農水省官僚(国民からの行政の受任者)の犯罪備忘録

文中の茶色文字は筆者が書き加えた部分であることは前節の場合と同じであり、やはり原文と区別して読まれたい。



農水省編目次

  1. 「緑機構」前身の元理事自殺 マンション飛び降り 地検、連日聴取
    (出典:2007年5月29日(火)15:44)
  2. 「緑資源談合 「指南役」元理事宅を捜索 業界団体でも幹部
    (出典:朝日新聞朝刊2007年5月27日)
  3. 「入札金額を指示「頑張って」 「天の声」工事別に2ルート
    (出典:朝日新聞朝刊2007年5月26日)
  4. 「緑資源機構 談合 生え抜きが伝承 天下りに触らせず
    (出典:朝日新聞朝刊2007年5月25日)
  5. 「緑資源機構 独禁法違反容疑 理事ら6人逮捕 官製談合10年前から
    (出典:朝日新聞朝刊2007年5月25日)
  6. 林道談合 緑資源機構理事ら逮捕へ 東京地検、独禁法違反の疑い
    (出典:2007年5月24日(木)15:58)
  7. 緑資源機構 落札予定表 業者へ 談合告発決め手に
    (出典:朝日新聞朝刊2007年5月24日)
  8. 緑資源談合 天下りOBも立件へ 東京地検 きょう本格捜査
    (出典:朝日新聞朝刊2007年5月24日)
  9. 緑資源機構 下請けさせ利益配分 幹部「前年並み」指示
    (出典:朝日新聞朝刊2007年5月22日)
  10. 林道談合隠し理事指示 「落札率下げ93%に」 公取、4法人告発へ
    (出典:朝日新聞朝刊2007年5月21日)
  11. 林道談合 緑資源機構が丸投げ指示 立件へ捜査態勢強化
    (出典:2007年5月20日(日)03:45)
  12. 林道談合 林野庁発注分も調査 公取、天下りに関心
    (出典:2007年4月2日朝日新聞朝刊)
  13. 林道談合 農林土木の闇に迫れ
    (出典:社説、2007年4月20日朝日新聞朝刊)
  14. 林道談合 官主導、入札額示す 疑い避ける日的か
    (出典:2007年4月20日朝日新聞朝刊)
  15. 農水省元幹部ら起訴−補助金増、腐敗の温床に
    (出典:2000年4月15日日本経済新聞朝刊)
  16. キャリア職員 地方で癒着の危険性
    (出典:2000年3月28日日本経済新聞朝刊)
  17. 農水次官が「遺憾」
    (出典:2000年3月28日日本経済新聞朝刊)
  18. 農水省元課長補佐を逮捕 特産品PR事業 香川の農協に便宜
    (出典:2000年3月3日日本経済新聞朝刊)
  19. 補助金介し農協と癒着
    (出典:2000年3月3日日本経済新聞朝刊)
  20. 農業公共事業見直せ 北海道農民連盟会長 信田邦雄
    (出典:1997年3月31日日本経済新聞朝刊)
  21. 農水省の天下り先企業 受注額53%占める
    (出典:1997年2月21日日本経済新聞朝刊)
  22. 集落排水設計の集中是正へ通達
    (出典:1997年2月21日日本経済新聞朝刊)


[「緑機構」前身の元理事自殺 マンション飛び降り 地検、連日聴取]
(出典:2007年5月29日(火)15:44)

   29日午前5時15分ごろ、横浜市青葉区青葉台のマンション駐車場で、独禁法違反容疑で担当理事らが東京地検特捜部に逮捕された独立行政法人「緑資源機構」(川崎市)の前身、旧森林開発公団の山崎進一元理事(76)が血を流して死亡しているのが見つかった。神奈川県警青葉署は現場の状況などから自殺とみて調べている。

 緑資源機構の官製談合事件をめぐって、東京地検特捜部は26日、山崎氏の自宅を家宅捜索。26日から事情聴取を連日受けており、29日午後も聴取を受ける予定だった。  同署によると、山崎氏はこのマンションに在住。パジャマ姿で、頭から出血しており、救急隊が駆けつけたときには、既に死亡していた。

 調べでは、遺書は見つかっていないが、6階の階段に靴がそろえてあったほか、手すり部分に乗り越えたような跡があった。山崎氏は妻と2人暮らし。この日は午前4時半ごろ起床し、松岡利勝前農水相の自殺を伝える新聞記事について夫婦で話をしたが、変わった様子はなかったという。

 山崎氏は、独禁法違反容疑で逮捕された緑資源機構前理事の高木宗男容疑者(59)の元上司で、退職後は、同機構から公共事業を受注する全国の業者でつくる任意団体「特別森林地域協議会」(特森協、解散)副会長を務めていた。  特森協の政治団体「特森懇話会」は、28日に自殺した松岡前農水相ら林野族の国会議員の資金管理団体に平成14〜17年に計1600万円を献金している。

 山崎氏は、産経新聞の取材に対し「松岡さんだけでなく、林野行政に詳しい人に献金していた。私は事件とは関係ない」と話していた。

[緑資源談合 「指南役」元理事宅を捜索 業界団体でも幹部]
(出典:朝日新聞朝刊2007年5月27日)

 独立行政法人「緑資源機構」発注の林道整備の調査業務をめぐる入札談合事件で、東京地検特捜部は26日、事件の関連先として、官製談合の枠組みを最初に作ったとされる元理事の横浜市の自宅、松江市の建設会社などを独占禁止法違反(不当な取引制限)容疑で捜索した。元理事や建設会社元社長は、林野族議員らに組織的に献金していた受注業者らの業界団体「特別森林地域協議会(特森協)」(06年11月に解散)の幹部も務めていた。

 捜索を受けた元理事は、機構の前身である旧森林開発公団の生え抜きで、業務部長などを経て89年ごろに理事に就任した。同年ごろから、林道調査業務などの契約で発注者側が業者の割り振りを決める仕組みが始まったとされ、この元理事の担当だったという。

 独禁法違反容疑で逮捕された機構理事の高木宗男容疑者(59)は周囲に、「機構主導で受注業者を割り振る仕組みは元理事が始め、その後自分たちに引き継がれた。現在の業者の割り振りについても元理事の影響力があった」などと話し、元理事を「談合指南役」としていたという。

 この元理事は退職後、特森協の理事も務め、03年8月時点で特森協の相談役に就いていた。
 特森協は機構発注工事の受注高に応じて業者から年会費を集めていたほか、同じ所在地に同一人物が会長を務める政治団体「特森懇話会」を通じて、林野族国会議員の資金管理団体への献金やパーティー券購入などで、02〜05年の4年間で計1600万円を支出していた。協議会と懇話会は、公正取引委員会が緑資源機構などに立ち入り調査に入つた昨年10月以降に、突然解散した。
 一方、捜索対象の松江市の建設会社は元社長が特森協の副会長を務めていた。
 元理事はこれまでの朝日新聞の取材に対し「特森協の実務には一切かかわっていない」と話していた。松江市の建設会社元社長は、特森協の解散理由について、「時代の趨勢に合わなくなったためだ」などと話していた。

自民岐阜会長「松岡氏辞任を」

 自民党岐阜県連の金子一義会長は26日、県連総務会でのあいさつで、議員会館の光熱水費問題や緑資源機構の官製談合事件で責任を追及されている松岡農水相について、「今国会終了後に自ら辞任するべきだ」と述べた。
 金子氏は、自身が委員長を務める衆院予算委員会で松岡氏の問題がしばしば取り上げられたと指摘し、「捜査が熊本県の松岡大臣の地元に及んでいる状況を受け、内閣改造や閣僚更迭の前に自ら身を処するのが政治家として大事だ」と語った。


[入札金額を指示「頑張って」 「天の声」工事別に2ルート]
(出典:朝日新聞朝刊2007年5月26日)

 独立行政法人「緑資源機構」発注の総額270億円に上る農地・森林整備事業をめぐり、事業が実施された熊本県内の受注業者らが朝日新聞の取材に応じ、工事ごとの落札指名ルートなど、機構側が主導する談合システムを詳細に証言した。業者から有力政治家と太いパイプを持つとみなされて影響力を持つ地元仕切り役も調整に関与していたという。巨額の公共事業が生命線の阿蘇山の山間部で、業者が官側の「天の声」に群がる実態が浮かび上がった。

緑資源機構の農地・森林事業

 「このたびは頑張ってもらえないでしょうか」
 緑資源機構九州整備局(福岡市)が発注した農用地整備工事の入札に参加したある業者は、同整備局の出先機関である阿蘇小国郷建設事務所(熊本県小国町)に出向いた際、事務所幹部からそう告げられた。これが、落札予定業者に決まったとの合図だった。
 幹部はその後、目の前で電話をかけた。相手先は業者側の仕切り役とされる人物で、落札予定業者名を教えるのが決まりになっていたという。
 電話を終えた幹部は、先ほど合図を送ったばかりの業者に見積額を尋ね、「ちょっと高いですねえ」などと言葉を交わす。やりとりの末、幹部は具体的な入札金額を指示した。事業所を出た業者は、他の入札参加者に自分が「本命」だったことと、入札価格がいくらで決着したかなどを伝えた。
 談合が成立した経緯を業者らが証言したこの工事は、同機構が国の補助を受け、森林や農地が混在する地域を整備する「特定中山間保全整備事業」の一部だ。実施場所の小国町と南小国町の区域では03〜09年度で総事業費計154億円に上る。
 県内業者は、この事業の持つ意昧を「公共事業への依存度が高い地元で不可欠なものだ」と話す。総面積の7割以上が山林の両町の人口は計約1万3千人。様々な公共事業が先細る中で、林道工事などは利益を期待できるという。
 受注業者らはさらに、同機構内で「天の声」の伝達ルートが枝分かれしている事情を明かした。
 伝達ルートは、機構発注の林道建設工事が宮崎地方建設部(宮崎市)、農用地、造林整備工事が阿蘇小国郷建設事業所という2ルート。それぞれの幹部から、落札予定業者の決定を伝えられるルールになっているという。
 東京地検特捜部は25日、機構の出先機関であるこの2カ所や九州整備局などを独占禁止法違反(不当な取引制限)容疑で捜索している。
 一方、農用地、造林整備工事の落札予定業者については、機構側の意向を地元の仕切り役業者が各業者に伝えることもあったという。  この仕切り役について、複数の受注業者は「有力政治家の支援者として有名。その政治家と太いパイプを持っているという評判が行き渡り、絶大な影響力を持っている」などと話している。このため、仕切り役が機構側が主導する受注調整に関与できる立場になったと業者側はみている。
 県内のある建設業者はこう言い切った。「機構側が発注する事業のほとんどで談合がある」

キーワード 中山間保全整備事業

 森林や農地が混在して森林の適切な管理が行われていなかったり、耕作放棄地が増加したりしている地域で、森林整備や農用地整備、農林業用道路建設などを一体的に行い、農林業の振興を図る事業。緑資源機構は99年度からこの事業を開始。現在、熊本県の「阿蘇小国郷区域」(5822f)と島根県江津市などの「邑智(おおち)西部区域」(3080f、総事業費120億円)の2事業が進められている。農用地や農林道の整備には55%、森林の整備には全額が国から補助されている。

[緑資源機構 談合 生え抜きが伝承 天下りに触らせず]
(出典:朝日新聞朝刊2007年5月25日)

 緑資源機構の官製談合で「司令塔」を務め、独占禁止法違反容疑で逮捕された同機構理事・高木宗男(59)、林道企画課長.下沖常男(56)の両容疑者は、同機構の生え抜き職員だ。談合差配は生え抜き同士で引き継ぎ、機構内の林野庁OBにはタッチさせないという不文律があったという。「汚れ仕事」は生え抜きに任せ、OBらが天下りの特権を享受する構図が出来上がっていた。

 「(林野庁OBに)そういうことはさせられない」。高木理事は、生え抜きだけが談合を担ってきたことについてそう話していたという。その話を聞いた関係者は「談合が『汚い仕事』という認識識だった」と受け止めた。
 高木理事は、同機構発注の林道整備の測量事業がまだ随意契約だった96年ごろ、生え抜きの先輩職員の仕事を手伝いながら、談合差配の引き継ぎを受け、ノウハウを学んだという。
 97年に林道企画課長に就任。契約が指名競争入札に変わったが、年度ごとに受注予定業者を割り振るシステムを維持した。自分が森林業務部長に昇進しても、課長が林野庁OBだった場合には、発注事業の割り振り表に自らペンを入れ続けた。
 05年にその仕事を下沖課長に引き継いだが、その後も相談を受ける形で、割り振りの最終承認を与える役割を担っていたという。
 高木理事は談合疑惑が表面化した後、下沖課長らを「巻き込んでしまって悪い」と周囲に漏らしていた。しかし、随意契約の延長として、以前から業務を取っていたところにそのまま取らせる感覚で談合を差配し、不正行為だという認識には乏しかったという。
 同じく逮捕された公益法人「森公弘済会」部長の金子賢治容疑者(64)と、コンサルタント会社「片平エンジニアリング」技師長の杉本嵩佑容疑者(62)も同機構OBだ。金子部長は機構を退職後、入札担当として再就職先からスカウトされたという。ある機構元職員は「入札を有利にするため、高木さんと近い関係を買われたのでは」と話す。杉本技師長は林道畑を歩んだ高木理事の元「先輩」。社内では「人柄がよく、機構からのクレーム対応で頼りになる」と評価されていたという。

 これに対し、同機構の林野庁天下り組は、生え抜きを中心とした談合について「知らなかった」と口をそろえる。ある元理事は「発注に際して相談もない。我々は完全にお客さん」と、無関係を強調した。
 こうした発言について、同機構生え抜きのOBは「何も知らなかったはずがない。ひきょうだ」。別の機構関係者は「彼らがちゃんと仕事をしていれば見抜けたんでしょうが、そもそもまじめに仕事をするために天下ったわけじゃないのでしょう」と皮肉った。

更なる不正、解明に期待

 緑資源機構の発注事業をめぐっては、独占禁止法違反容疑の告発対象となった林道整備の調査業務の談合にとどまらず、様々な疑惑が水面下に隠れているとの指摘が出ている。
 複数の受注業者らによると、同機構発注の林道やのり面工事でも受注調整があったとしている。これらの工事は、年間発注額が10億円に満たない調査業務と比べて発注規模が大きく、受注にうまみがあるという。
 また、同機構の事業には北海道から九州まで広がりがあり、地元政治家の口利きなどが受注に影響を及ぼしているとの証言も出ている。
 さらに公正取引委員会は調査を進める中で、同機構を天下りの受け皿としている林野庁の発注事業の受注実績や、同庁OBの再就職実態についても、受注業者側に報告を求めていた。
 同機構が長年にわたり続けてきた官製談合は、発注者側の裁量で落札予定業者が決まるシステムだ。このため、受注業者との癒着が生まれやすく、談合にとどまらず、汚職などさまざまな不正に結びつく可能性がある。
 検察当局は、全国から応援検事を招集するなど捜査体制を拡充して強制捜査に着手した。告発事件だけにとどまらず、天下り利権を背景とした様々な不正の解明が期待される。(佐々木隆広)

「よもや私どもの世界でそんな語が…」

 元林野庁長官の理事長  緑資源機構の前田直登理事長は24日、高木理事らの逮捕を受けて農水省で会見し、「国民の皆様の期待と信頼を裏切るもので、深くおわび申し上げます」と謝罪した。同日付で高木理事を解職し、下沖常男林道企画課長を総務部付とした。

 前田理事長は元林野庁長官で昨年8月から現職。官製談合容疑について「よもや私どもの世界でそんな話があるとは全く考えていなかった」と述べた。自身の給与の20%を3カ月、自主返納するとしたが、「国民の信頼を回復するのが私に課せられた責任」として辞任しない考えを示した。松岡農水相は、林野庁OBが逮捕されたことを受け、閣僚としての給与の3ヵ月分を自主返納すると発表した。

 同機構の本部が入るJR川崎駅近くのビルには同日午後3時40分ごろ、東京地検特捜部の係官約30人が到着。窓にはブラインドが下ろされ、捜索は25日午前1時過ぎまで続いた。

「バンク」の効果、疑問

 天下りの問題性を追及している特殊法人労連前事務局長・堤和馬さんの話

 官製談合と天下りが密接不可分であることがまた明らかになった。今回の事件の特殊性は・受注側に公益法人が入っていること。実態は公益に反し、業界の身内でガチガチに固めた官製談合を支えていたわけで、隠れみのの役割を果たし、天下りの受け皿にもなっていた。今国会で審議中の「天下りバンク」をつくる法案は非営利法人への再就職も対象にしているが、この法律で官製談合を断ち切れるのかが一向に見えない。そもそも天下り自体が官製談合の温床なのに、天下りを認める法律はおかしい。

一般競争、全面導入を

 元公正取引委員会首席審判官の鈴木満・桐蔭横浜大学法科大学院教授の話

 最近は官庁の天下り先がだいぶ減ってきており、外郭団体は最後のとりでのようなもの。官製談合によって利益をもたらすことで、天下り先を確保し、給料をもらうという利権の仕組みができている。民間企業で談合を話し合うより、官製談合の方がより強くまとまり、表ざたになりにくく罪悪感も薄い。だが、談合は完全な犯罪だ。摘発はそれを業界に再認識させるという側面もあるだろう。入札に役所の裁量が残っていると、官製談合はやりやすい。天下り規制より、全面的に一般競争入札を導入,するなどの改革が必要だ。

[緑資源機構 独禁法違反容疑 理事ら6人逮捕 官製談合10年前から]
(出典:朝日新聞朝刊2007年5月25日)

 農林水産省所管の独立行政法人「緑資源機構」が発注する林道整備の調査業務の入札談合事件で、機構主導の官製談合が98年ごろから続けられていたことが、東京地検特捜部の調べでわかった。特捜部は24日、公正取引委員会の告発を受け、同機構森林業務部担当理事の高木宗男(59)、林道企画課長の下沖常男(56)の2容疑者と4法人の営業担当者4人の計6人を独占禁止法違反(不当な取引制限)容疑で逮捕し、川崎市の機構本部を捜索した。

 公取委に告発された受注4法人側で逮捕されたのは、財団法人「林業土木コンサルタンツ」元環境部長の橋岡伸守(63)▽コンサルタント会社「フォレステック」元取締役技術本部長の谷本功雄(64)▽財団法人「森公弘済会」業務第2部長の金子賢治(64)▽コンサル会社「片平エンジニアリング」企画営業部技師長の杉本嵩佑(62)の4容疑者。

 特捜部の調べでは、高木理事は、林道企画課長だった98年ごろから、年度ごとに落札予定業者を割り振る官製談合を主導。下沖課長も部下として関与していた。機構の発注形式が随意契約から指名競争入札になった直後から、この割り振りを行っていたという。

 告発対象となった05、06年度の同機構本部と8地方建設部が発注した林道整備事業に伴う測量や環境調査の入札では、下沖課長が、高木理事と調整したうえで割り振りを決定。受注法人の4容疑者はそれに従い、受注調整していた疑いが持たれている。4法人は各年度で発注額全体の約7割を受注していたという。

 特捜部は、4法人が同機構OBの天下りを積極的に受け入れていたことが、高い受注額を維持できた背景とみている。
 機構側は年度当初、機構内部で作成した落札予定業者の割り振り表を4法人の営業担当者に限って渡すなどの便宜を図っていたという。割り振り表には予定価格に近い金額が記載されており、各法人はこの割り振り表をもとに、入札前に機構の地方建設部の担当者らとの聞で予定価格の金額を確定させていたという。
 逮捕された6人は、公取委のこれまでの調べに対し、談合への関与を大筋で認めているという。

キーワード 緑資源機構

 旧森林開発公団が旧農用地整備公団の事業を統合してできた緑資源公団が前身。小泉内閣の特殊法人改革で03年10月に独立行政法人になった。前田直登・元林野庁長官が現理事長で、農水省や林野庁出身者が多数、理事などに就任。林道整備のほか、水源林の造成、区画整理や土地改良、農業用道路や用排水施設整備などを行う。

[林道談合 緑資源機構理事ら逮捕へ 東京地検、独禁法違反の疑い]
(出典:2007年5月24日(木)15:58)

 農林水産省所管の独立行政法人「緑資源機構」(川崎市)発注の林道整備調査業務をめぐる官製談合事件で、公正取引委員会は24日午前、独占禁止法違反(不当な取引制限)罪で、林野庁所管の財団法人「林業土木コンサルタンツ」(東京都)など4法人を検事総長に告発した。東京地検特捜部は、独禁法違反容疑で同機構の森林業務担当理事(59)や機構本部林道企画課長と、4法人の担当者4人の取り調べを始めており、容疑が固まり次第、逮捕する方針。 ほかに告発されたのは財団法人「森公弘済会」と、民間企業の「フォレステック」、「片平エンジニアリング」(いずれも東京都)の2社。

 こうした法人や企業からは、松岡利勝農水相の資金管理団体などに政治献金が行われていたことが判明している。

 公取委の調べでは、4法人は機構理事らと共謀、機構が平成17〜18年度に指名競争入札で発注した林道整備の測量・調査業務について、事前に落札予定業者を決めるなど談合を繰り返したとされる。 談合は理事ら機構側が主導。理事の指示で機構本部の林道企画課長が年度末に、翌年度の発注予定業務の受注予定業者をあらかじめ決定し、業務を各法人に割り振った「配分表」を作成、理事に了承を得ていた。 さらに、全国8地方建設部の林道課長らが集まった年度初めの全国会議で、落札予定業者の最終確認をしていたという。

 4法人がこの2年間に受注した額は、機構の発注額約14億5000万円(204件)のうち約7割に上る約9億8000万円(137件)。公取委は4法人について、受注額の多さに加え、機構側から配分表を受け取るなど談合に深く関与していたと判断し、告発対象にしたとみられる。  4法人は林野庁や同機構から多数の天下りを受け入れており、公取委は機構が天下り受け入れの見返りに受注を集中させていた疑いもあるとみている。

 ≪遺憾の極み≫  松岡利勝農林水産大臣の話 「このような事態になったことは所管の立場として遺憾の極みと強く思っている。(農水省としての再発防止策などについては)今は告発を受けたことを重大に受け止め、事態の推移を見守りたい」

◇用語解説】緑資源機構  森林開発公団と農地整備公団が統合した緑資源公団を前身に、農林業振興のための独立行政法人として平成15年設立。公団時代から林野庁長官OBが理事長を務める。全国6整備局が造林・農地整備を、8地方建設部が林道整備を担当する。総延長2053キロの幹線林道が計画され、18年3月末時点で1288キロが完成。事業費の3分の2は国の補助金で、残りが都道府県負担。19年度の林道関連予算は124億円。公正取引委員会の立ち入り検査を受け、19年度からは従来の随意契約や指名競争入札ではなく、原則として一般競争入札に切り替えた。

◇【用語解説】改正独占禁止法  談合事件の刑事告発が極めて少なかった公正取引委員会の権限強化などを目的に改正され、昨年1月に施行された。談合やカルテルに対する課徴金引き上げ▽違反行為を自首した事業者への課徴金減免▽公取委に強制調査権を付与−の3点。これまで東京高検だけが可能だった独禁法事件の捜査(起訴)が全国の地検にも認められ、大阪では昨春、屎尿(しにょう)・汚泥処理施設をめぐる談合事件が摘発された。現在、課徴金の対象範囲拡大などについて、新たな改正論議が行われている。

[緑資源機構 落札予定表 業者へ 談合告発決め手に]
(出典:朝日新聞朝刊2007年5月24日)

 農林水産省所管の独立行政法人「緑資源機構」(川崎市)の入札談合事件で、機構側が年度ごとに落札予定業者の割り振り表を作成し、受注業者にその一部を渡していたことが、関係者の話でわかった。受注上位の公益法人幹部はこの表を保管し、入札前に入札価格を同業者に連絡したメモも残していた。公正取引委員会は悪質な官製談合を裏づけるものとして、こうした複数の物証を押収した模様だ。独占禁止法違反(不当な取引制限)容疑での刑事告発に踏み切る決め手になったとみられている。

「ここではなんですから」

 ある受注会社の担当幹部は05年春ごろ、機構本部の林道企画課を訪ねた際、談合の割り振り役だった同課長からこう声をかけられたという。
 課長は幹部を別室に招き、2人きりになった時、1枚の紙を渡した。そこには、年度内にその会社が落札できる調査業務の一覧が記されていたという。
 機構関係者らによると、機構は、8地方建設部の林道課長らが毎年4月に林道整備事業の発注計画を話し合う会議の際に割り振り表を作成していた。本部の林道企画課長が中心となり、会議の前後や合間に相談。地方建設部が用意した発注計画案などをもとに、調査業務ごとの落札予定業者を最終的に決めていたという。

 割り振り表には、年度内に発注予定の業務名に加え、入札の指名予定業者名に白いマル、落札予定業者名に黒いマルをつけていたという。受注業者の一部には、その業者の落札予定分だけを抜き出した表を渡していた。
 機構関係者は「あまりに露骨なので、数年前からこうした表の作成はやめた」と話す。だが、その後も、一部の機構幹部らは同種の表を作り続けていたという。

 一方、受注上位の財団法人「森公弘済会」の談合担当幹部は、機構側から渡された表を保管していたという。また、この幹部は、機構側から入札での「本命」になったと伝えられた後、入札に参加予定の同業者に入札する価格を事前に電話などで連絡。その日付や内容もメモに残していたという。公取委はこうした資料を押収した模様だ。

 入札に参加していたある業者は「事情聴取の中で、その幹部が残したメモや資料が押収されていることを知った。これでは申し開きのしようがない」と明かした。

[緑資源談合 天下りOBも立件へ 東京地検 きょう本格捜査]
(出典:朝日新聞朝刊2007年5月24日)

 農林水産省所管の独立行政法人「緑資源機構」(川崎市)が発注した林道整傭の調査業務の入札談合事件で、受注上位の4法人のうち3法人で、同機構OBと林野庁OBが談合担当を務めていたことが関係者の話でわかった。談合を主導した同機構理事(59)らと天下りOBの身内同士で、不正行為を繰り返していた。理事や法人担当者は公正取引委員会の調べに談合への関与を大筋で認めている。

 公取委は24日午前に検察当局と告発問題協議会を開き、受注4法人を独占禁止法違反(不当な取引制限)容疑で検事総長に告発する見通し。東京地検特捜部は告発後、4法人の担当者とともに、同機構理事らに対する本格捜査に乗り出す。

 公取委が告発を予定しているのは、@財団法人「林業土木コンサルタンツ」(東京都文京区)A民間のコンサルタント会社「フォレステック」(三鷹市)B財団法人「森公弘済会」(千代田区)C民間のコンサル会社「片平エンジニアリング」(文京区)。

 談合は、05,06年度に機構本部と8地方建設部が発注した林道整傭事業に伴う測量や、環境調査で行われた疑いが持たれている。関係者によると、森公弘済会と片平エンジニアリングでは機構OB、林業土木コンサルタンツでは林野庁OBが談合に関与していたという。

 機構本部の林道企画課長が担当理事のアドバイスを受け、年度ごとの落札予定業者を決定。各法人の談合担当者は、課長と連絡を取った後、割り振られた事業の入札が地方建設部で行われる際、林道課長と電話で入札価格などを打ち合わせていたという。

 機構や林野庁OBが受注法人の談合担当になっていたのは、機構側との連絡調整を円滑にするのが狙いだったとみられている。

 片平エンジニアリングの機構OBは、機構に在職時は林道分野を担当。機構で談合を主導していた担当理事の元上司という立場で、割り振りで厚遇してもらう意図があった疑いもある。

 4法人はこれまでも、林野庁や機構OBを多数受け入れていた。機構関係者は公取委の調べに、「OBがいるところは発注を確保した」などと説明しているという。

[緑資源機構 下請けさせ利益配分 幹部「前年並み」指示]
(出典:朝日新聞朝刊2007年5月22日)

 独立行政法人「緑資源機構」(川崎市)が発注した林道整備の調査業務の入札談合事件で、同機構課長らが、受注業者の前年度並み実績を維持するため、元請けだけでなく下請け業者も割り振りし、利益配分を細かく指示していたことが、関係者の話でわかった。元請けの一部法人は業務を下請けにほぼ丸投げして利ざやを得ていた。同機構側のこうした配慮には、機構からの天下りが多い受注法人に安定した利益を確保させる狙いもあったとみられる。

 同機構や受注法人関係者らによると、機構本部の林道企画課長が、全国8カ所の地方建設部の林道課長から公益法人やコンサルタント会社からの受注希望を取りまとめ、毎年度初めに受注業者の割り振りをしていた。割り振りは各業者の実績を前年度並みにするのが基本だったが、発注の件数や金額が減ると、前年度並みの維持が困難になることがあったという。

 こうした揚合、課長らは、各法人の担当者などを呼んで割り振り結果を伝える際、前年度の実績維持が難しい業者の名前をあげ、下請けに入れるように指示。下請け分を加えて実績を達成できるようにするケースがあった。

 同機構が発注する業務の入札に参加した指名業者は、落札した他の業者の下請けはできない決まりになっていたため、入札前から下請けも含めて受注調整する必要があったという。

 また、前年度からの継続事業は同じ業者に引き継がせるのがルールだったが、その事業の終了で代わりの発注がなかった場合も下請けに入れさせていたという。

 こうした調整方法の中で、調査業務の受注実績上位の財団法人「森公弘済会」(東京都千代田区)は、業務の大半を下請けの民間企業に再委託し、ほぼ丸投げの状態だったにもかかわらず、受注額の少なくとも1割を利益として得ていたという。

 同会は職員13人のうち12人が同機構出身。天下りを多く迎えている同会の複数の幹部は朝日新聞の取材に対し、「(同会に)技術がないので、外部にお願いしている」「我々が林道に分け入って調査することはなく、外部に下請けに出している」などと説明した。

 機構幹部も公取委の調べに対し、同会は機構からの再就職が多いため、発注額を増やすようにしていたことを認めている。

 公取委は週内にも、受注実績上位の公益法人とコンサルタント会社の計4法人を独占禁止法違反(不当な取引制限)容疑で検察当局に刑事告発する見通しで、法人関係者や同機構幹部らの事情聴取を進めている。

[林道談合隠し理事指示 「落札率下げ93%に」 公取、4法人告発へ]
(出典:朝日新聞朝刊2007年5月21日)

 農林水産省所管の独立行政法人「緑資源機構」(川崎市)が発注した林道整備の調査業務の入札談合事件で、同機構理事(59)が地方建設部担当者らに対し、談合が発覚しないように落札率を下げる指示をしていたことが、関係者の話でわかった。公正取引委員会は週内にも、受注実績上位の公益法人とコンサルタント会社の計4法人を、独占禁止法違反(不当な取引制限)容疑で検察当局に刑事告発する見通しだ。検察側と連携し、同機構が主導した官製談合の全容解明を目指す。

 関係者によると、この理事は、同機構の森林業務部次長だった03年4月ごろ、全国に8カ所ある地方建設部の担当課長に対し年度内の発注計画などを伝える会議を同機構本部で行った。理事はこの席上、入札予定価格に対する受注額の割合を示す落札率について、「95や96では談合を疑われる。93%ぐらいが適切ではないか」などと発言。落札率を従来より抑える方策をとるよう指示したという。

 出席した課長の一人は公取委の調べに対し理事の発言を認めたという。理事も「あまり高くなりすぎないように」と談合隠しを促すような発言をしたことを公取委に認めているという。また、理事が「(落札率を)93%程度に」と指示した会議の内容を記録したメモをすでに押収しているという。
 各地方建設部の担当課長らはこの会議を受け、落札予定業者に対してそれまでの入札より低い落札率になるよう働きかけたり、地方によっては予定価格を業者に漏らしたりした疑いが持たれている。

 公取委は、談合の隠蔽工作が理事らによる「官主導」で行われたという悪質性に注目しているほか、会議が開かれた直前の03年1月に施行された官製談合防止法に対応する狙いがあった可能性もあるとみている。
 この理事は、同機溝本部の課長が年度ごとの受注業者の割り振りを決定する際、各業者が前年度と同じ程度の業務を受注できるようにするなど、アドバイスしていたことも判明している。

 関係者の事情聴取を始めている東京地検特捜部も、この理事らが組織的に落札予定会社を割り振っていた官製談合との見方を強めている。公取委の告発後、談合していた農水省所管の公益法人や民間のコンサルタント会社計4法人の入札担当者らとともに、理事らも独禁法違反容疑の共犯として刑事責任を追及する方針を固めている。

[林道談合 緑資源機構が丸投げ指示 立件へ捜査態勢強化]
(出典:2007年5月20日(日)03:45)

 農林水産省所管の独立行政法人「緑資源機構」の官製談合事件で、同機構が、談合により林道業務の受注が決まっていた民間コンサルタント会社に対し、別の業者にこの業務を「丸投げ」するよう指示していたことが、関係者の話で分かった。機構と関係の深い公益法人の丸投げは明らかになっているが、機構が丸投げを指示していたことが判明したのは初めて。丸投げを禁止している機構自らが丸投げに積極関与していたことで、談合に対する機構の主導性と悪質性が鮮明になった。

 東京地検特捜部は、週明けから他地検の検事を加えるなどして捜査態勢を増強。公正取引委員会も独占禁止法違反(不当な取引制限)罪での刑事告発に向けて詰めの調査を進めている。特捜部は近く公取委からの刑事告発を受け、独禁法違反容疑で本格捜査に乗り出す方針を固めたもようだ。

 関係者によると、機構本部の発注担当者は平成17年4月、林道関連業務の入札前に、落札が決まっていたコンサル会社に対し、「この業務は本当は別の業者の仕事だ」などと丸投げを指示。同社は受注後、約2000万円の受注額のうち3割程度をマージンとして受け取り、指示された業者に丸投げしたという。

 同社関係者は「機構から丸投げを指示されたのはこの1件だけでなく、この数年で数件あった」と証言したうえで、「機構の本当の意図は不明だが、『あなたの会社はそれなりに受注しているから、ほかに譲れ』という意図もあったのだろう。業者は従うしかない」と話している。

 公取委と特捜部は談合の全容解明のため、業務の丸投げや下請けについても機構や公益法人、民間業者の幹部らから任意聴取を進めている。

 丸投げをめぐっては、財団法人「森公弘済会」が緑資源機構から受注した林道の測量・調査業務の大半を民間業者に丸投げしていたことがすでに判明している。同弘済会の常勤役職員17人のうち16人が機構と林野庁からの天下りで、機構との関係が深く、機構は同弘済会の丸投げを黙認していたとされる。

 機構は遅くとも独立行政法人化された15年10月に、「一括再委託(丸投げ)の禁止」を内規で定めている。さらに発注業務を業者と契約した際の契約書にも丸投げ禁止を明記している。

 緑資源機構の話
「機構が業者に丸投げを指示していたという話は初めて聞く。実際にあったかは分からない」

[林道談合 林野庁発注分も調査 公取、天下りに関心]
(出典:2007年4月2日朝日新聞朝刊)

 独立行政法人「緑資源機構」が発注した林道整備調査業務の入札をめぐる談合事件で、独占禁止法違反の疑いで同機構や受注側の公益法人などを調査している公正取引委員会が、林野庁発注事業の受注実績や、同庁OBの天下りの実態について資料の提出を求めていることがわかった。林野序からの天下りの慣習が談合の土壌になっているとみて、同庁発注の事業についても関心を寄せているとみられる。

 複数の関係者によると、公取委の調査では、緑資源機構が発注した事業だけではなく、林野庁発注の業務や、OBの天下りの実態についても報告を求められたという。
 ある関係者は天下りについて「特殊な業界で、経験のある人は人材として重要だ」といい、天下りが受注に関連したかについては「若干あるとは思う」と話している。
 衆議院調査局の資料によると、独禁法違反の疑いで強制調査を受けた農林水産省所管の五つの公益法人には、05年4月時点で国家公務員OBは277人在籍。うち理事職には44人が就いていた。大半は林野庁出身者とみられる。

 内訳は、多い順に林野弘済会が159人(うち役員14人)、林業土木コンサルタンツ45人(同9人)、日本森林技術協会40人(同12人)、林業土木施設研究所24人(同7人)、森公弘済会9人(同2人)。特に理事では、林野庁以外の出身者はわずか3人で、大半を本庁や営林局の元幹部職員が占めていた。
 また、林野庁との間で職員を相互に出向させている同機構にも、同じ時期に理事長以下、17人の林野庁OBがいたほか、受注上位の民間コンサルタント会社も、林野庁OBや同機構OBを役員などに受け入れていた。
 実際、天下りを受け入れてきた法人や会社の受注実績は高い。同機構が03〜06年度の4年間に発注した林道調査事業393件(総額約29億9592万円)のうち、5公益法人が170件を落札。全体の約43.3%にあたり、事業総額は約13億5112万円にのぼる。
 また、受注件数順でみると、上位4位までが林野庁OBの受け入れ実績があり、落札総額は全体の7割を超える約21億3420万円だった=表。この上位4法人・会社の予定価格に対する落札額の割合を示す平均落札率は93.4%。同機構の担当者が談合の疑いをもたれないように設定していたとされる「予定価格の93%に非常に近い額だった。

[林道談合 農林土木の闇に迫れ]
(出典:社説、2007年4月20日朝日新聞朝刊)

   またしても官製談合が発覚した。公正取引委員会が強制調査に入った緑資源機構は、農林水産省のもとで森林整備や田畑の土地改良の土木工事をしている。先に摘発された国土交通省に次ぐ、公共事業の本丸である。  昨年秋から調べていたが、10年近くも談合を続けているのは悪質とみて、東京地検と連絡をとりながら着手した。公取が調べ出すや、機構はあわてて一般競争入札を採り入れるなど改革している。

 談合が行われたのは、同機構が発注する「緑資源幹線林道」工事の測量や地質調査の入札だ。機構の理事や課長が入札価格まで指示を出し、落札業者を官主導で決めていた疑いだ。  しかも、受注していた業者の多くは農水省所管の公益法人で、林野庁や機構からの天下りを多数受け入れていた。  絵に描いたような談合の構図ではないか。本庁と公団、公益法人の間で天下りを通じた役職員のネットワークをつくり、森林整備や農林業振興といった美名のもとに、談合で発注代金を高止まりさせ配分する。役人の仲間うちで税金を食い物にしていたのだ。

 農水省は国の公共事業の約2割を握る。そのうち林道の発注は年間百数十億円、調査業務だけなら十数億円という。金額が大きくはないが、林道談合には農水省の土木行政にひそむ不正の構造が典型的に表れている。  農林水産業は国際競争力が弱いが、選挙の票をあてにする族議員はたくさんいる。そこで政府は、徹底した保護政策をとってきた。土木工事に頼る地元の業者も多い。公共事業のばらまきは、農山漁村に所得を再配分する有力な手段ともなってきた。  幹線林道は林野庁が計画した林道網の骨格道路で、国の予算から補助金が投入され、全2千キロのうちすでに6割強が完成した。幹線林道が本当に2千キロも必要なのか、再検討すべきである。  緑資源機構は森林開発公団と農用地整備公団が統合されてできた。理事長は元林野庁長官で、理事5人のうち3人は農水省からの天下りが占めている。

 小泉内閣時代に行政改革の対象だったが、道路公団の民営化論議の陰に隠れて生き延びた。03年に公団から独立行政法人になったが、公共事業の別動隊としての性格は変わらない。この際、改廃を視野に入れて見直したらどうか。  公共事業や補助金をばらまく行政を続けてきたため、役人も利権感覚に染まったのではないか。林野庁は事務官と技官の権力争いで活力を失ったといわれる。

 そこを改革すべき松岡農水相は、当の林野庁の出身である。まして政治資金でスネに傷もつ身だけに、出身母体にメスを入れることができるとは思いにくい。  官製談合は林野庁だけなのか。農水省本体はかかわっていないのか。族議員の暗躍はなかったのか。公取と検察の徹底した捜査を期待したい。

[林道談合 官主導、入札額示す 疑い避ける日的か]
(出典:2007年4月20日朝日新聞朝刊)

   農林水産省所管の独立行政法人「緑資源機構」が発注した林道整備の調査業務をめぐる談合事件で、同機構幹部が「落札予定」に決まった公益法人など業者側に入札額を事実上指示していたことがわかった。談合の疑いが持たれないように入札額を操作していた疑いも浮上。公正取引委員会は機構幹部が主導した悪質な官製談合だったとみており、家宅捜索で押収した資料の分析を進める。

 問題の調査・測量業務では、同機構本部の林道企画課長や全国8カ所の地方建設部の林道課長らが、受注を希望する公益法人や民間コンサルタント会社の窓口になった。  年度ごとに落札する法人や業者が割り振られ、受注が決まった法人や業者の担当者は本部や各建設部の課長に呼ばれ、意向を伝えられたという。  関係者によると、法人や業者の担当者はその際、機構の課長らから、入札すべき額を聞き出していたとみられる。  課長らが数字をメモに書いて見せ、金額を教えたケースもあったとされる。数字を示すことに難色を示す課長もおり、その揚合は法人や業者側が自分で額を積算して質問。課長らは「高すぎる」「もうちょっと上」などと、額を示唆した疑いがあるという。  「本命」となった法人や業者の担当者は、入札に参加するほかの法人などに、機構側から示された入札額を伝達。ほかの法人などはそれより高い金額で応札していたとされる。

 これまで発覚した官製談合事件では、上限の価格で、それ以上の金額では落札とはならない「予定価格」を官側が漏らす例が多かった。  しかし、予定価格を伝えると、業者側は予定価格に極めて近い額で入札しがちで、予定価格に対する落札価格の比率を示す「落札率」が高止まりするケースがほとんど。  落札率が高すぎると談合が疑われやすいため、同機構側は90%台前半などを目安に落札率を設定。予定価格ではなく、入札額を法人や業者側に事実上指示していたとみられる。  ある機構関係者は「最初は95%程度だったが、その後、談合に対する世間の目が厳しくなり、徐々に下がった。ある時点からは93%が決まりのようになり、ほとんどの人がまねていた」と説明している。  朝日新聞が03〜06年度の入札調書をもとに調べたところ、約400件の平均落札率は約92.5%で、談合があった割には比較的低くなっている。

[林道談合、強制調査へ 公取委、きょうにも]
(出典:2007年4月19日朝日新聞朝刊)

 農林水産省所管の独立行政法人「緑資源機構」が発注する林道整備の調査業務に絡む入札で、同機構幹部がかかわった官製談合が繰り返された疑いが強まり、公正取引委員会は独占禁止法違反(不当な取引制限)容疑で強制調査に乗り出す方針を固めた模様だ。19日にも、関係先の家宅捜索に踏み切るとみられる。  林道整備をめぐる一連の談合疑惑では、東京地検特捜部が関係者の事情聴取を始めている。公取委は今後、刑事告発に向けて特捜部と連携し、詰めの調査を進めるとみられる。

 関係者によると、談合の疑いがもたれているのは、同機構が全国で進める「緑資源幹線林道」整備事業の地質調査や環境調査、測量などの入札。  同機構本部の林道企画課長のほか、全国8カ所にある地方建設部の林道課長らが、受注を希望する業者の窓口になり、落札予定業者を割り振っていたとされる。  各年度当初に各建設部の課長が原案を作成し、本部の課長が最終的に調整。本部で林道整備を担当する理事にも相談していた疑いがあるという。割り振りの結果は、課長らから落札予定となった業者に伝えられていたとされる。  入札には、農水省所管の公益法人の林業土木コンサルタンツ、森公弘済会、林野弘済会、日本森林技術協会(いずれも東京)などが参加。フォレステック(東京)などの民間のコンサルタント会社も加わっていた。しかし、実際の受注は、林野庁や同機構からの「天下り」を多く受け入れている公益法人に集中する傾向にあった。

 公取委は同機構が組織的にかかわった疑いがある官製談合の実態を解明したり、林野庁などからの天下りと談合の関係などについて調べたりするには、家宅捜索が不可欠と判断しているようだ。  昨年1月施行の改正独禁法で、公取委にも裁判所の令状で家宅捜索や資料の差し押さえができる犯則調査権が導入された。公取委はこれまでに、汚泥・し尿処理施設談合事件とゼネコンによる名古屋市の地下鉄談合事件で、こうした権限を使つている。

[農水省元幹部ら起訴−補助金増、腐敗の温床に]
(出典:2000年4月15日日本経済新聞朝刊)

 農水省の汚職事件で、東京地検は14日、元同省幹部、溝上欽也容疑者(44)を収賄の罪で、四国大川農業協同組合の元代表理事組合長、広瀬義信容疑者(70)ら二人を贈賄の罪で起訴した。同事件で農協側に流れ込んだ補助金は、
ウルグァイ・ラウンド(UR)合意に伴い、農家が受ける影響を緩和する対策費だった。補助金欲しさに同省との癒着を深めようとする農協と、それにたかる同省幹部らの腐敗の構造が浮き彫りになった。
 起訴状によると、同省農産園芸局調査官などを務めていた溝上被告は、四国大川農協が補助金の支給を希望していた穀物乾燥施設などの整備事業に便宜を図った謝礼として、1997年7月から昨年十月にかけ、飲食代約190万円を広瀬被告に肩代わりさせた。溝上被告らは起訴事実を認めているという。
 関係者によると、四国大川農協は地元では「派手な事業展開で有名で、先進的な農協と評価されていた」という。70年代以降、地元農家から買った農産物を、農協が出資した企業がギョーザなどの冷凍食品に加工、商品を特産品店に出品するなどPRにも積極的だった。
 農協側は農水省中堅幹部らとの癒着をテコに新規事業を推進。度々の"つけ届け"の結果、溝上被告は、農協が新設を計画していた施設に対する約9億円の補助金支給に尽力。元構造改善局課長補佐、上甲継男被告(47)=3月22日、収賄罪で起訴=も特産品店の開催情報を提供し、農協側に数百万円の補助金が流れた。
 同農協が便宜を受けた受けた補助事業は、いずれも93年のUR合意に伴い導入されたUR農業対策費。農産物の輸入で農家が受ける受ける影響の緩和を目的とし、95年度からの8年間の事業費は総額6兆百億円に上る。
 農水省関係者は「予算枠の拡大で、予算配分に携わる中堅幹部らの影響力が強くなる一方、各地の農業団体などは補助金獲得に奔走し、これまで以上の癒着を生んだ」と指摘する。
 今月1日には、業者などと付き合う際の制限を定めた国家公務員倫理法が実施されたばかり。元農水省職員は「職員のモラルの低下は想像以上に深刻で、事件は『農業を食い物にした』との印象を強くした。倫理法を徹底して守ることが、一般農家などの信頼を回復する第一歩ではないか」と話している。

[キャリア職員 地方で癒着の危険性]
(出典:2000年3月28日日本経済新聞朝刊)

 農水省汚職事件は、元技官に次いでキャリア職員の溝上欽也容疑者(44)が新たに逮捕されたことで、補助金支給に絡んだ同省職員と農業関係団体の癒着が、同省の構造的なものである実態が浮き彫りにされた。
 事務系キャリア職員は農水省全職員4万3千人のうち1%にも満たず、本省のほか地方農政局などを渡り歩くケースが多い。同省関係者は「本省に在職中は、農業団体などと知り合う機会はない。地方に出た際に、自治体職員らの仲介などで接点ができる」と話す。溝上容疑者も香川県内の町役場に出向中の82年ごろ、農協幹部らとの交際が始まったという。
 溝上容疑者が農協側に便宜を図った補助事業における予算配分などについては、主に中堅幹部クラスの技官が裁量権を握ってきた。専門知識を持つ技官の力は大きく、農業団体などと癒着が生じる可能性もあるため、同省は十数年前から技官を短期間で配置転換する方策もとっていた。
 同容疑者ら事務系キャリア職員は癒着の恐れがある技官を監視し、牽制する役割を負っているともいえる。しかし、地方で「殿様」扱いされ、技官以上に権限におぼれ、癒着を深めてしまう危険性をはらんでいる。
 ある農業団体関係者は「技官の力は強いが、出世していくキャリアはそれ以上に重要な存在。我々にとって、両方が大切な"もうで先"だ」と話す。



[農水次官が「遺憾」]
(出典:2000年3月28日日本経済新聞朝刊)

 溝上欽也容疑者の逮捕を受け、農水省の高木勇樹事務次官は27日夜、会見し、「公務員の倫理が厳しく叫ばれる中で遺憾」と述べた。
 昨年行われた内部調査がずさんだったのではとの指摘に「調査は構造改善事業が対象で、同容疑者は調査対象でなかった」と歯切れが悪かった。



[農水省元課長補佐を逮捕 特産品PR事業 香川の農協に便宜]
(出典:2000年3月3日日本経済新聞朝刊)

 農水省構造改善局の元課長補佐が特産品のPR事業に絡み、香川県内の農業協同組合から現金50万円のわいろを受け取ったとして、警視庁捜査二課と神田署などは二日、元同省構造改善局中産間地域活性化推進室課長補佐、上甲継男容疑者(47)=東京都江戸川区臨海町1=を収賄の疑いで逮捕した。同署は三日、農水省など数十ヶ所を家宅捜索する。上甲容疑者は農水省の構造改善事業をめぐり、過剰接待を受けたとして処分を受けた一人で、一連の接待問題は汚職事件に発展した。
 調べによると、香川県下の農協が1996年4月から2ヶ月間、農水省所管の財団法人「ふるさと情報センター」運営の特産品販売店「ふるさとプラザ東京」に讃岐うどん店を開いた。上甲容疑者は農協側の出店に便宜を図った謝礼として、97年2月中旬ごろ、農協の代表理事組合長(70)から現金50万円を受け取った疑い。組合長については、贈賄の公訴時効(3年)が成立している。
 上甲容疑者は73年4月、農水省に入省。95年4月から96年3月までの間、中産間地域活性化推進室課長補佐として、構造改善事業の一環である特産品のPR事業の指導・助成とともに、同センターに関する事務も担当していた。



[補助金介し農協と癒着]
(出典:2000年3月3日日本経済新聞朝刊)

 収賄容疑で逮捕された農水省元課長補佐、上甲継男容疑者(47)の所属していた構造改善局は1兆3千億円余の予算を持つ。このうち、上甲容疑者がかかわった「構造改善事業」の総事業費は550億円を超える。
 構造改善事業は農道などの土地整備や農産物加工などの施設整備に関する補助制度。事業主体は、自治体、農協などで、農水省が事業費の2分の1を補助する。
 農協の関係者によると、上甲容疑者との付き合いは前組合長時代に始まり、過去5年間だけでも、約20回にわたって韓国旅行やゴルフの接待を繰り返し、利益供与の総額は百万円を超えるという。一方で、農協側はこの5年間で、約4億73百万円の補助金を受けていた。
 上甲容疑者を接待した関係者は「我々が暗に接待を求められた場合、断ることなんてできない」ともらす。別の構造改善事業を進める組合法人幹部も「農水省の職員に嫌われたら、事業をうまく進めることはできない。そのためには、ある程度の"心付け"が必要になっているのが現状だ」と話す。(出典:2000年3月3日、日本経済新聞朝刊)



[農業公共事業見直せ 北海道農民連盟会長 信田邦雄]
(出典:1997年3月31日日本経済新聞朝刊)

 農業関係の公共事業予算に対しては、ばらまき型で無駄遣いが多いとの批判が強い。膨大な予算が計上されていながら、国民から批判を受けるのは農家としても納得がいかないことだ。農家は受益者とされているにもかかわらず、実際には農業予算は農家のためになっていない。
 農業分野の公共事業である農業農村基盤整備事業は、国や自治体のほか、農家も受益者として事業費の一部を負担するよう求められる。かつては農家の所得が高かったため、そうした負担をすることが可能だった。
 しかし、1987年以降、コメ、小麦、牛乳など道産主要農産物の価格が2割程度下がった。さらに、93年12月のウルグァイ・ラウンド農業合意以降、農産物の生産が抑制され、輸入農産物が増加した。その結果、農家の収入が減少し、事業費負担に耐えられなくなっている。今後、道内では支払困難に陥り、離農に追い込まれる農家があらわれる可能性が大きい。
 事業費が高いことが農家の負担を膨らませる要因だ。道内の農業関係者の間では、基盤整備事業の多くは事業費の半額以下でできるのではないかと言われている。工事費の積算単価が高いとしか思えない。工事を受注する企業と実際に仕事をする企業の間にいくつもの会社や団体が介在する受注構造に問題があるのではないか。農家の間では、建設業界のための公共事業と言われている。
 工事期間の長さも問題だ。事業は農家の申請に基づいて進められるが、当初の予定よりも工事機関が延長されることが少なくない。長くて30年にわたる事業もある。その間、国内外の農業・食糧事情は大きく変化する。
 農家が必ずしも必要としない事業も行われている。農水省は公共事業のおかげで農地の資産価値が上がるというが、北海道においては農地整備のため大規模に土地を動かした結果、かえって農産物の収穫が減少するケースが多く、地価は大幅に下落している。
 私たちが望むのは、農家の所得が増える政策だ。今の公共事業予算を減らして、所得補償などの新たな施策に使って欲しい。欧米諸国ではすでに所得補償を導入している。所得補償は国際的な潮流である。日本も早く対応しなければ、将来、国際競争に耐えられず、国内の農家は崩壊してしまう。特に、北海道のように専業農家の多い地域の打撃は大きい。
 ウルグァイ・ラウンド対策予算の6兆百億円は、2000年に向けて農家の所得が増えるように使われていない。3分の2は公共事業予算だ。
 と言っても、すべての農業農村整備事業に対して反対と言っているのではない。さしあたって緊急度の低い事業は後回しにして、まず、農家の所得が増える政策を導入して、農家の力がついた後でやればいい。そうした政策を取り入れないまま、公共事業を推進すれば、農家負担は増大する一方だ。農家からは公共事業不要論も強まろう。
 公共事業には優先順位をつけて見直すべきだ。簡単な事業でも、農地の水はけがよくなり収益が上がる暗きょ・排水事業や、緑肥やたい肥を入れて地力を高める地力推進事業に対するニーズは高い。農家は厳しい経営状態の中で急がれる事業、有効な事業を先にやってほしいと言っているだけだ。それなのに、国が大規模事業をやろうとするのは、農業以外の事業者や団体が生きるためではないかと言われるだけだ。(出典:1997年3月31日、日本経済新聞朝刊 オピニオン・解説欄)
(予算獲得(議員)←→補助金配分(官僚)←→補助金獲得(天下り企業・公団・農協・農業団体など)←→事業実施(業者)というもたれあいの構造が上の記事によく現れている。巨額の農業予算を農業のためになるよう使って欲しいという農家自身の要望さえ受け入れられない仕組みができあがっていることがよく理解できる。この構図のなかにあるものにとって、予算とは自己の利益や権益を拡大するための道具であって、予算が獲得された瞬間にその本来の目的はどこかへ消失してしまう。そもそも予算が付く前にその配分先は予め決まってしまっているのではないかとさえ思える。ならば、不祥事の防止策として国家公務員倫理法は決め手にはならない。不祥事を引き起こした予算をカットする仕組みでなければならない。予算をカットしたら日本の農業が駄目になる?とんでもない。その予算は農業振興とは無縁な権益拡大のために使われてしまうところだったのである。農家自身が農業予算が農業のためになっていないと主張している。そして、農業の環境価値に対する正当な対価となるよう所得補償の一部として支払えばそこに予算の本来の目的がやっと実現する場合も多くあるだろう。)



[農水省の天下り先企業 受注額53%占める]
(出典:1997年2月21日日本経済新聞朝刊)

 ウルグァイ・ラウンド(UR)農業対策など農業農村整備事業を進める特殊法人、農用地整備公団の主な取引実態が20日、明らかになった。93年度から95年までの3年間に工事を発注した企業の上位30社(発注額299億円)のうち、農水省や同公団からの役員天下り先が20社を占め、受注額も53%にのぼる。農業農村整備事業は自民党や一部農家から「農家の役に立っていない」という声があるが、工事発注や天下りのあり方にも批判が出そうだ。
 取引実態は農水省が作成した資料で判明した。同公団は中小企業の工事受注をとりまとめる農村基盤建設協業組合にも3年間で80億円弱の事業を発注している。同協業組合にも農水省や公団からの天下り役員がいる。工事発注先の上位30社に協業組合も含めると、天下り先への事業発注率は62%強になる。
 同公団は事業費が21億円以上の大規模事業は一般競争、21億円未満は指名競争で入札する仕組みだという。ただ、取引先については「コメントを控える」としている。
 農業農村整備事業は公共事業で、圃場整備やかんがい排水事業などが中心。同公団はこのうち緊急性が高く、都道府県が事業に関与しない事業を手掛けており、年間50億−70億円(事業費ベース)のUR対策費を含め、年間事業費は約400億円となっている。



[集落排水設計の集中是正へ通達]
(出典:1997年2月21日日本経済新聞朝刊)
 農水省は全国の市町村に対し、「農村の集落排水事業の設計委託先を日本農業集落排水協会にするよう強制していない」という内容の局長通達を出す。藤本孝雄農相が20日の衆院農林水産委員会で明らかにした。
 同協会は全国農村の集落排水事業の設計のうち約90%を受託しており、一部自治体から「同協会に設計を委託することが事実上、義務付けられている」と指摘されていたため。


Initially posted August 16, 2003.Updated October 20, 2004 & July 9, 2007