『ブリューゲルの世界』(マンフレート・ゼリンク著)より。「ピーテル・ブリューゲルが細密画家としての訓練を受けたに違いないことは,ロッテルダムにある《バベルの塔》バージョンの部分図からも明らかである。私たちは,構図の一貫性を失わせずに,建築や人間の行動の極めて小さな細部までも読み取りやすくしているこの事実に、ただただ驚嘆の眼差しを向けることしかできない。」「さらによく見ると、これらの細かいニュアンスが,実は非常に粗い自由な筆致で描かれている,という矛盾にも気付く。」

 

 59.9 cm ×74.6 cmという大きさだとは信じられないぐらいのスケール。どんなに拡大しても描きこんであるが,ファン・エイクとは違って緻密に描いているわけではない。雲を突く大きさのバベルの塔から,一つの石ころまで描く凄さ。

 この作品は日本に何回か来ている。最近では2017年,東京都美術館。この作品も実際に見ないと本当の凄さは分からない。「ただただ驚嘆」の一言。