大津波襲来
高台に到着してもほっとしてはいられなかった。
すでに海はどす黒く、波が異常に高くなり始めていた。
上空を見ると、かもめたちが寄り集まり不安そうに旋回している。
海面から7メートルほどある待合所の屋根も10mほどあるお土産屋の屋根も次々に水面下に消えていった。
それを見た時は、命がけでここまで上って来て本当に良かったと思った。
引き波で金華山海峡が枯れ河のように
そして33分には金華山と牡鹿半島との間の金華山瀬戸からはほとんど水が引き、壮大な枯れ河のようになった。
南北に 波激しく引かれ行き 金華山瀬戸 枯れ河のごとく
壮大なスペクタクルの感じだった。
高校生の時に見た映画「十戒」で、紅海が両側に分かれ、
チャールトンヘストン演ずるモーゼがエジプト難民を引き連れて紅海を渡るシーンを思いだした。
シルクロードの砂漠のタリム川の枯れ河をも思いだ浮かべた。
走って牡鹿半島まで渡りたいという気持ちもちょっぴり浮かんだ。
もちろん本気で考えたわけではない。
この時点では時点では、自分たちは50mの高台にいるという安心感があって、
どちらかというと高みの見物的雰囲気であった。
思わず短歌を口ずさむゆとりもあた。
次なる恐怖はほとんど想定していなかったのだ。