島根県奥出雲町で珍論争が展開されているというニュースを耳にしたのは２ヶ月ほど前。
広島在住で、同町出身の元建築会社社長から寄贈されたミケランジェロの「ダビデ像」と「ヴィーナス像」のレプリカが珍騒動の引き金になりました。
件の像はイタリアの著名な彫刻家エンツォ・パスクイニ氏（故人）が制作したものだそうで、ダビデ像は昨年の８月に三成運動公園、ヴィーナス像は三成遊園地に設置されました。
ところが、一部の町民から「裸が気持ち悪い」「威圧感がある」などの苦情や「パンツをはかせるべきだ」との意見が出たといいます。これを聞いた町議により町議会で「移動すべきだ」との訴えが出されるに至りました。この町議は「運動公園は近くの中学校の体育の授業で使われ、三成公園は未就学児も来場する。二つの像を日常的に目にする子どもらの心に悪影響があるのでは、という町民の気持ちは理解できる」とし、美術館などへの移設を求めたといいます。
この批判に対し町側も一歩も引かない構えで、町長は「本物の芸術作品に若いうちから触れてもらいたい。強さを表現するダビデ像は運動公園に、優しさを表すビーナス像は子どもが集まる三成公園にふさわしいと考えた」と裸像有害論を否定しています。
本物のダビデ像はフィレンツェのアカデミア美術館、ビーナス像はパリのルーブル美術館が所蔵していますが、その複製は世界中に見られます。レプリカをどこに置こうが置きたい人の勝ってだとは思いますが、山深い神話の里、奥出雲にダビデとヴィーナスの巨像は、ありえないほどミスマッチな印象を禁じ得ません。
失礼ながら、この論議を聞いて爆笑してしまいました。それと同時にそれがどれほどのもので、どのような場所に設置されてるのか興味も湧いてきました。
ダビデ像は町立奥出雲病院の向かい側の丘の上、三成運動公園内の周遊道路沿いの駐車場に立っています。
思った以上に巨大！！聞いたところによると、像の高さは約５メートル。
台座を含めるとおよそ７メートルぐらいでしょうか。
いくら芸術作品とはいえ、ナニのアップは鑑賞に耐え得るものではないと判断し、自主規制させていただきました。
隠すとかえって卑猥に見えるという不思議（笑）
パンツを穿かせてみるとみると、余計に卑猥なことに！？
ゲイ術作品とでもいいましょうか・・・
まぁ穿かせてもよいですが、このような穿かせ方は決してしないでください。
絶対に怒られます！！
仮に寄贈された像がダビデやヴィーナスでなく、サモトラケのニケ（ニケの女神像）やアテナ女神像などであったならどうだったのでしょう。
パンツ云々の話は置いといて、設置された場所が問題であるというのはなんとなく合点が行く話しではあります。
何の脈絡もなくポツン、いやドスンとそそり立つ裸像。
シュールな絵面・・・
左奥に見えるのは町立奥出雲病院。
ダビデ像の後方には学校。
いずれもピカピカの新築。境港市よりよほどの金持ちな町のようですね。
う―――ん、ミスマッチといえばミスマッチ。莫大な違和感。
「田舎モノにカネを持たせるとロクな使い方をしない」と揶揄されても仕方がないロケーションのようにも思えます。
ただ、この珍論争で世界中から注目を集め、良い悪いは別にして大きな宣伝効果があったことは事実です。訪れて周辺を散策している間にも、他県ナンバーの車が数台訪れ、若いカップルが写真を撮っていました。甚だ失礼な物言いになりますが、こんな山奥の何もない（と思われている）町を訪れる動機づけになっている彫刻は貴重な観光資源になるのではないでしょうか？
地元の人間が見向きもしなかった江島大橋が「ベタ踏み坂」として大化けした例もあるように、どう転ぶか分からない可能性を秘めているような気がします。
彫刻でまちおこしをはかっている自治体は全国各地にゴマンとあります。「文化の香り高い彫刻のまち」という理想とは裏腹に、住民からは見向きもされず、観光客の眼中の隅っこにも入らずどげしゃもない悲惨なことになっているのに比べると、中身は別として、たった二体で世界から注目を集めることに成功したことはものすごいことだと思います。
周辺には、おいしい米（仁多米）あり、出雲そばあり。山深いのどかな景色や神話の情景あり。そして温泉あり。訪れてみる価値大いにあり。
珍論争のゆくえを気にしつつ、年に何度か訪れてみようと思っていることはここだけの内緒です。それから訪れた記念のおみやげに、ダビデやヴィーナスのレプリカ、まんじゅうなどの商品が欲しいところです。