……」

「あ、アンタ……なかなかヤルじゃね~か……
 俺に勝てる奴なんて、ヨシヒサの兄貴くらいしか居ねぇってえのによ……」

「当たり前だッ、くそう……レベルさえ下がってなきゃあ、てめ~なんぞ……」

「そんじゃまあ、そろそろキメさせて貰うぜぇ!」

「ぬかしやがれッ、ランスアタックで吹っ飛ばしてやらぁ~ッ!」

≪ぐぐっ……≫

『おいおいランス、こんな戦いにムキになってどうするッ?』

「うるせぇ、カオスッ!」

「カズヒサ! そ、そいつはキケンだぞッ、危ないんじゃ……!」

「い~や! こ~なったらもう、負けれぇぜッ!」


島津家では最強の武士であるカズヒサ。

ゼスでの戦い以来、サボった為か若干レベルが低下したランス。

この2人のパワーバランスは絶妙であり、今となっては公園に野次馬も集まって来ている。

それが鬱陶しくなった為か、このままでは埒があかない為か、
決着を付ける為に……2人は身を低くして互いの武器を構えた。

その時! 人込みを掻き分けて来た"女性"が近付き、カズヒサの姿を見た直後――――


「何やってるのッ、カズヒサ!?」

「く……黒姫ッ?」

「!? おぉ、美人の姉ちゃん……」

「あれ程言ってるでしょうッ? 街中で喧嘩しないでって!」

「ち、ちょっと待ってくれよ……このヤロ~がアギレダを……」

「言い訳は聞きませんッ!」

「うっ……」

「良い!? 大体いつも貴方は――――」

「(……ったく、ツいて無ぇぜ。 今日は折角待ちに待った、
 "黒姫と買い物に行ける日"だったって言うのによぉ……)」


若い"女性"の声が響き渡り、2人は咄嗟にその声の方向を見た。

すると黒姫が厳しい顔をしてカズヒサに近付いてきており、
ランスが彼女に見惚れて構えを解く中、何やらカズヒサを叱り付けはじめていた。

対してカズヒサは参っている様子であり、アギレダは複雑そうな表情でそれを眺めていた。

余談だが……各兄弟、毎月一度だけ"黒姫と街に出れる日(抜け駆け禁止)"と言う物があり、
カズヒサは"両手に花"を計画してアギレダと公園で黒姫を待っていたのだが、
そこで不運にも、アギレダに目をつけたランスと戦う羽目になってしまったのである……


「ほほぉ、黒姫ちゃん……ねぇ。」

「ら、ランス様。 大丈夫ですかッ?」

「当たり前だ、とりあえずヒーリング。 んでもって野次馬どもを追っ払え。」

「うっ……わ、わかりました。」


……


…………


「すみません、お騒がせして、すみません~。」

≪ぺこぺこ≫

「見世物じゃないんだぞ、帰れーっ!」


数分後、場所は変わらず公園の中。

シィルが謝り、アギレダが叫ぶ事で、野次馬達を追い払う。

それにより、公園には5人だけが残され、ひとまず一段落と言ったところだ。

……で、現在は黒姫がランスの前に向き直り、ぺこりと丁寧なお辞儀をしていた。


「申し訳ありません、あの子がご迷惑をお掛けした様で。」

「う、うむ。」

「あのなぁ、黒姫……元はと言えば、この異人がチカンを~……」

「カズヒサは黙ってて。」

「なんだよ、ヒデェなチキショ~ッ。」

「ところで、黒姫ちゃんとか言ったな?」

「……はい。」

「君は見てくれから、どっかの姫様なのか?」

「いえ……黒姫と言われてはおりますが、今は島津家の客将として暮らしております。」

「島津家だとぉう?」

「ランス様、此処一帯の領地を治めている国ですよ。」

「ほほぅ。」

「あなたは……ランスさん、ですね。 何かお詫びができれば良いのですが……」

「おッ? それじゃあ、何かご馳走でもしてくれッ!
 こっちに来たばっかで無駄な運動までしたモンだから、腹が減っちまってなぁ。」

「そうですか……そんな事で良ければ、喜んで。」

「おぉお、マジか!? そんじゃ~頼むぜッ!
(なんだか、黒姫ちゃんは俺様に気があると見た! こりゃ頂けるチャンスがあるなッ!)」


話の中……どうしてか、黒姫はランス側の肩を持ってしまい、
カズヒサの非礼を詫びる為に、ランスとシィルを城に招待する事にしてしまった。

本来ならばこんな事は言わないハズなのだが、ランスの自意識過剰のように、
黒姫は何故か無意識のうちに、ランスという"異人"に非常に興味が湧いてしまったのだ。

それは、"このまま"では"どうしようもない事"を何とかしなくてはいけないと言う焦りと、
彼に感じた"直感"からなるモノから来た行動であり、この選択は島津の"運命"を変えたとも言える。

さておき……黒姫の招待はランス&シィルにとっては願っても無い事であり、
ランスは早くも黒姫とエッチする事も視野に入れてしまったようだ。

一方、黒姫の選択が正しい方向に導かれてゆくとは言え、
常識的に悪い事はしていないカズヒサにとってはあんまりで、流石に指摘する。


「おいおいおい、本気かよ黒姫~ッ?」

「本気です。 ……と言う事で、カズヒサ。
 私はランスさんとシィルさんをお城に御案内しますから、今日は帰ります。」

「えぇ~ッ? そ、それじゃあ、俺の一ヶ月分の我慢がパァかよぉ!?
 せめてどっかで一緒に茶ぁ飲むくらいは――――」

「帰ります。」 ←低く強い声で。

「チぇッ……しゃ~ねぇなあ。(そう言う時の黒姫にゃあ、何言っても無駄だしねェ……)」

「カズヒサ……」

「ん、悪ぃなアギレダ、こ~なったら2人でデートでもしようぜ。」

「う、うん。」

「ピー、ピーピピー♪」 ←口笛。

「(くっそ~……丸腰だったし、隙があれば懲らしめてやろうと思ったのに、
 まさか助けられるなんて……何でこうなっちゃうんダよ……)」


……


…………


……数時間後。

ランスとシィルは黒姫の案内で島津の城に案内された。

そしてどう言う訳か、カズヒサを除く三人の兄弟と対面し、昼食を馳走になっていた。

現在は大広間に、ランス&シィルとヨシヒサ&トシヒサ&イエヒサが向かい合っており、
その間に黒姫が正座し、機嫌が良さそうな様子で互いの仲介役を担っている。


「シィルさん、お口に合いますか?」

「ぱくぱくぱく……えっと、凄く美味しいです!」

「何ぃ~、こいつに出すのは水だけで良いって言ったハズだぞ。」

「そう言わないで、ランスさん。 おかわりは沢山ありますから。」

「ふっ……まさか、カズヒサと引き分ける男が居るとはな。」

「本当なのかい、黒姫? ……信じられないな。」

「黒ねーちゃん! 何でこんなヤツ連れて来たのさぁ~っ?」


ランスとシィルは美味い飯にありつけたので、今の所不満は無い。

しかし島津兄弟達にとっては、憧れの黒姫がある日突然、
男(+シィル)を連れて来たので、各々は良い顔をしていなかった。

ヨシヒサに限っては冷静だが、彼も黒姫の異例な行動に疑問を抱いている。

逆にイエヒサは、先程からランスを挑発する言動ばかりである。


「"こんなヤツ"とは何だ、クソガキッ!
 あの勝負はなぁ、黒姫ちゃんが止めなきゃ俺様の勝ちだったんだぞ!」

「ウッソだぁ~カズヒサ兄ちゃんより強いやつなんて、居てたっまかよ~!」

「多少引っかかるが、その意見には同意だね……」

「パツキンまで疑いやがって! 俺様はなぁッ、大陸じゃ~無敵の男なんだぞ!?」

「ほぅ……≪ジュボッ≫……大陸の、ね。」

「信じて無ぇってツラすんじゃねぇ! 俺様は、アイスの街のキースギルドの……」


馬鹿にしたような素振りのイエヒサ、髪を掻き揚げながら全否定するトシヒサ。

そして……タバコに火を点けて口元を歪めるヨシヒサに、
ランスはムキになって自分がいかに強くてカッコイイ男であるかを話し始めた。

大人気無い事この上ないが、何故だかこの兄弟達に強い対抗心を抱いてしまったのだ。


……


…………


「……と言う訳でだな、ポルトガルの南に"闘神都市"ってのがあるだろ?
 あれは何を隠そう、俺様の活躍で"堕ちた"と言って良いって事だ。」

「ふっ……」

「ハハっ。」

「あははは! ……バッカでぇ~、そんなホラ話、信じるワケ無いじゃん!
 話の内容は面白いとは思うけど、魔人とか魔王を倒したなんて、ありえないしッ。
 それに"そいつら"って、普通の武器じゃ絶対に殺せないんでしょ?」

「……(魔人と、魔王を……それが本当なら……)」

「なんだとォ~ッ!? だからこの"カオス"で、
 バッサバッサと魔人どもを斬り払ってだなぁ……!!」

「ほぉ、その……喋る剣が、か。」

「確かに、変わった剣だが……いかんせん下品で、美に欠けるな。」

「そういや面白い剣だよねぇ、何処で売ってんの~、それ? 僕のお小遣いで買えるのかなぁ?」

「下品なのと、売っても5ゴールド位にしかならんのは否定せんが、
 "これ"のお陰で魔人を斬る事ができるんだぞッ!?」

『な、なんか酷い言われ様じゃ……』

「ダメダメ、そんなんじゃ信用できないよ。 だから、もっと聞かせてよ。」

「うぬぬぬぬッ……こうなったら、とっておきの話をしてやるッ!
 お前ら田舎者でも、此処最近ゼスで一波乱が起きたのくらいは知ってるだろうッ?」

「うん、マジノラインがナンとかカンとか……それがどうかしたの?」

「それは俺様が"アイスフレーム"の隊長になってだなぁ~……」


……


…………


……数時間後。

話を全く信用しない島津兄弟に、ランスは更に自分の偉大さを話し続けていた。

その必死の説明を、イエヒサは楽しいホラ話しとして聞いているようだが、
トシヒサは何時の間にか火縄銃の手入れをしながら適当に相槌を打つだけで、
ヨシヒサに至ってはデートから戻って来たカズヒサと将棋を指していた。
(アギレダも少しだけ聞いていたが、数分後アクビをして去って行った)

すなわち、思いっきり馬鹿にされてしまっており、
やはり黒姫に連れて来られたの彼が気に入らないのだろう。


「ぜぇぜぇっ……と言う話でだな、俺様は魔人・カミーラをも倒した最強の男なのだ。
 ゼスの王女も俺様にゾッコンで、その気になればリーザスとゼスの王になる事もできるんだぞ!」

「ふ~ん、成る程ねぇ、なかなか面白かったよ。
 ランスって、戦士より作家の方が向いてんじゃないの~?」

「はーーッ……≪キュキュッ≫……ダメだ、まだ銃の輝きが足りないな……
 この俺に相応しい武器は、もっと美しくなくては……」

「王手。」

≪パチン≫

「えぇっ!? うはッ、やられたぁーーーーっ。」

「むき~~ッ! 何なんだその態度は! 折角説明してやったと言うのにっ!」

「信じろって言うのが無理な話だろぉ? カズヒサ兄ちゃんと引き分けたのが本当なら、
 確かに凄いけど、魔人をやっつけるんなら、もっともっと強くないとダメなんだろうし。」

「うっ……それは、レベルが下がってるダケであってだなぁ……」

「さて、そんなに喋れば疲れただろう。 晩御飯も手配する。」

「もうそんな時間か……武器の手入れをしていると、つい時間を忘れてしまう……」

「僕もお腹減ったなぁ。 カズヒサ兄ちゃん、今日の晩御飯な~に~っ?」

「そういや調理場通った時に、良い匂いしてたなぁ。 ちょっくら摘みに行くか?」

「うん、行く行く~!」

≪ヒュウウゥゥゥ~~……≫


……と、ランスが話しているうちに空は暗くなり、兄弟達は広間を出て行った。

そしてその場にはワナワナと震えるランスと、シィル・黒姫だけが残され、
何故か室内だと言うのに、冷たい風がランスのマントを舞わせた。

彼の必死の説明も空しく、最初から四兄弟は彼をからかっていたダケだったのだ。


「む、むかつく……アイツら馬鹿にしやがって……」

「ラ、ランス様~、こらえて、こらえて。」

「…………」

≪げしっ!!≫ ←無言でシィルにキック。

「いたっ! ……ひんひん。」

「あの、ごめんなさい……あの子達には同性の友達が殆ど居ないから、
 ランスさんなら良いお友人になれると思ったんですけど……全くもう……」

「黒姫ちゃん……あいつら全員斬って良いか?」

『ワシは一思いに、心臓を一突きしてやりたいぞ。』

「い、いけませんッ。」

「じゃあ、腕一本で許してやるから……」

『ならワシは、ち○ちんを斬り落すのでも構わんぞい。』

「そ……それもダメですっ。」

「つまらん、不愉快だ。 もう帰るッ!」

「そんな! 折角ですから、どうか夕飯も召し上がってくださいッ。」

「……ったく、仕方ねぇなぁ。 しかし黒姫ちゃん、
 ソコまで言うって事ァ~、そんなに俺様が好きなのか~?」

「!? ち……ちがいますっ。」

≪もじっ≫

「ん~? (ありゃ、もしかしてホントだったりするか?)」


バカにされる事にあまり慣れていなかったランスは、
本来ならば斬るところを、ショックでタイミングを逃してしまった。

よって本気で城から出ようかと思っていたが、どうしてか黒姫に止められた。

何故か哀願するような瞳であり……かといって、ヨシヒサ達の態度から、
黒姫も話を信じてくれていないと考えていたランスは、何となく冗談を返してみた。

すると……"俺様が好きか?"という言葉に、少しだけ黒姫の顔が赤くなり、
視線を逸らし、どう見ても照れている様子だった。

それをランスは妙に感じたのだが、ムカつく四兄弟の事に今は気が向いており、
現時点では深く考えない事にしてしまった。

だが、ランスの勘は正しく……彼の英雄伝を信じていた者も居たのだ!


――――魔人ザビエルの娘である、黒姫ただ一人だけ――――


……


…………


その後……黒姫も広間を去ってから、20~30分後。

2人がその場で待っていると、次々と料理が運び込まれ、宴の準備が始まった。

そして瞬く間に料理が並び終え、盛大な夕飯が始まったのだが、
宴が始まって5分も経たずに、ランスの機嫌が更に悪くなっていった。


「ヨシヒサ様ぁ、どうですか~? 私の作った手料理の御味はッ?」

「相変わらず、俺好みの仕上がりだな……だが、あまりカラダを押し付けるのは頂けん。
 胸の感触は心地良いが、いささか食べにくいのでな。」


「カズヒサ様~、おかわりどうぞー。」

「モグモグモグ……おっ、良いねぇ! 文句無しだぜッ!
 それにお前達の顔をオカズにすりゃあ~、何杯でもイケるってもんだ!」


「わ……悪いですよぉ、トシヒサ様ぁ~。」

「なに、俺が食べさせてあげると言ってるんだ……
 さぁ遠慮せず……小鳥のように、小さく可憐な口を開けてくれないか……?」


「ど、どうぞイエヒサ様ッ。 あ……あ~ん。」

「あ~――――パクッ。 モグモグ……うん、イケてる! 今度はそっちを食べさせてよ~ッ。」


何故なら……こんな感じで、四兄弟は各々何人もの、
美女とか美女とか美少女とか美女とか美女とか美少女とかを侍(はべ)らせながら、
なんとも贅沢なディナーを味わっているからである。

中にはJAPANなのに、異国の料理を口にしている者も居る。

そんな中、ランスは広間の隅でポツンと用意してくれた夕飯と向かい合っているのだから、
機嫌が悪くなったり、頭に来たりするのも仕方ないかもしれない。

横に居るのはシィルだけで、傍から見ると苛められている様にも撮れる。

決して粗末な持て成しでは無いのだが、島津兄弟達に華が有り過ぎなのだ。


「ぐぐっ……な、なんなんだアイツらわ……何て贅沢に飯食ってやがる~!」

「ど、どの人も……すっごく綺麗な人達ですね……」

「あの熊男とは俺様が勝利予定の引き分けだったと言うのに、
 何だこの敗北感はッ……シィルしか居ない時点で、もう勝負アリじゃねぇかぁぁ!!」

「が、が~ん。」

「こら~ッ、一人や二人くれぇこっちに回しやがれってんだーーッ!!」

「(あう、ランス様……酔っ払っちゃってる……)」

「そんなんじゃ、仕舞いにゃ後ろから女に刺されっぞーッ、ちくしょうがーーっ!!」

「……全くですね。」


摂取量は少ないが、ヤケ酒で早くも酔っ払ったのか、
"ムガーッ"と自分の事を棚に上げ、喧しく叫び散らすランス。

ソレを遠めに、島津兄弟の取り巻きの女性達には白い目で見られているが、
そんな近寄り難い様子のランスの元にも、近付く女性が居た。

準備を手伝っていたのか、ついさっき広間に現れた"黒姫"である。


「んガッ、黒姫ちゃん?」

「ランスさん、できればお付き合いさせて頂きます。」

「く、黒姫ちゃぁ~ん……」

≪ぶわっ≫ ←涙を流すランス。

「どっ、どうしましたか?」

「いや……何でも無ぇぜ、とりあえず酎してくれ~。」 ←涙を袖で拭いながら。

「はい。」


黒姫の追加により、ランスの取り巻きが二人になったのだが、
島津兄弟達の取り巻きは高ランクが4~6名である。

しかし、黒姫の追加は兄弟達にとってはショックであり、
彼らは揃ってランスと黒姫の様子をチラチラと見るようになったりした。

それに酔っ払っているとは言え、ランスが気付かない筈は無く、
彼は僅かな優越感を感じてしまうと、これはチャンスと黒姫への接近を図った。


「なあ、黒姫ちゃん。」

「どうしましたか?」

「あいつ等も女を侍らせてんだ、もうちょい近付くのだ。」

「で、では……」 ←おずおずとランスに近付く。

「隙ありぃ~ッ!!」

≪がばっ!!≫

「きゃっ!?」

「がははははッ、よいではないか、よいではないかーッ!!」

≪もみもみもみっ≫

「あのっ……そ、そんなところッ……」


更に"酔い"が進行しているのか、右隣に近付いてきた黒姫を、
酔っ払い親父よろしく、ランスは強引に引き寄せて肩を抱いた!

しかもそれだけでなく、下品に笑いながら、
肩から回した右手で彼女の右乳房をモミモミと揉んだりまでしている。

……それに4兄弟達が黙っているハズもなく、真っ先に反応したのはイエヒサだった。


「こ……こらーッ、お前! 何て事してんだよーッ!」

「五月蝿ぇぞ、ガキんちょ。 お前だって似たような事してんじゃねぇか。」

「うるさーい! 黒ねーちゃん相手なら、話は別だ~っ!」

「ちょっと……落ち着いてイエヒサ。 今貴方の方に行くから……」

「そうだよ! 黒ねーちゃん、こっち来てよこっちぃ~!」

「え~、黒姫ちゃ~ん……」

「では、ランスさん……(ボソッ)……」

「――――んっ? お、おう。 それなら行ってこいだッ。」

「ランス様……何を言われたんですか?」

「いや、何でも無ぇぜ。 ぐふっ、ぐふふっ、ぐふふふふふっ……」


島津四兄弟にとって黒姫に対してダケは、覗きやセクハラ行為もしてはいけない、
"抜け駆け禁止"の存在なので、イエヒサが怒り出すのも当たり前。

カズヒサとトシヒサも咄嗟に立ち上がろうとしてしまったが、
黒姫が直ぐにランスの元を離れたので、取り巻きの抑制もあってか、ひとまず座った。

ランスにとっては早くも黒姫が自分の元から離れてしまった事になったが、
彼を恐る恐る見たシィルは、デレデレと鼻の下を伸ばしている表情を確認した。

口では"何でも無い"と言ってはいるが、だらしない顔でバレバレであり、
シィルはこの先の展開に不安を感じるのであった。


「(黒姫が異人に? ……いや、まさかな……)」

「(くっそ~! ランスの野郎……俺だってまだ揉んだ事無ぇのに……
 ん……待てよ? 酔っ払ったと見せかけちまえば、胸揉んでも不可抗力に……)」

「(ふむ、まさか黒姫は……あのような男が好みなのか?)」

「(へっへ~んだ、黒ねーちゃんは最後は絶対に僕の者になるんだもんねッ。)」


……


…………


「なぁ~、兄貴ぃ? 黒姫どーしちまったんだ?」

「馬鹿な……あの異人を、今宵は泊めるなどと……」

「只単に、客人に対する善意だろう。 黒姫らしい事だ。」

「黒ねーちゃんらしいッ? そんな訳無いって!
 今迄あんな事一度も無かったのに、あの口のデカいヤツの事、絶対気に掛けてるよぉ~!」

「おいカズヒサ! 冗談にも程があるぜ?」

「全くだ……世の中には言って良い冗談と、悪い冗談が有る。」

「うッ……だ、だけど……」

「落ち着け。 確かにその可能性が無いとは言い切れんが……
 例えそうだったとしても、俺達は実力で黒姫を振り向かせる。 それだけだろう?」

「兄貴……」

「そうだね、兄さん……」

「わかってるよ! でもそんな事、絶対無いけどねっ!
 ……あぁ、トコロでさぁ? 異人の奴隷とか言う女の子、結構可愛くなかった?
 結構酷い事されてたみたいだし、僕達が一緒に居てあげる方が良いんじゃない?」

「おっ? そりゃ~俺も思ったぜ!」

「確かに……あの女性はあんな男とより、島津と共に有る方が幸せになれそうだ。」

「……どうかな?」

「兄貴ッ?」

「先程、目を見て判ったが……あの娘は手強い。
 今迄……俺達が口説いて来た女達よりも、ずっとな……」

「珍しいな、兄さんがそんな事を言うなんて……」

「くっそぉ~、ホントなんなんだよあの異人~ッ。
 それじゃあ、もしかして、あの"ホラ話"も本当だったんじゃ――――」

「イエヒサ。 俺あんま覚えて無ぇんだが、凄い事でも言ってたのか?」

「将棋に集中するフリをして、一応耳を傾けてはいたが……
 流石に、あの話が本当だとは考えられんだろう……とにかく、もう少し様子を見るか。
 何も無ければ、明日には土産でも渡して帰って貰えば良いだけの事だ。」

「ん~……そうか、そうだよな~。」

「確かに、勘繰り過ぎかもしれないな……」

「まぁいいや、僕もう眠いし、誰かに添い寝して貰お~っと。」


……


…………


「何だか今日は、黒姫さんにお世話になりっ放しでしたね。」

「うむ……あの4バカどもはこの上なく不愉快だったが、
 一応飯は美味かったし、この部屋もなかなか良い造りだしな。」

「…………」

「ん? どうした、シィルー。」

「あ、あの……部屋を別々に用意してくれましたけど、大丈夫なんでしょうか……?」

「まぁ、黒姫ちゃんが"大丈夫"と言ってくれたから、問題無いだろ。
 あのバカ兄弟どもが夜這いに来たら、焼き殺したり・斬り殺しても良い許可も貰ったしな。」

「それなら、大丈夫なのかなあ……」

「そう言う事だ……黒姫ちゃんが折角、奴隷には勿体無い程の部屋を用意してくれたんだ。
 素直に寝ておけ。 何なら、そっちのベランダで寝させても良いんだぞッ?」

「うっ……ぷるぷる。」

「じゃあ、さっさと行け~っ。」

「はっ、はい~ッ。 お休みなさい、ランス様。」

「うむ。」


……


…………


……深夜0時。

すっかり静かになった島津城の廊下を、ひとつの人影が歩く。

その影は、"ある者"の部屋の前まで静かに歩み寄ると、
キョロキョロと辺りを確認し、静かに襖(ふすま)を開いて中に入った。

すると、明かりの点いた部屋で"その影"を待っていたのは、
シャツとトランクス姿で布団に横になっていた、ランスであった。


「来たか、黒姫ちゃん。」

「……夜分に、申し訳ありません。」

「いやあ今夜、俺様の部屋に来るなんて言われた時ァ空耳だと思ったが、
 どうやら、俺様に惚れたようだなッ! ……そうだろう~ッ?」

「は……はい。」

「あらっ? や、やっぱそうなの?」

「……私は、カズヒサと戦っていたランスさんを一目見た時……
 何か"感じたモノ"がありました。 そして……ランスさんの大陸でのお話を聞いた時……
 あの時に"感じたモノ"が間違いで無かった事に気付いたのです……」

「良く判らんが……なんだ? 早い話、俺様に抱かれても良いって事なのかッ?」

「か、構いません。 それ以外でも、私に出来る事であれば、
 何でも致しましょう。 ですから、どうかッ……どうか――――」

「……っ? (何だ何だ、凄ぇ切羽詰った顔してるぞ……)」

「JAPANを……お救いください。」


……


…………


突然黒姫はランスを慕っていると言い、流石に焦るランス。

そんな彼女の口から次に出て来たのは、"JAPANを救って欲しい"という言葉。

対して話が見えないランスが首を傾げると、黒姫は自分の境遇を語り始めた。


……自分は"魔人ザビエル"の娘であり、その為か約500年も若いまま年を取っていない事。


……魔人ザビエルは500年程前に封印されたものの、復活の時期が迫って来ていると言う事。


……そのザビエルは非常に危険であり、彼が暴れればJAPANの民は皆殺しにされる事。


よって、黒姫は魔人を倒せる力を持っている"ランス"という男に力を借りるしかなく、
彼にどうにか復活したザビエルを倒して欲しいとお願いしてきたのだ。

かといってランスも"よし、わかった"とアッサリと認めるワケにもゆかず、
難しい顔をして腕を組んでいると、遂には土下座をしてまで頼み込んでくる黒姫。

この様子から、余程ザビエルは危険な存在であり、倒さねばならない者だと言うのが伺えた。

それによって首を縦に振ってしまいそうだったランスだが、
引っ掛かる点が幾つかあったので、話題を逸らすのも兼ねて黒姫に聞いてみる。


「確かに、俺様の"カオス"で魔人を殺す事ァできるが……
 ザビエルってのは、何処で復活するんだ?」

「……今、父……いえ、ザビエルは……8つの瓢箪に封印されています。
 織田・上杉・武田・毛利・北条・伊賀・明石・足利家に各一つ存在し、
 そのうちのいずれかが割れるだけで、近くの者に憑依し……いずれ復活を遂げるでしょう。」

「それなら、瓢箪ってのを割らないようにすりゃあ良いんじゃねぇのか?」

「いえ、刻が来れば……瓢箪は必ず割れてしまうでしょう。
 それと同時に次々と使途やザビエルの手の者が瓢箪を割り……
 いずれザビエルは復活を遂げてしまいます。
 かといって、"天志教"が蘇ったザビエルを再び封印しようと動いておりますが……
 例えまた封印しても……復活の刻は必ず再び訪れるでしょう。」

「となると……」

「はい。 魔人を"倒さ"なくては、JAPANに安息は、訪れないのです……」

『ランス、ワシは賛成じゃぞ? 魔人を封印なんぞするなどヌル過ぎる。
 五寸刻みにして地獄を魅せるだけでなく、魔血魂をこの世から消し去るのが道理じゃ!』

「それじゃ~バカ兄弟達はどうすんだ、黒姫ちゃんにゾッコンなんだろ?
 頼んだから、喜んで強力でもしてくれんじゃねぇのか?」

「……いえ……あの子達は巻き込みたくありませんし、
 私の私情で島津の者達をも巻き込む訳にもいきません。
 ランスさんが力を貸してくださるなら、私は明日にでも島津を出ます。」

「う~む……バカ兄弟と協力するとか言うなら嫌だったが、そこまで言うか……」

『良し! 魔人殺そう、魔人っ。 さっさと殺そう、ずばっと殺しに旅立とう~♪』

「五月蝿ぇ、バカ剣! ……しかし、そうだな。
 元々はJAPANの可愛い娘ちゃん達を堪能しに来た訳だし、
 魔人に暴れて貰っちゃあ、それどころじゃ無くなっちまうしな~。」

「そ、それでは……」

「うむ、乗ったぜ! ザビエルだか何だか知らんが、英雄の俺様の敵では無い。
 旅行の"ついで"にアッサリと殺してくれるわ。」

「!? あ……ありがとうございます!」

「ぐふふふっ、その前にだ。 黒姫ちゃん……さっき言った言葉は覚えてるな?」

「あっ……は、はい。 不束者ですが……宜しくお願いします……」

「がはははははっ!! 馬鹿兄弟どもめッ、黒姫ちゃんは俺様のモンだーーッ!!」


ランスは黒姫の強い決意を感じ、結局彼女の願いを聞き入れた。

中でも、"島津家を捨ててランスに付いて行く"という事が、決め手となったと言っても良い。

あの島津四兄弟に敬愛されまくっていた黒姫が、
"自分の方が好き"だと言ってくれている様なモノなのだから。

よって正座している黒姫は、再び深々と頭を下げると、
ランスのJAPANセックス旅行の第一号として、一晩中可愛がられてしまうのであった。


「そうだった……カオス、お前はベランダでマスでも書いてろ。」

≪ぽいっ≫

『ぐおぉ~ッ! 酷いぞい、やっぱりこうなるのかーッ!?』


……


…………


――――狂子。


それは、黒姫がザビエルから与えられた名前。

そんな名を付けられただけあってか、ザビエルに狂子への愛は一切無く、
幼い頃から彼女はザビエルの"遊戯"の相手として弄ばれていた。

早い話……簡単には死ねない体である、彼女への度の過ぎた虐待であり拷問。


≪――――ざしゅっ!!≫


縄代わりに両手の手首と両足の足首にクイを打ち付けられ……

四肢の骨が見えるまで肉を切り裂かれ……

全裸のまま沸騰した油の中に投げ込まれ……

時には、腸(はらわた)を引きずり出されたまま虐待を受け、
終わればそのまま放置される事もあった。


≪――――びちゃっ!!≫


その地獄は幸い長くは続かず、ザビエルは勇者の命と引き換えに封印され、
狂子は島津の旧国主に拾われた時……彼と恋仲となり、初めてを捧げた。

その者が老衰で逝去してからは、子供達の母親代わりとして生きる事にした。

よって450年客将として生活して来たが……それ以来、誰にも愛を感じる事は無かった。

島津の者達は確かに優秀だが、ザビエルに対抗できる力を持つ程の人間はおらず、
ここ50年は、ザビエルの復活の刻が迫っている事を感じ始め、
ただ……客将としての役目を果たしながら、ザビエルに抗う術(すべ)を探していた。

しかし、何も見つかる事は無く……そんな中で、狂子は苦悩し理解した。

自分が愛する事ができるのは、魔人を……ザビエルを倒す事の出来る者だけ。

そうでなければ、例え再び愛した者が居たとしても、ザビエルによって殺され、その者達は滅ぶ。

つまり……今、自分が此処に居ては、島津の四兄弟は成す術無く、
ザビエルに殺され、一度狂子が愛した島津・旧国主の武家は、滅んでしまう事となるのだ。

だとすれば……島津を離れなくてはいけないが、自分には行く宛が無い……そんな時、現れたのが……


――――魔剣カオスを持つ男、ランスである。


……


…………


ランスとのセックスは黒姫にとって、新鮮だった。

ザビエルが封印されたばかりとはいえ、島津の旧国主に抱かれた時は、
いずれ復活を遂げるザビエルに怯える気持ちが何処かにあった。

それは今でも同じハズなのだが……ランスはザビエルの事を話した唯一の男であり、
今迄"全て"を自分の心に閉まっていた事から、話すだけで気分がかなり楽になった。

また……彼の根拠の無い"絶対的な自信"で勇気付けられたり、
自分の胸元と左手のアザ(印)を見ても気にする様子皆無の優しさ(勘違い)もあって、
"あのような気持ち"で抱かれたのは、生まれて初めてだった。

ランスのセックスのテクニックは、島津4兄弟よりも遥かに劣るのだが、
黒姫は島津の旧国主以来、誰にも抱かれた事は無く、むしろ感じてしまっていた。

故に心臓が高鳴り、顔が火照り……あまりよくは覚えていないが、黒姫は乱れていた。

最後は自分からも体を動かし、快楽に身を委ね……何度も果てる自分があった。

そして全てが終わった後は、恥かしさにランスに背を向けて寝ようとしたが、
無理矢理彼の胸元に引き寄せられた時……それが非常に心地良く感じた。


――――そして、早朝。


「シィル、支度は終わったかッ?」

「は、はいっ。」

「良し、それじゃ~ズラかるぞ!」

「こちらに……あの子達でさえ知らない、抜け道があります。
 私が封印を解きますから、そこから外に出ましょう。」

「おぉ~、用意良いじゃねぇか!」

「いつか……このような日が来るのを、待っていましたから。」


……


…………


「カズヒサ、トシヒサ。 落ち着いて聞いてくれ。
 ……黒姫が、異人と共に……島津を去ったようだ。」

「あちゃぁ~、なんてこったい……」

「イエヒサは、何を?」

「あいつは今、島津領・全域に探索隊を出すよう指示している。
 目撃者の話によれば東に向かったとの事だが、
 念の為に……天満橋の監視も強化するようにしなくてはな。」

「チンタラ探してて良いのかよッ? もう"戦艦長門"に入っちまってるんじゃねぇのか?」

「だとしたら、島津領以外にも探索の手配を……」

「それはできん。 そこからは、毛利領だ。
 忍者でも使わない限り、まともに探す事など無理な話だ。」

「確かにアイツら、獰猛みてぇだしなぁ~。」

「しかし……黒姫は、本当にあのような男が好みだったのか……
 俺達がいくら迫っても、靡かないワケだ。」

「そんな簡単な事で、黒姫が付いて行く筈が無い。
 あの異人には、俺達には"無い物"を持っていたとしか考えられん。」

「はぁッ? なんなんだよそりゃ~?」

「兄さん、あの異人より、俺達が劣っていた事でもあると言うのかい……?」

「……あぁ。 "あの話"が本当だったのなら……な。」

「あの話って……あの魔人とか魔王を倒した事があるとか言う、"ホラ話"がかッ?」

「馬鹿な……」

「そうとしか考えられん。」


朝起きて四兄弟がする事は、黒姫との朝の挨拶。

その黒姫が何処にも見当たらないので、彼らは城中を探し回った。

そんな中で……判ったのは、二人の異人も姿を消していたと言う事。

そうなれば答えは一つで、彼らはランスの存在を甘く見ていたと言う事を痛感した。

即ち焦っており、流石のヨシヒサも煙草を逆に咥えるミスを犯した。


「とにかくヨォ、これからどうすんだよ、兄貴ッ?」

「一刻も早く、黒姫を異人から取り戻さなくては……」

「……(だが……取り戻したところで、どうなる? となれば……)」

「兄貴!!」

「……兄さん。」

「これから島津は……JAPANの統一に移る。」


……魔人・魔王を倒した事があり、リーザスとゼスを救った事もあるらしいランス。

その話が本当で、それが理由で黒姫がランスに付いて行ったのであれば、
いくら優れてモテている島津四兄弟でも勝負にならない。

かといって、無理矢理連れ戻しても、"無理矢理"と言う言葉は彼らが女性を口説くのに、
"邪道"と考えている手段であり、彼らは実力で黒姫を振り向かせなくてはならず、
今までも"黒姫は俺の嫁だ!"という理由で競争し、常に努力してきたのだ。

よって黒姫に近付く為には"JAPAN程度"は自分達で統一できなくてはならぬと考え、
すぐさま他の国全てに"宣戦布告"をしてしまったのである!

そして、統一の暁には大陸に進出し、ランスの話に負けない程の実績を出してみせる。

普通なら気の遠い話なのだが、彼らは黒姫の為であれば、
世界制覇でも本気で成し遂げようとする迄の覚悟があるのだ。

この騒動により、元々仲の良かった四兄弟だが……更に結束を固める事となる。


「(……ヨシヒサ・カズヒサ・トシヒサ・イエヒサ。
 貴方達は私が居ない方が幸せになれるの。 だから、私の事は忘れて……)」


――――魔人ザビエル、この存在の抹消だけが、黒姫の願いだとも知らずに。


……


…………


「ふぃ~、結構歩いたなぁ。 シィル、此処は何処だ?」

「え~っと……地図によると、"戦艦長門"に入ったところですね。」

「ひとまず、此処までくれば、いくらあの子たちでも追っては来ないでしょう。」

「う~む、本当なら島津領で50人は犯るつもりだったんだが、予定が狂っちまったな。」

「え……そ、そんなつもりだったんですかぁ?」

「申し訳ありません……折角の旅行を、台無しにしてしまって……」


島津の城を離れて暫く経ち、ランス・シィル・黒姫は毛利領に辿り着いた。

思ったより追手は早く諦めたようで拍子抜けしてしまったが、相手はあの四兄弟。

警戒心を消すつもりはないが、とりあえず三人は一安心していた。

それはさておき……現在の黒姫は、今までの黒い着物姿ではない。

頭の鬼のような髪飾りはそのままだが、額のメイクを落とし、
軽装甲の黒い武者鎧を着用しており、手頃に脇差を腰に刺している。

こうならば、四兄弟の手の者であっても、一目では黒姫と判りにくく、
抜け道で保管してあった鎧を着用したその姿に、ランスも一瞬別人だと思ってしまった。

また……決して見掛けだけでなく、黒姫は魔人の血を引く相応の力を持っている。


「がははは、その分これからも、カラダで返してくれりゃあ問題無いぜ。(嘘だし)」

「ハァ……魔人ザビエルをやっつける旅ですかぁ~、何だか大変そうですね。」

「とりあえず、まだ瓢箪は割れておらず、復活の前兆は感じません。
 その前に出来る限りの事を致しましょう。 勿論、私も戦わせて頂きます。」

「そうだなぁ~、いくら英雄の俺様とは言え、魔人相手だともう少し"仲間"が必要だ。
 そう言う訳で、噂の毛利3姉妹とセックス……いや、仲間にでもしてみるかな。」

「ほ、本気ですかぁ? 毛利家って凄く乱暴な人達ばかりって聞きましたけど~。」

「私は……ランスさんの言葉に従わせて貰います。」

「おぉ、そうかそうか、黒姫ちゃん。 だったら、これから宿でセックスしよう。
 シィルはマッサージな。 今日は一日中歩きっぱなしだったから疲れた。」

「くすん、私も荷物を殆ど持ってるから、足痛いです……」

「あっ……ら、ランスさん……そう引っ張らずとも……」

「がはははははははっ!!」


……こうして、ランスのJAPANでの旅が始まった。

奴隷のシィルと、魔人の血を引く黒姫と共に、彼はJAPANを歩きはじめる。

間も無く激しい戦いが繰り広げられようとしている、戦国の時代の海を……


――――続く――――


ランスLv40/99 シィルLv30/80 黒姫Lv25/99

ヨシヒサLv40/49 カズヒサLv40/49 トシヒサLv35/49
イエヒサLv20/49 アギレダLv30/37


●あとがき●
お世話になっております、Shinjiです。
現在=鬼畜の剣=の連載をさせて頂いておりますが、ネタを投下してみました。
今作は天満橋から最も近い島津スタート?ですが、私なりに戦国ランスの客観的意見を、
そこらへんのサイトで調べたところ、3点程要点がチョイスでき……

①上杉謙信萌え。
②美樹と健太郎ウザい。
③島津4兄弟氏ね。
(誤解の無いように言っておきますが、私の意見ではなく、
良く聞く声を3点挙げているだけで、著者は謙信属性と言うワケでもなく、
魔王カップルや島津4兄弟が嫌いと言うワケでもありません。)

……だと分析でき、①と②はSSとしてこれから増えそうなので、③を考えてみました。
=鬼畜の剣=の区切りが付くまで次回の投稿はしないつもりですが、
仕事の状況等次第では精力を尽くして、同時連載をさせて頂く事も考えております。


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