【馬がいる場所

トカラを渡るロマンの風

トカラ馬in鹿児島県・十島村 中之島(トカラ列島)】

 拙著「過去と現在そして未来の日本在来馬」(5月末で完売)と読み比べて頂きたい。

へ・トカラ馬

 歴史は、明治35年頃(1902)鹿児島県旧大島郡喜界島から十島村宝島に導入されたものを起源とし、矮小在来馬が南海の孤島であるため、50年間以上他の種血液を混ぜる事無く純粋のまま世に知られず残存し、トカラ群島の名から「トカラ馬」と命名された。昭和28年(1953)7月に43頭を確認し、同年鹿児島県は文化財として天然記念物に指定し、保護を図ることにした。

 現在トカラ馬は以下の三ヶ所で飼養され、三様の生態系を維持している。

 1:鹿児島大学付属入来農場(野性馬

   この農場は「牛」を研究するための農場であり、「馬」は動物的遺伝資源の確保と牧草地の管理が目的であり、人間の手が入るのは馬伝染性貧血症の検査のときだけである。「馬」は「牛」の食べ残した牧草を食べさせるだけで加工飼料は与えない。5~6の群れで形成されており著者が牧場長の車に乗り込み写真撮影に向かうと、それを察知し一斉に逃げ出し飼育員が追い立ててくれるも凄い勢いで逃げまくる。まさに野性馬だ。

 2:開聞岳山麓自然公園(半野生馬

   なだらかな山麓に放牧されている馬たちは人間に対して全く無警戒でひたすら牧草をむさぼり、カメラを向けても全く動じない。4つのグループで行動する馬たちと、単独で行動する数頭の牡馬で構成されているがハーレムは形成されていない。午後5時~午前8時の間は牧柵の中に収容される。餌は牧草だけでは不足し加工飼料に年間、百数十万円が必要とのことだ。

 3:中之島(十島村)(野生馬

   標高250mにある牧場へ向かった。中之島へは鹿児島港からフェリー「十島丸」で9時間かかる。港から5分ほど歩き天然温泉で疲れを癒し、港から2.3㎞を歩いた。登り切ったその時に驚いたのは道路右手下(下牧場)1m位の所が池になっており、湿地・放牧地と続いており牝馬8頭がいる。左手(上牧場)は標高979mの御岳があり、森林伝いが放牧地になっており牡馬12頭がいる。どの馬も人懐っこくカメラを構えると近くの馬たちが寄って来る。中には頭を摺り寄せて来る馬もいる。しかし残念なことに一旦大雨が降ると御岳から流れ出た雨水が森林を伝い、上牧場は川の様になり下牧場が冠水してしまうと言うのだ。それ故、馬伝染性貧血症の検査に訪れる獣医師に蹄の劣化の指摘をされると言う。餌は牧草だけでは不足し加工飼料を与えていると言うが、開聞山麓自然公園の馬と比較すると若干痩せているのが気がかりだ。

 妊娠が確認された馬1頭を喜界島に移すと言う話が出ているとの事である。

 

 ※トカラ馬は鹿児島県の指定天然記念物である。が、所有権は以下が有する。

 1:鹿児島大学

 2:(株)岩崎グループ

 3:十島村

 

 ※平成29年(2017)12月に、中之島の妊娠馬の脱毛が見られたため、飼育者の本田氏から著者に原因究明依頼があった。なぜ著者にと問うと「雪が降り寒かった平成27年2月に1歳の牝馬に脱毛が見られ、他の馬には伝染はしていないが日を追うごとに状態が悪化したため、十島村役場に事情説明し、尚且つ本田氏が鹿児島大学獣医学部の教授に2度対処方法を問い合わせたが結局なにもなされず、1ケ月程で全身の抜け死亡したが、原因不明と言う事で葬られてしまった」と言う過去があり、今回も十島村役場に事情説明を行ったが前回と同じ対応であり、鹿児島大学獣医学部教授に頼ろうとしたが「よその大学に移られ連絡がつかない」と言うことであった。

 著者は直ぐに「日本ウマ科学会の獣医師」に問い合わせを行ったところ「20年以上JRAで仕事をしているが、そのような事は見た事も聞いたこともない。取り合えず検体の診察と血液検査をするべき」と言われた。

 先ずはトカラ馬保存会事務局の鹿児島大学O教授(鶏の生態学が専門)に事実内容を話したが、トカラ馬が三様の形体を御存じない返答が帰って来たため、保存会としてこのような事実がある事を記録するよう依頼し電話を切った。

 次にトカラ馬は鹿児島県の指定天然記念物であることから、鹿児島県教育委員会の県指定天然記念物課の担当者に全ての事実内容を説明したところ、直ぐに十島村役場に問い合わせ、実態調査を行うと言ってもらえた。

 その甲斐があり、十島村職員が真剣に検体審査した結果「ダニ」が原因ある事が分かり、餌を変え様子を見ていたところ、平成30年(2018)1月中旬頃から冬毛が生えだし元気も出てきたと、2月7日に連絡があった。

 また、それと同時に今後馬に異変が現れた場合、教育委員会に直接連絡して良いと言われたこと、本田氏(十島村契約職員)の3年更新が、何もなかったかのように行われ、尚且つ餌の費用増額が認められたと著者のメールアドレスに書かれていた。

 

 ※沖縄県久米島の「久米島馬牧場代表・井上福太郎氏」は、唯一トカラ馬を乗用馬として営業している。鹿児島大学から1頭(牝馬)を7年前に貸与してもらい、調教に3年かかったと言われた。乗馬するのに体重制限はない。

 

 

       鈴木純夫