奇才、川島雄三監督、昨年が生誕100年でした | cookieの雑記帳

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興味を持ったことなどを徒然なるままに書き留めていきます。半分は備忘録。音楽(classicからpopsまでなんでも)、美術(絵画、漫画、現代美術なんでも)、文学(主に近現代)、映画(洋画も邦画も)、旅や地理・歴史(戦国以外)も好き。「趣味趣味な人生」がモットーです。

映画『幕末太陽傳』でその名を広く(?)知られる川島雄三監督。昨年生誕100年を迎えました。一部で少し盛り上がりを見せたかなと思います。
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現在の青森県むつ市に生まれた川島雄三さん。経歴などはこちらを参照していただくとして、松竹に入社後は助監督として何本かの作品を経験したあと無事に監督に昇進。
松竹時代には多くのプログラムピクチャーを撮り、日活移籍以降は数々の名作をものにし、合計51本の作品を残し46歳という若さでこの世を去りました。
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作品の出来不出来には波があり、映画を撮るのはお金の為ですと言い切って、会社からの注文をこなしていました。
その無頼で破天荒な行動は、川島組の助監督であり、後にカンヌのパルムドールを受賞する今村昌平氏らによって語り伝えられてきました。
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日活に移ってからの作品はDVDなどになっているものも多く、比較的鑑賞しやすい状態にありますが、松竹時代の作品などはなかなか観る機会がありません。
今回、生誕100年を記念して、衛星劇場では現存する50作品をHDリマスター版として全作紹介する番組を放映しています。
10年くらい前にも日本映画専門チャンネルで全作放映をやっていましたが、この時の録画と比べても画質は良くなっている印象です。
昨年10月で松竹編が終わり、11月からは日活作品に入っています。ここからは名作多数ですので、興味を持たれた方は必見です。冒頭にも書いた『幕末太陽傳』は今年1月に放送されました。

1980年代前半から活動を始め、1990年に現在の形になったKAWASHIMA CLUBというファンによる映画サークルが川島作品の上映やニュープリントの作成など、作品の普及に努めています。少数精鋭の素晴らしい団体だと思います。

現在YouTubeには川島監督の動画がアップされており、動いている姿を見ることができます。






川島監督関連の書籍もいろいろ出ており、1人の映画監督としては多い方ではないかと思います。現在新刊で入手できるものは多くはありませんが、嬉しいことにメモリアルイヤーにあわせて新たなラインナップが加わりました。

川島雄三名義の著書は、本人の発言などをまとめた『花に嵐の映画もあるぞ』、柳沢類寿氏との共著で『柳よ笑わせておくれ』の2冊。
小説「川島雄三」というべき『生きいそぎの記』を書いた藤本義一氏の『川島雄三、サヨナラだけが人生だ』

弟子の今村昌平氏が中心になって、川島監督の生涯についてまとめた『サヨナラだけが人生だ 映画監督川島雄三の生涯』は、旧版と増補改訂版。
かつて週刊ヤングジャンプに連載されていた「栄光なき天才たち」にも川島監督が取り上げらています(電子書籍で読めます)。

少しマニアックなところでは、川島監督に近しい方々が纏めたもので、木村東市氏による『悲劇の喜劇映画監督 川島雄三』、非売品の追悼文集『川島雄三の生と死 ミューズの蹠』(所蔵している図書館でコピーしました)、前述のKAWASHIMA CLUB発行の小冊子などがあります。

雑誌「ユリイカ」の特集号もいろいろと参考になります。川島作品の連続上映に際して発行された『川島雄三 乱調の美学』は全作品を簡潔に纏めた作品ガイドで、まだ現役の本です。電子書籍では『天才奇才たちの昭和史 日本映画遺産』にも川島監督がピックアップされています。

比較的近著なのが、KAWASHIMA CLUBによる『没後50年 監督川島雄三 松竹時代』。タイトル通り松竹時代の作品が詳説されています。ちょっと微妙な表紙ですが(^_^;)

そして石渡均氏による『映画監督のペルソナ 川島雄三論』はDVD付き。これまでにはなかった単著による本格的な評論です。

メモリアルイヤーの昨年発売となった2冊。インタビューなどを中心に編集された『川島雄三は二度生まれる』。そしてKAWASHIMA CLUBによる前述の書籍の続編で、日活以降の作品を取り上げた『偽善への挑戦 映画監督川島雄三』は、今まで見たことのなかった写真もふんだんに使われています。


もう10年以上前になりますが、下北半島を旅した時に川島監督の墓所である徳玄寺やむつ市立図書館の川島雄三記念室などを訪ねました。
いずれ機会があったら纏めてみたいと思います。

クセがあるので好みは分かれると思いますが、興味を持たれた方は是非とも川島作品をご鑑賞いただければ嬉しいです。