体に不似合いなほど大きな和傘をさし、首をかしげおしゃまに構えた少女。自分も傘をさしてみたいのでしょう、姉の横でねだるように一心にじゃれつく妹が実に愛らしく描かれています。こちらになげられた少女の視線は、無邪気なようでいて大人びた表情を合わせ持ち、少女の中にうつる大人の女性の姿に、見る側はふと緊張を覚えます。
日本近代洋画の偉才とも呼ばれた画家・青木繁は、1889年、福岡県久留米市に生まれました。父の反対を押し切って東京美術学校に入学した青木は、在学中の1903年に白馬会賞を受賞し、その名は早くも画壇に知られるようになります。翌年には代表作となる「海の幸」を発表し、さらなる注目をあつめました。しかし、父の死後、家族と絶縁状態になってしまい、放浪の旅にでるのです。その足は、中学時代の美術教師、洋画家・森三美のもとへ向かい、しばらくそこで集中した制作をしています。この作品は、その頃に描かれたもので、モデルとなっているのは森三美の愛娘です。
その後、青木は肺患をわずらい、1911年、28歳でこの世を去りました。
●●輝ける女性像展●●
2010年3月26日(金)まで開催中。
お見逃しなく!(SR)