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人間以外のものをキャラクター化する「擬人化」が大人の領域でブームを巻き起こしている。化学の元素を女性キャラにしたり、世界の国々をさまざまな性格の人物にしたり、果ては中国人が使った日本人の蔑称(べっしょう)まで…。「何でも擬人化する」サービスを提供する企業も登場。背景には、豊かな漫画文化を持つ日本独特の感覚があるようだ。

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 擬人化されたキャラクターの代表格が、やなせたかしさん原作のアニメキャラクター「アンパンマン」。米国でも「きかんしゃトーマス」が人気で、身近なものがしゃべり出す親近感で子供たちの心をとらえてきた。しかし、近年は政治や世界史など大人向けの題材を擬人化する動きが盛り上がっている。

 最近目立ったのが、「日本鬼子(ひのもとおにこ)」という女性キャラクター。元来は先の戦争で中国人が日本人に対して使った蔑称(中国読みはリーベンクイズ)で、昨年9月、尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件後に中国で繰り広げられた反日デモで横断幕によく掲げられた文字だ。この「日本鬼子」が、ネットユーザーにより美少女キャラに仕立てられた。

 現在は数多くの日本鬼子が作られており、その一つを手掛けた30代男性は「『日本鬼子』を検索したとき、蔑称の意味だけが表示される現状を変えたかった。悪意にはユーモアで対抗するのが有効だ」。実際、“逆輸入”された日本鬼子を見た中国のネットユーザーは「罵声を逆手に取られた」と困惑顔という。

 他にも、元素記号を擬人化した書籍「元素周期 萌(も)えて覚える化学の基本」(PHP研究所)が出版されたり、戦争で敗れたイタリアを「ヘタリア」という弱々しいキャラで表現するなど世界の国々を擬人化した漫画が人気を呼んだりするなどブームは進行中だ。

 擬人化をビジネスとする企業も現れた。アニメなどの制作会社「MyBS」(京都市下京区)は1月、「何でも擬人化する」といううたい文句のサービス「ぎ・じんか」を開始。費用は1体当たり5万円で、サンプルとして東大など旧帝国大学をモチーフにした女性キャラを掲げた。

 擬人化ブームについて、京都精華大マンガ学部の吉村和真准教授は「日本は多様なキャラクターの文化が発達してきた。擬人化されたキャラクターに共感したり、楽しんだりできる土壌が育っている。日本の漫画的文化の豊かさの表れでもある」と分析している。