映画感想「北国の帝王」(再掲載) | 大TOKYOしみじみ散歩日記

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お独り様となった50路男の、ぶらぶらノンビリンの東京物語

映画・マンガ・小説・芝居・テレビに動物
そして大切な母ちゃんとの想い出も時おり混ぜ合わせて

書き留めてゆきたいなと、思います


『北国の帝王』(1973)


1933年頃
アメリカは大恐慌のまっただ中
仕事を失った人々は日銭稼ぎの浮浪者となり、世間はそれを(Hobo=ホーボー)と呼んでいました

ホーボーは移動手段が足しかなくそれを補うために実行されたのが、無賃乗車だったのです

当然、鉄道会社がそれを許すはずもなく
ホーボーを見つけては汽車から叩き出していたのでした
貨物列車19号の車掌、シャック

手にしたハンマーは修理ではなく、貨車によじ登るホーボーに投げつけ
連結場所に潜むホーボーを殴り飛ばすため

19号列車は、彼によってホーボーたちの血に染まり
今ではそれに乗り込もうなどと考える者はいなかったのです

一人を除いて

男気と人情に厚く、仲間たちから尊敬と愛情を以て呼ばれていた彼のニックネームは
エース・ナンバーワン(言語ではA=エーと発音)

自分の後釜だとうそぶく青年に付きまとわれて辟易しながら
彼は仲間たちの気持ちと自分の意思を貫くために、シャックの待ち構える貨物列車19号への無賃乗車を決行します


無賃乗車を決して許さないという信念と
生きるため、自分を信じる者のために無賃乗車をやり遂げるという信念が

遂に

ぶつかり合って……

のどかな風景に牧歌的な音楽
そこで繰り広げられる男たちの死闘

男性映画、というジャンルがあるとすれば
まず間違いなくトップを競える傑作です

監督はロバート・アルドリッチ
私自身はアルドリッチ作品をリアルタイムで数作品しか見ていないのですが
(遺作が1981年の「カリフォルニア・ドールズ」)
母ちゃんがバート・ランカスターのファン、という因縁からこの監督が好きで
初期の「アパッチ」や「ヴェラクルス」
後期の「ワイルド・アパッチ」「合衆国最期の日」なんて、テレビやビデオで一緒に見たものだし
「飛べ!フェニックス」なんて良かったですよ♪

本作で主演した超個性派

リー・マーヴィン

アーネスト・ボーグナイン

エース・ナンバーワンが内に知性を秘めた中年男の意地を醸し出せば
シャックは性癖丸出しの野卑な中年男の意地を現して
その対比もまた面白いのです
調子のよさだけで世を渡れるのは、ホンの一時だと映画は見せてくれているなあと、私は感じました

ただ、激しく熱いだけではなく
二人の生きざまに、人として持たなくてはならない信念を貫く純粋さを感じて
歳を重ねるほど感じ入る事が出来る作品なんだろうなあと思います

それにしてもアーネスト・ボーグナイン
今なら間違いなく助演男優賞ものの芝居です

これなんて

CG無しですから

日本語版も傑作でした


(2017.6.12より転載)