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年末の一日、午前中は仕事だったが午後が空いたので兼ねてより一度撮りたいと思っていた西武拝島線へ。生い立ちも複雑で一部専用線を転用したいきさつから今でもブリジストンの敷地の中を貫いていたり妙なカーブが連続していたりという路線だがそうした歴史を表現するのが今回の目的ではない。

 

川崎市北西部に育った自分にとって幼少時から稲城、調布、府中、さらには立川あたりまでは(川崎市中心部よりも)身近な存在だった。立川から青梅線に乗って青梅、奥多摩に向かう時に通る小さなジャンクション駅、拝島。1990年代当時ここに集う列車たちと言えば青梅線、五日市線は線内列車が103系の4~6連で中央線直通列車のみが201系10連(4+6を含む)、時々忘れた頃にやって来る八高線はキハ35系のタラコ色気動車、そして駅構内の端に発着する西武拝島線は黄色い旧2000系が主力だった。

 

あれから二十余年、八高線は電化されJRの電車はことごとくステンレス車に置き換わり、青梅線は線内列車も含めて10連での運転が当たり前になり隔世の感。その中で当時から変わらず拝島に発着する西武旧2000系がとても懐かしく、撮りに行かねばという気になったというわけである。

 

撮影地に選んだのは末端部の西武立川~拝島間。特に撮影地を知っているわけでもないので12時半過ぎに西武立川に降り立つと線路に沿った道を歩きつつ撮れるところを探して行った(幸いこの区間は線路沿い長きにわたって車の通れないほどの小径が続いている)。

 

 

西武立川駅も「立川」という都市の名前を冠しており西武鉄道における立川市の玄関口か?と思わせる(京急川崎、などのように)割にはホーム一部は屋根もなく駅の裏がいきなり畑というかなりのんびりした雰囲気の駅だが、そこから拝島に向かう道中もゆったりした住宅地の中に畑が多く残る落ち着いた郊外の風景。冬至を過ぎたばかり、13時前(12:48撮影)とはいえほとんど真横から差す冬の陽射しのもと線路横に家が建っていては車両に陽が当たらないわけだが、駅からしばらく歩いたところで畑の広がる場所を見つけたのでここで無難な走行写真を一枚。

 

広角故シャッタースピードを上げないわけにはいかず幕切れを起こしているが、最近西武旧2000系は行先表示のフルカラーLEDへの換装が進められており、LED化される前の幕時代の雰囲気をある意味取り戻している。パノラミックウィンドーに行先表示周りがわずかに飛び出した造形がどことなく国鉄キハ40に似ていなくもない旧2000系、西武の車両史の中では4扉異端車として登場するわけだが国鉄車の雰囲気にも近い顔つきが昔から好きだった。

 

 

さらに拝島方向に歩いていくと、西武拝島線は拝島に向かう左カーブを切ってこれまで南側を並行して来た玉川上水を渡る。この北側からカーブを曲がって来るところを撮ってみた。線路敷地は複線分が確保されておりこの場所など高圧送電線を併設した架線柱も複線化を見越した規格で建てられているのだが、西武拝島線の内玉川上水~武蔵砂川間と西武立川~拝島間は単線で残っている。列車本数も日中玉川上水までは毎時6本(3本が西武新宿~拝島間の急行、3本が小平発着の線内各駅停車)が確保されているものの玉川上水~拝島間は線内各駅停車2本が間引かれて不均等間隔の毎時4本(10分、10分、20分、20分という歪な列車間隔)。各駅の乗降客数も東大和市と玉川上水は多いが玉川上水以西はかなり落ち込み、末端部はちょっとした郊外ローカル線だ。

 

 

線路が玉川上水を渡る手前に公園がありここから列車を撮りやすそうなのであるが、年末年始は立ち入り禁止ということであった。しかし柵の外側を並行する玉川上水緑道から見ると、なんともこの季節の多摩らしい景色が…。真冬の低い日差しを受け玉川上水緑道の木々が長い影を投じる中、パノラミックウィンドーの黄色い2000系が拝島を目指す。冬枯れのあたたかな土に暖色の電車が彩を添える。

(13:49撮影)

 

 

玉川上水緑道では近所の子供がおじいさんに連れられて凧あげをしに来ていたり、やはりお近くにお住まいと思われる方がしばらく景色を眺めつつストレッチをしていたり…。真冬の低い日差しが射抜く木漏れ日の中落ち葉の布団が積もるあたたかな景色…。いかにも多摩地区の冬の醍醐味である。

 

黄色い2000系の西武新宿行きが上って行く。青く抜ける乾いた空も気持ちが良い。

(14:01撮影)

 

 

新2000系も来たりしないかな、などと欲を張って居残るが、その間にも太陽は西へ西へと動き、木の影も画面右へ右へと逸れて行く。次の下りは30000系の銀色の電車だが、このわずかな間にも車体側面に当たる陽が弱くなっていく…。

(14:07撮影)

 

 

14時29分、先の写真からわずか20分で車体側面には陽が当たらなくなってきた。しかもやってきたのは(これはこれで原形を留める編成として貴重だが)6000系のステンレス車。空気も冷たくなり出したので、木漏れ日の玉川上水緑道を散策しつつ拝島駅に向かうことにした。

 

自分の出身地に近いということもあるが、多摩地区の畑と宅地が入り混じる景色にはなぜか懐かしさを感じる。拝島線沿線は玉川上水の緑道が並行しており落ち葉積もる緑道の景色も乙。初めて撮影する西武拝島線であったが、黄色い電車が現役のうちにまた撮りに来てみたい。