ひとしきりコーエン兄弟祭りをやった中で気に入った「ビッグ・リボウスキ」 。
その後DVDを買ってたまに流し観してるんですが、コーエン兄弟はこの映画でレイモンド・チャンドラーの小説の世界を再現したかったと話しているので、チャンドラーの「大いなる眠り(Big Seep)」も今手許に。
映画評論家の町山さん曰く、「インヒアラント・ヴァイス」などチャンドラーの世界を目指した作品はいくつかあるようで、チャンドラーの世界観や関連映画の話も併せてまた記事にしてみたいと思います。
で、今回はこの映画に登場するスラング「ジョンソン(Johnson)」について。
直球すぎる下ネタなので記事にする人も少なかろう・・・ということで、不肖ワタクシめが。
さて、ジョンソンの用法です。
例えば、リボウスキ(ジェフ・ブリッジス)が、いきなり家に押し入って来た男たちに、
”I said we'll cut off your Johnson!”(お前のジョンソンをちょん切ると言ってるんだ!)
と脅されるシーンがあります。
ちなみにこれ、男性にしか通用しない脅迫。
そう、「ジョンソン」ってのは、男性にしか付いてない、そして男性がチョン切られることを最も恐れている、ア・レの意味なんです。
他の場面でもジュリアン・ムーアが「ジョンソン」の意味を説明していて、この映画、世界で「ジョンソン」を流行らせようとしてるとしか思えないフシもww
ベビーローションやバンドエイドなどで日本でも知名度の高い「ジョンソン・エンド・ジョンソン」という会社名も、このスラングを知ってしまうと、まるでBLのようで笑いがこみ上げてきてしまいます。(もちろんジョンソン・エンド・ジョンンソンと言えば世界規模のコングロマリット企業ですし、たまたま偶然あらぬ俗語と名前がかぶっちゃっただけなんですけどね)
映画の中でリボウスキが「ジョン(John)」(トイレの意味)というスラングを使うシーンもあり、これも語源をたどれば「ジョンソン」と関連がありそうです。
こうした用法、アメリカ通の方はとっくにご存知の話だと思うんですが(でも多分、物凄く一般的かというとそうでもないんだと思います)、アメリカ人でも案外この言葉の語源はよく分からないようなので、これを機会にちょっとだけ「ジョンソン」について考えてみることにしました。
「ジョンソン」のルーツは、イギリスにおける「ジョン・トマス(John Thomas)」だ、というのがどうも有力な説のようです。
イギリスでは「ジョン・トマス」はまさに「ジョンソン」の意味で使われるスラングなのだそうで・・・
かの有名な「チャタレイ夫人の恋人(Lady Chatterley's Lover)」(D.H.ローレンス著 1928年)には別バージョンの原稿があり、そのタイトルは「ジョン・トマスとジェーン夫人(John Thomas and Lady Jane)」と名付けられていたとのこと。
これが語源かと思いきやもっと古く、19世紀にも用例があるのだとか。
だとしたら「チャタレイ夫人~」の作者ローレンスは、この俗語を知った上でこの小説のタイトルに持ってきたお茶目な御仁、ということになりますね。
一体元祖「ジョン・トマス」って誰なんでしょう?(笑)
ジョン・トマスがそういう意味だとすると、さらに「ジェーン」のほうも気になってしまうわけですが、こちらは隠語なのかどうか、残念ながら分かりません。
それにしても何故、「ジョン・トマス」がアメリカに渡って「ジョンソン」になったのでしょうか?
「ジョンソン」という苗字は、もともと「ジョンの息子」=”John's son"に由来しているそうです。
庶民に苗字がない時代、日本でも「三郎の息子の次郎」という意味で「三郎次郎」なんていう呼び方があったように、イギリスでも「ジョンの息子のなにがし」といった呼び名が使われ、やがてそれがファミリーネームになった・・・というわけです。
ここで、「ということは、アメリカでも日本と同じく男性器のことを「ムスコ(son)」と呼ぶのかな・・・?」という疑問が当然のように沸いてくるわけですが、どうもそういうわけではなさそうなんですよね・・・
日本では江戸時代の艶本の類でも男性器の意味で「せがれ」という言葉が使われていて、もしかすると「ジョンソン」のルーツには日本文化も絡んでいるのかもしれない(あるいはどこかに第三のルーツが?)んですが、残念ながらそこは解明できませんでした。
日本では男性器を自分の分身に例えるのが一般的なのに対して、アメリカやイギリスでは、今やすっかり普通名詞になっている"dick”もRichardの愛称であるように(※)、どうもお盛んな人物になぞらえる傾向があるんでしょうか?
でもその両方が合体した「ジョンの息子」とは・・・?
異文化の融合を感じさせる、なかなか奥深い言葉・・・下ネタ探求心をくすぐられますね(単に座りがいいからsonを付けただけってこともありえますが笑)
この言葉の由来、今後とも気にかけておきたいと思います。
※ 但し、dickのルーツには別の説があるようです。
参照したサイト