(本来なら、本日がシン・エヴァの公開日でしたね。(つд;*))
「ちょっと面白い所があるんだ。行ってみないか?」
いきなり加持さんがそう言い出したのは、浅間山火口に居た第八使徒を斃した直後のことだった。
そうして重VTOLまで使って連れてこられたのが、香川県にあるシン・ヤシマ水族館だったのにはビックリ。
「面白いだろう? ここは山の上にあるお陰でセカンド・インパクトの被害から逃れた数少ない水族館なんだ」
君たちの世代だと珍しいだろうと思ってさ。って言った加持さんは「ちょっと野暮用があるんで、後は二人で楽しんで居てくれ」って、あっという間に何処かに。
残された2人(とワタシ)は暫く顔を見合わせてたんだけど、「せっかく加持先輩もああ言ってることだし、回って見よっか」の一言で入館することになった。
セカンド・インパクトで失われたモノは多い。
こうした水族館なんて設備もそうだけど、色んな動植物もそうだと聞かされていた。
だから、シンジもアスカもワタシも、展示された魚類やマナティやイルカに夢中になる。
なかでもアスカは、サメとか云う軟骨魚類の水槽に釘付けだった。
「なんだか、キバがずらりで恐いね」
「バッカねぇ。捕食者のあるべき姿を体現してんじゃない。この洗練された進化が解からないの?」
アスカの声は低く抑えられてる。いつもなら盛大な罵声が飛んで来るところだけど、そうじゃない。
それだけ集中してんだろう。
…
床に根でも生えたかのようなアスカの様子に、シンジはタメ息をひとつ。
踵をかえして、売店コーナーに。
『ナニ見てんの?』
『いや、綾波が第三新東京市でお留守番だから、お土産でも。と思ってさ』
ふーん。
見てたらペンギンとサメとクリオネのキーホルダーを手にとって会計へ。
『ペンギンはレイに。って判るケド、サメとクリオネはなんで?』
シンジが財布を取り落としそうになった。
『……その……アスカがサメを気に入ってたみたいだし、せっかくだから記念にと思って……』
あら、シンジにしては気が利くじゃない。ワタシの教育の賜物かしら?
『じゃあクリオネは?』
会計を無事に終えたシンジが、今度は受け取った紙袋を落としそうになる。
『……一応、僕が使うんだけど、……』
なんだか歯切れが悪い。
『……アンジェのイメージにぴったりだと思って……』
……/////
思わず、存在しない両手を頬に宛がおうとした。
だって、頬っぺたが熱い……って、シンジの頬っぺたが赫くなってるらしかった。
『そう、当然ね』って、普段のワタシなら応えただろうけど、なぜか言葉が出てこない。
シンジがワタシのことをこんな可憐な生き物のように思ってくれてると知って、無いはずの心臓がドキドキ言ってる。
『……迷惑だったかな?』
窺うような視線は、手元の紙袋たちに。
『ううん、そんなことない。ありがとうシンジ』
よかった。と胸を撫で下ろすシンジに、ココロの中でワタシも同調してた。
素直に感謝を伝えられて、ホッとしてたから……
ホントにありがとう。シンジ……
でも、バッカルコーンのことは教えない方がいいわよね?
おわり
新屋島水族館には行ったことがあります。山の頂上にある、こじんまりとした水族館でした。
シン・ヤシマとしたのは、シン・エヴァンゲリオンとヤシマ作戦と、もうひとつ理由が……
あと、Twitter始めました。(@dragonfly_lynce)短編などもUPしてるのでよかったら覗いて下さい。(最近はBLモノが多いですが…( ̄▽ ̄;))