米グーグル(Google)や米リンクトイン(LinkedIn)が採用して成果を出している目標管理手法が「OKR(Objectives and Key Results)」だ。メルカリなど日本企業にも広がりつつある。グーグル在籍時代にOKRを実践していた業界屈指のエンジニア、及川卓也氏にOKRの魅力や注意点について聞いた。

(聞き手は矢口 竜太郎=日経 xTECH)

OKR(Objectives and Key Results)と呼ばれる目標管理手法が注目を集めています。及川さんはグーグル時代にOKRを使われたとか。

 メルカリが採用していると公表し始めてから、ここ1年ほどでよく話題に上るようになりましたね。私が最初にOKRを知ったのはグーグルに入社した2006年のことです。そのときに実際にOKRで目標管理をしていました。

及川 卓也 氏
及川 卓也 氏
早稲田大学理工学部を卒業後、日本DECに就職。営業サポート、ソフトウエア開発、研究開発に従事し、1997年からはマイクロソフトでWindows製品の開発に携わる。2006年以降は、GoogleでWeb検索のプロダクトマネジメントやChromeのエンジニアリングマネジメントなどを行う。その後、スタートアップを経て、独立。現在、フリーランスの技術者として企業へ技術戦略や製品戦略、組織づくりのアドバイスを行う。書籍『OKR―シリコンバレー式で大胆な目標を達成する方法』(日経BP社)では、OKRの解説を手掛けた

具体的にはどういうことをするのでしょうか。

 OKRでやることは実にシンプルです。O(目標、Objective)を1つ、そのOを測定するためのKR(主な結果、Key Results)を3つほど設定し、その実現に向かって組織と個人が努力するというものです。

 OやKRは、達成する自信が50%くらいの困難なゴールにします。その代わり、従業員が「達成できたらいいな」と思えるようなワクワクすることを選びます。まず企業としてのOKRを設定し、それを受けて部門ごとにも「部門OKR」を作ります。また、定期的に達成具合を振り返り、Oの実現度合いがどれくらい高まっているかをメンバーで確認します。

 OKRの定義として一般に言われているのは、このくらいです。あとは、採用する企業や導入コンサルタントがアレンジを加えている状況でしょう。例えば「Oは定性的な目標にし、定量的なことはKRに設定する」とよいと言われることもありますが、グーグルでは定量的な目標をOに設定することもありました。導入する企業がやりやすいように変更を加えればよいと思います。

OKRを採用するメリットは何ですか?

 会社としての目標と個人の仕事をリンクさせやすいことでしょう。OKRでは、部門OKRを受けて個人OKRを設定することもできます。トップダウンで目標が下りてくるだけだと従業員は目標を「自分事」として捉えにくいものです。しかしOKRなら「目標達成のために自分が何をすべきか」をボトムアップで考えられます。トップダウンとボトムアップの双方の観点から部門や個人の目標を設定しやすいのがOKRの良いところです。

それは目標設定が上手か、そうではないかの問題ではないでしょうか。例えば、KPI(重要業績評価指標)をブレイクダウンすることで、従業員一人ひとりの仕事に関連付けることもできると思うのですが。

 その指摘はもっともです。今の目標管理の仕方でうまくいっている企業が無理にOKRを採用する必要はありません。企業が達成したいのは、売り上げ拡大や顧客満足度の向上などであるはず。OKRもKPIも、それを実現するための手段に過ぎません。本来やるべきことが達成できるのであれば、手段は何でもよいはずです。

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