トニーたけざき(後編) /贋作絵師の台頭(3) | アディクトリポート

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これ(トニーたけざき(前編) /贋作絵師の台頭・2)の続き。

「ガンダムエース」誌上で、
トニーたけざきのガンダム漫画
の、初掲載の絵柄を見るのは驚きだった。

だな

まるで同じ漫画家の同一タイトルが、
同じ雑誌の中で、二つ別々の場所に分載されてる
みたいな、奇妙な感覚。

安彦良和の絵柄を、
見分けがつかないぐらいに巧みにトレースできる人がいるなんて、
初めて知ったよ!

厳密には、安彦良和は、
↓ファーストガンダム(左)の
shuuiha
↑「オリジン進化形」(右)を描いていたのに対し、
トニーたけざきは、
あくまでも1979~80年のガンダム現役当時の再現につとめていたわけだが。
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安彦良和アニメーション原画集「機動戦士ガンダム」
安彦 良和
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とにかく、その再現度がすさまじく、
特にシャアには並々ならぬ思い入れがあるらしく、
気合いの入り方がハンパではない。

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これには世間も驚いたが、
誰よりもマネされた当事者の、
安彦良和氏ご本人が敏感に反応した。

曰く、
時々どっちがオレの原稿だったかわからなくなる…
「なんだか、『あんたの絵って、こんなでしょ』とツッコまれてるような気がする」
等々。

安彦氏は温厚なお人柄で、
めったにことを荒立てないが、
それでも自分の絵柄をトレースされることには敏感で、
自分がデザイン原案を手がけたガンキャノンが、
オレにやらせろ! 作家浪人Addicto救出プロジェクト-キャ変遷
↑ガンキャノンのデザイン変遷。
MS(モビルスーツ)でも、ガンダムとガンキャノンだけは、デザイン画も、当初から一貫して安彦良和が担当。(クリンナップで一部が大河原邦男氏)

富野監督の次作「伝説巨神イデオン」(1980)にパクられた時も、
takezaki
「超時空要塞マクロス」(1982)の、
美樹本晴彦氏の当初のキャラ設定が、
↓ミンメイと一条輝のキャラ表は、下記の事情により、この画像から。
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「ガンダム」のキャラ設定のモロパクリだったことにも、
やんわりと、
「どうなのよ」と疑義を唱えるだけだった。

そういやさっき、
安彦良和の絵柄を、
見分けがつかないぐらいに巧みにトレースできる人がいるなんて、
初めて知ったよ!

----と書いたが、
「アニメージュ」誌で「マクロス」の第一報に接した時、
ロボットのデザインが画期的なのに比して、

ここ
キャラデザがモロにガンダム安彦タッチなところに、
「えっ、また安彦さん? いやいや、単にマネがうまい別人か」
と思い直し、
「越えようという気がハナからなく、そもそも勝負を投げてるんでは?」
と感じたのを思い出した。


もっとも、アニメ界の大御所である安彦氏の発言は重く受け止められ、
美樹本氏が後にガンダム関連の「絵の仕事」を多数手がけた経緯もあり、


美樹本氏本人の画風が確立された、
劇場版「マクロス」(1983)以降のキャラ設定がデフォルトとなる一方で、

↓右の一条輝は、劇場版「マクロス」より。左のミンメイはうんと後年に、美樹本氏が描き直したもの。
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↑フィギュアの出来云々よりも、はからずもパッケージが貴重な歴史の記録となった、イマイのプラモ。


テレビ版の初期設定は「なかった黒歴史」として封印され、
ネットで画像検索しても見つからず、
かろうじて初期製品の関連ビジュアルをたどれるのみである。

トニーたけざきも、ガンダム漫画の後半は、
意図的に安彦氏とは見分けのつく絵柄に軌道修正。

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人間ドラマ(のパロディ)では、
「THE ORIGIN」と見た目の差別化がつきにくいので、
「トニーたけざきのサクサク大作戦」への路線変更や、

saku


より与(くみ)しやすいターゲットとして、
「エヴァ」が選ばれることにもなった。
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さらにすごいのは、「トニーたけざきのガンダム漫画」は、
どうやら本家の安彦良和にまで、
影響を与えてしまったらしいこと。

サービス精神からやって下さってるのは承知の上で、
えいきょう
誰も安彦氏ご本人に、これを望んではいないんじゃ…。


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トニーたけざき、つくづく恐るべし!