王様と私 | 今日もこむらがえり - 本と映画とお楽しみの記録 -

今日もこむらがえり - 本と映画とお楽しみの記録 -

備忘録としての読書日記。主に小説がメインです。その他、見た映画や美術展に関するメモなど。

 

1956年 アメリカ

ウォルター・ラング 監督

原題: The King and I

 

またまた、懐かしい映画を観ました^^。大好きな1本。

小説『アンナとシャム王』がミュージカル舞台でヒットし、舞台でも

主演していたユル・ブリンナーが再びシャム王を演じて映画化。

その後も有名なところでは、ジョディ・フォスターとチョウ・ユンファ

で『アンナと王様』として非ミュージカル映画化されたり、ブロード

ウェイでは最近まで渡辺謙さんがシャム王として舞台に立って

いたり、何度もリメイクされて今でも愛されている作品ですが、

私はやはり、ユル・ブリンナー版のこの作品が飛びぬけて一番

だと思っています。子供の頃、母と一緒にテレビで観た時に、

なんだこの渋くて素敵に恰好いいおじさまはー?!と衝撃を

受けたのが忘れられません(笑)。

 

19世紀のシャム王国(現在のタイ)の王子・王女の教育係として、

イギリス海軍の夫を亡くした女性アンナが雇用され、はるばる

海を渡ってまだ小さい息子と共にシャム王国を訪れ、文化の

違いに戸惑ったりシャム王の横暴さと衝突したりしながら、

徐々にお互いを理解し認め合い信頼を築いてゆく、West Meets
East の典型的な物語。

 

ユル・ブリンナーが演じたシャム王は、タイ仏教の改革や列強

諸国との外交に努め、西洋の文化や教養にも明るかった実在の

ラーマ4世がモデル。ラーマ4世は実際にインド生まれのイギリス人

女性アンナを英語教師として雇っており、小説『アンナとシャム王』

は当のアンナが書いた2冊の本が元になっていますが、そもそも

のアンナの著作はとかく創作と誇張だらけだそうです。教育係

ではなくただのイチ英語教師、実際にはラーマ4世と直接関る

こともほとんどなかったようです。それでなくとも、”え、実際は

こんなことないでしょう?”なんてツッコミ始めたらキリがないこと

ばかりなので、あくまでもフィクション、絵空事の物語として楽しむ

のがお勧めです。ちなみにアンナの誇張云々関係なく、単純に

不敬罪が存在するためにタイでは今でも発刊・上映等一切禁止です。

タイに旅行した時ローカルの人に対して『王様と私』が好きなど

という発言をするのは微妙なので気を付けた方がいいです^^;。

 

今観ても、まったくもって本当に素晴らしく格好いいユル・ブリ

ンナー。(小学校の頃から、好きな芸能人は?と聞かれたら

ショーン・コネリーとユル・ブリンナー!と答える子供でした。子供

のころから、母と好みがカブっていた・・・(笑))でも、時間というのは

恐ろしい・・・^^;。記憶の中では「格好いい大人のおじさま」だった

ユル・ブリンナーなのに、久々に観たら若くて精悍でびっくり(笑)。

 

 

思わずWikiでユル・ブリンナーの生年月日を検索してしま

いました^^;。映画公開当時で36歳。もっと若くも見えます。

無駄なく細マッチョな肉体美と鋭い眼光、シャープな身のこなし

が圧巻です。ついでに仕入れたWiki情報によると、彼の父親

がスイスとモンゴルの血を引き(なんかすごい組み合わせ

だなー!地理的にはあり得なくもない・・・かもだけれども)、

母親がユダヤ系ロシア人、ウラジオストックで生まれて

幼少期はフランスや中国で過ごす、と。なるほど、あの

どこにも属さない、1人de多民族とでもいうような独特の

雰囲気の理由が少しわかる気がしました。

 

身のこなしが本当に美しいユル・ブリンナー。アンナから

「エトセトラ」の意味を教わって、その語感が気に入ったのか

その後やたらめったら「エトセトラァ、エトセトラぁ~!」と

嬉しそうに多用するところとか、自慢げだったり小馬鹿に

していたり感心したり様々なニュアンスで「・・・ハっ!」と

去り際に言う決め台詞(?)もお気に入りポイントです^^。

 

そして子供の頃は、なんだか地味でおばさんぽくて、あまり

綺麗じゃないんだなぁ・・・とガッカリした気持ちで観ていた(なん

とも失礼な)デボラ・カーですが、今みると、確かに派手な

華やかさはないのですが、とても綺麗な女優さんだったことに

気が付きました。

 

アップの時の表情などもとても雰囲気があります。

 

映画タイトルにもなった有名な曲、「Shall We Dance?」は元は

この作品の劇中歌。二人が曲に合わせて踊るシーンも素敵

すぎます。

 

 

最初は体を話して、手と手を合わせてステップを教えるアンナ

ですが、シャム王が「なんか違う」、アンナ「いえ、お上手ですよ」

といっても何か腑に落ちない様子。西洋の紳士淑女が晩さん会

で踊っていた様子を思い出して、何かがどうも違う・・・そうだ、

確か、手のポジションが違っていたのでは・・・?そして写真の

ように、右手をアンナの腰に沿えたポジションで再び踊り始める

二人。一気に心の距離も縮まり、クルクルクルクルとそれは

見事にホール狭しと踊りまわる二人の姿。映画史に残る名シーン

のひとつではないでしょうか。

 

今回久しぶりに観て新しく気が付いたことがあります。

劇中、隣国ビルマからシャム王への贈り物として献上される

美女タプティムと、彼女を連れてきた使者のルンタ(これまた

お似合いの美男子)の許されぬ恋物語が存在し、二人がこっそり

短い逢瀬を分かち合うシーンで切ない気持ちを歌い上げるので

すが・・・この二人、めっさ歌ウマ!声の相性も抜群で、うっとり

するロマンチックなデュエットに。思わず聞き惚れてしまいました。

歌といえば、バンコクの港に船が着いたシーンで、アンナが息子

と「口笛を吹いて」を歌うシーンの歌とコミカルな演技も、好きな

シーンのひとつです。

 

後世にもまだまだ長く残り続けて欲しい、ミュージカル映画の名作。

久しぶりに堪能できて、幸せな気分になれました。