年に一度くらい、
『鉄コン筋クリート』の映画を観たくなる。

去年は観てないし、
今回はひょっとして4年ぶりくらいかな?




『鉄コン』は、
私が松本大洋を知るきっかけになったマンガ。
この作品でハマってから、
一通り追っかけている。
(ただし、『竹光侍』だけは未読)

今日で何回目かわからないけど、
たぶん観る度に違う感想と、
変わらず感じることがある気がする。


今回感じたのは、
「登場人物が多いけど、わりとわかりやすい。
でも前半の展開は早いな」ってこと。

もうひとつは、
「背景の美術、めちゃイイじゃん」ってこと。

エンディングタイトルで、
この背景美術がず〜っと出てくるので、
嬉しかった。
ごちゃごちゃした、アジアの下町っぽい世界。
ちょっとかすれた色合いがいい。
なんか懐かしさを感じる。


好きなシーンはいっぱいあるが、
冒頭、タイトルバックの
カラスの飛翔に合わせて視点が変わる演出が
も〜う、かっこいい!

この「視点の変化」は
最後の方、イタチの登場シーンでも出てきて、
ここもゾクゾクする。


毎回違った登場人物に注目して観ているが、
今回はネズミ(鈴木)が気になった。
もともと好きなキャラクターではあるが、
彼のむなしさや孤独感が伝わってきた。
セリフも好き。
死ぬ前の、
「首から上は勘弁してくれよ。
割と気に入ってんだよ。この顔」
ってセリフ、好きだなぁ〜〜
ネズミを演じた田中泯さん、上手い!



ネズミが
最初の方で言うセリフ、
「だが愛は信じろよ」
これがこの作品のテーマであり、
通奏低音になっている。

シロが言う、
「クロの心の足りないネジ、シロが全部持ってた」
このセリフ、今回はじ〜んときた。


松本大洋の作品は、
「暴力的でありながらリリカル(抒情的)」だと思う。
そこがたまらなく好き。
それは、大好きだったアレックス・コックスの映画
『シド・アンド・ナンシー』にも通じる。



最後の方、
イタチが出てくると、
グッと内省的な世界になる。
「自分の中にある闇との闘い」がテーマだからだ。

以前、松本大洋がインタビューで、
好きな本として『ゲド戦記』を挙げていたのだが、
納得〜!と思った。
『ゲド戦記』の第一作『闇との闘い』は、
まさにこの「自分自身の闇との闘い」がテーマで、
最終的に、
自分の中にある闇と一体化する。

クロは、イタチと訣別するのではなく、
イタチが「俺は決して消え去りはしない。
いつでもお前の中に住む。
お前を守る…お前を救う…」と言っているように、
イタチ(闇)を内包しつつ生きていく。
シロの世界(愛の世界)を選びつつ生きていく。
その姿は、
闇を自分に取り込んでひとつになったゲドの姿と
共通すると思う。


私の中にも闇がある。
イタチがクロを誘った世界のように、
力が絶対の世界。他者を傷つけて喜ぶ世界。
自分が一番になれる世界。
全能感が気持ちいい世界。

その闇を自覚しつつ、
私もクロのように生きていかなくてはならない。
シロの世界、
愛の世界を選び取りながら生きていきたい。
観終わって思うのは、
そういうことだ。