ベアトリーチェ チェンチの肖像と言われていた作品 | フィレンツェ暮らしアレコレ

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こんにちは

今回はローマのバルベリーニ美術館にあるとても魅力的な女性の肖像画を紹介させていただきます。

長年グイド レーニ作のベアトリーチェ チェンチの肖像

とされていた絵画です。


ベアトリーチェ チェンチという女性は1599年に親殺しの刑で斬首された女性ですが、その原因は殺された父親が長年に渡り彼女への性的虐待を含む虐待を子供達に続け、それに耐えかねた子供達とその恋人が父親を殺害したという事件でした。

 当時ローマでこの父親の悪評は有名で、市民はベアトリーチェに同情的で、極刑は免れるものと期待していたそうなのですが、親殺しということで家財没収、事件を起こした子供達は死罪だったそうです。

 この当時の教皇はクレメンス8世(1592-1605年)で翌1600年にジョルダーノ ブルーノの処刑がカンポフィオーリ広場で行われています。

 カラバッジョはこれらの処刑を目撃していたはずで、同美術館に展示されている「ジュディッタによるオロフェルネの斬首」はその影響を受けて描かれたとも考えられています。

(カラバッジォ作、ジュディッタによるオロフェルネの斬首)

さて、ベアトリーチェの肖像はグイド レーニ作とはされていましたが、彼に近しい画家の手によるものだろうとは言われていました。それが、現在はジネブラ カントフォリ(1618-1672年)というボローニャ派の女性画家の手によるものとされています。

描かれた年代も1640年となりました。

 題名も「ターバンを巻いた女性」と 変更されています。

1600年代前半は女性画家が記録されている時代でもあります。


その中でもボローニャ派は、ラヴィニア フォンターナ、ジネブラが席を置いていたエリザベッタ シラーニ、などの女性画家が、画家として成功した父から工房を継承して結婚した後も自分の名前で教会祭壇画まで手がける活躍を見せているのが注目されます。


 女性画家の手堅い活躍場所は高貴な女性お抱えの肖像画や、静物画を描く宮廷画家の道、修道女で修道院での活動として宗教画を手がける道でした。


私は「ターバンを巻いた女性の肖像」を見て印象が重なる絵が、真珠の首飾りの少女です。

(Wikipediaからフェルメール作、真珠の首飾りの少女1665年ごろ)


有名度合いは比べようもありませんが、私がいつまでも尾を引く何かを感じるのは有名なフェルメールの方ではなく、ジネブラの描いた絵の方です。悲劇のベアトリーチェ チェンチを、当時名を馳せた画家が描いた作品とされてきたことが、この絵の魅力を物語っている気がします。