記録ずくめの人だ。13歳の時、人気ミュージカル「ピーターパン」の5代目主演に最年少で抜擢(ばってき)され、平成10年から5年間で約150公演をこなし、10代の主演女優としては日本のミュージカル史上最高記録を樹立。18歳で、ミュージカル「レ・ミゼラブル」の主要キャスト、エポニーヌ役を最年少で射止めた。
そして今年は21歳で、ミュージカル「マリー・アントワネット」などの功績を評価され、大衆演劇の舞台で優れた業績を示した芸術家に贈られる菊田一夫演劇賞を、やはり最年少で受賞した。
「いまは22歳になりましたが、“記録”については意識しないようにしています。バネになると同時に、プレッシャーにもなるので。ただ、賞に負けない女優になりたいと思っています」
母親は元宝塚女優。その影響もあって舞台はよく見ていたものの、女優になりたいとは思わなかった。ところが、小学3年生のときに観劇したミュージカル「アニー」にショックを受けた。孤児院で育った少女アニーの物語で、子役の登竜門的な作品である。
「自分と同じような年齢の子が歌ったり踊ったりしている姿が衝撃的でした。自分は何もできないじゃないか!と」
さっそくダンス教室でタップやジャズダンス、バレエなどを習い始め、自らの意思で「ピーターパン」のオーディションに応募。見事、5代目主演に選ばれた。演出家から「学校があるからといって甘えてはいけない」と言われ、「仕事とプライベートの差をはっきりつけることがプロだと気づいた」というから大したものだ。
その後、「レミゼ」に受かったことで、人生の方向が決まった。歌唱力、表現力ともに、常に安定感のある演技で観客を魅了し、今では22歳にして日本の演劇界に欠かせない存在の1人だ。
18日から、「ウーマン・イン・ホワイト」に主演する。「オペラ座の怪人」や「キャッツ」で知られる作曲家、アンドリュー・ロイド=ウェバーの最新作。謎の白いドレスの女、画家と異父姉妹の三角関係…。「ストーリーを言うとネタばれになる」という話題のミステリーミュージカルだ。
彼女が演じるのは、報われない恋と試練に苦悶(くもん)する姉マリアン。「すごく切ないです。好きという思いを隠し、にっこり笑っていつでも強く生きている。女性のハートにグサッと突き刺さるものがあるのでは。ミステリーだけに、音楽は身に刺さるように冷たい。でもその中に美しいものが見えるメロディーが満載です」