アニメ鑑賞~「マリア様がみてる」~ | FXで有り金全部溶かした友達の顔を見てみたい。

 「マリア様がみてる」を鑑賞しました。
この作品は百合というジャンルに分類されていて、その事で有名な作品です。
僕もかなり前からこの作品の事は知っていたけど、小さい頃の自分は百合モノという所までは理解していなかったうような気がする。






 僕は百合作品をたくさん観てきたわけではないけど、分類されるものとしては「ゆるゆり」や「青い花」、「ささめきこと」くらい。
 最近のアニメは百合要素が増えてきて、本格的に同性愛を描くのではなく、おまけ程度やファンサービスのためにそういった描写がされることが多い。
タイトルにも百合とあるのに「ゆるゆり」は同性愛を描いた作品と言うよりは日常を描いたコメディ漫画だし、「ストパン」や「ビビオペ」なんかもアクションがメインに描かれている。
 だから、結局の所、百合モノと言える作品を見たのは「青い花」が初めてで。
とても新鮮だった。

 その新鮮さや言葉に表せない変な気持ちを味わうためにこの作品を観ようと決めたんだけど、実際に観て感じたのがそこまで同性愛モノとは思わなかった。
 ただ、それは百合というジャンルとしての魅力が薄いという意味ではないです。
主人公の祐己は最初から同性愛を望んでいるわけではないし、祐己のお姉さまである祥子は1話で男性の事を嫌うような発言をしていたけど、だからと言って恋愛対象が女性限定という考えは持っていなさそうだし、祥子のお姉さまである赤薔薇とは恋愛関係にはなっていないのだから、祥子も同性愛者とは思えない。
 男性女性関係なしに、偶然好きになってしまったのが同じ性別の女性であっただけっていうのが、この作品が描く百合のようにも思う。
恋愛している対象でもあるんだけど、それ以前として基本は姉と妹との関係があるから、妹からすれば姉は尊敬する人で、憧れの存在というのもこの作品ならではの見せ方です。

 同性愛という表現はこの作品にとっては一部過剰表現なような気がする。
祐己や祥子は妹と姉の関係でお互いの事を好きでいるけど、恋をしているのとはまた違うとさえ思える。
祐己は祥子の事を尊敬しているし、絶対的な信頼を寄せている。
彼女たちがお互いを想う気持ちは恋愛という直接的なものではないと思う。
スール制度は先輩後輩というだけの関係というものでもありませんし、そこから生れる特別な何かがあるのではないでしょうか。

ただ、この作品にも同性愛者なんだろうな~ってキャラはいて、聖や志摩子、令と由乃なんかはそういう印象を個人的に受けた。

 この作品は恋に落ちる過程が分かりづらい。
特に聖が卒業を迎えた際に祐己がとった行動とか、いや分からなくもないけどさ。
その点の感情移入はできないが、恋に落ちてからのキャラ描写はとても丁寧に描かれていた。
 この作品に限った事ではなく、少女漫画のほとんどは一目惚れが恋のきっかけだったりするし、恋に落ちる瞬間を大切にしているのではなく、恋に落ちた後の描写を重要としているような気がする。
「マリみて」もそういう描写が多く目立ったし、印象的な場面が多かった。


 僕はつい最近まで、アニメの恋愛において、恋に落ちる描写をわりと大切なものだと思っていたのですが、そういった過程をしっかり描く作品はかなり少ないんです。
 その時にネットで「現実でもいつの間にか恋に落ちていたり、一目惚れしている場合がほとんど」という意見を見かけ、確かにその通りだと納得したのですが、それでも最近の萌えアニメは初めから、主人公に対して女性が好感度MAXなんですよね・・・ジャンルにもよるけど、ラブコメ作品はそういうの辞めた方がいいと思う。
 あと恋愛に落ちる理由が何であれ、その落ちる瞬間はちゃんと描写しないといけないと思う。
後から「恋に落ちてました」だと観ているこちらからしたら、不満が残るし、面白くない。
途中から登場したキャラや最初から好感度MAXのキャラはその瞬間を描くのは難しいけど、断片的に欠けているラブコメを観させられるのは不快。

 「マリみて」とはまったく関係のない話ですw




 この「マリア様がみてる」というタイトルを僕はちょっとイヤラシイ風に解釈していました。
百合作品なので、同性愛をいけないと分かっていても、女子同士イチャイチャしてしまう。
なので、「そんな事、マリア様がみている前でしてはいけません///」みたいな・・・そういうふうに解釈をしていましたw


 そういえば、つい最近こんな画像を見つけたので載せます。


だそうです、百合とレズの言葉の違いを深く考えたことなかったので、結構驚きました。





 この記事実は4月のもので、恐らく1期を視聴した後に書いていたと思うのですが、そのまま放置し、8月になって4期を観終え、アニメシリーズは全て視聴したのでシリーズを通して書いていきます。



 1期は祐己が1年生の頃を描いており、2年生と3年生が先輩という立ち位置ですね。
・赤薔薇
蓉子-祥子-祐己

・白薔薇
聖-志摩子

・黄薔薇
江利子-令-由乃

 というスール関係にあり、スポットを当てる所と当てない所をアニメではハッキリしていました。
1年生の主人公祐己とスール関係にあるのは2年生の祥子であり、祐己は3年生の蓉子とは直接的な関係性は低いんです。
おばあちゃんと孫の関係と公式で言われているけど、祐己と祥子の信頼関係を高めるために蓉子はあまり物語に関与せず、高みの見物というかお悩み相談役的な一歩引いたポジションにいます。
これは江利子もそうでした。
妹の知らない姉の事を教えてくれるのが姉の姉である3年生。
 これにより、アンブゥトンとプティ・スールを中心に物語が展開され、複雑なものにならず感情移入もしやすかったです。

 ただ、3年生の卒業イベントでまったく想いいれのないキャラが卒業しても・・・と興味をそそらなくなってしまう可能性があるため、1期は聖が唯一3年生で動いていたキャラでしょう。
 祐己視点で物語は描かれるため、視聴者も祐己に投影しながら世界観を楽しむことができます。
その祐己にちょっかいを出すのが聖で、そういった事が何度も続き、祐己自身も卒業イベントはビッグイベントになったわけですが、視聴者はその結果を望む人もいれば、望まない人もいたと思いますw
ちなみに僕は望まない派です。



 そういえば、ロザリアを受け入れるように頼んだ祥子を断った祐己は4期の瞳子と同じ境遇に立っていたのですね。
そう考えると祐己と瞳子は非常に運命的な二人だったのかもしれません。
ただ祐己と加奈子もそういった意味では瞳子には負けるけど、運命的と言える。
山百合幹部の一人のファンとなり、陰で応援していたかったのも3人一緒だし、想いこみが激しい所もそっくりである。
 だから、祐己と瞳子がスール関係になったのは納得がいくような気もするけど、僕はイマイチそうは感じない。
 まず瞳子がどうしても好きになれないのが一番の原因だろう。
想いこみは非常に激しく、他人の好意さえも哀れみだとかネガティブな発想しかせず、性格が悪く描かれる。
初登場の時は性格はやや違うが、それでもいやらしい態度をとったり、祐己視点だと非常に不快に写るキャラ。
外見もテンプレ意地悪お嬢様に相応しい、両側につくった縦ロールに吊り目。
そんなキャラを祐己は支えようとしていて、視聴しているこっちは不安定な気持ちになったんだけど、もう少し瞳子が性格を改めたり可愛く見える描写を速くすれば、また違った感想が出たと思われる。



 1期はとにもかくにも、殺伐としていた印象。
山百合会のメンバーがメンバーだっただけに序盤の祐己の緊張は共感できる。
あんな落ち着きがあってクールな先輩が同じ部屋にたくさんいる中に放り込まれているのだから、それはもう息苦しいそうな空間になっていましたw

 お姉さま方も外見からして、蓉子、祥子、聖、江利子、令のようなクール・ボーイッシュなキャラが多かったから、自然と落ち着きのある山百合会になっていました。
それに初期の由乃は病気で本来の明るさが発揮出来ていない事もあって、慌ただしいキャラは祐己だけだった事も多く、そういった事から3期や4期の雰囲気とは違う山百合会になっていた。



 1期の作画はというより、ほとんどの話数は線が太く、少し残念。
昔のアニメなので仕方ないけどね。
ただ作画監督が辻美也子さんが担当した回は比較的線が細く(線をあまり書き足さない事で太く見せない)、瞳の大きさも小さいので好きでした。
あと、OPの原画(止め絵)を手掛けた中嶋敦子さんの画風好きだな~。
この人が描いたものは一目でわかるような気がする。
男性よりも女性向けのアニメに向いているけど、「マリみて」みたいな作品にはこの人の画風は合う。
「ガンダムSEED」で有名なキャラデザの人や渡辺明夫さんと同じくらい中嶋さんのキャラデザは人気があると思うし、恐らくこれからもその人気は変わらないでしょう。
てか、この人を作画監督に迎えてほしかったな・・・。








 「マリア様がみてる 春」(第2期)
何故か朝に放送された2期。
内容は深夜にやるような事ではないけど、一応女性同士のキスシーンが描かれるのに朝放送ってw



 3年生の卒業があるため、前半は3年生にスポットが当たっていますね。
一期と製作期間が空いていないからか、作品の雰囲気は変わらず、観ていて違和感はありませんでした。
また、1期では1年生同士の友人関係があまり目立たなかったが、2期になると友人としての関係が深まっているのが分かる。

 2期の印象的な回はやっぱり卒業する話で、赤・白・黄を混ぜた色はサーモンピンクでその色がこの回にちらほら登場して、観終わってディスク取り出したら印刷されている色がサーモンピンクでちょっと感動したり。
 他にも演出としては仰げば尊しが数分流れて、その際セリフが入らなかったりと卒業の切なさを静かに描写したり、普段は祐己視点で描かれるのに卒業回は蓉子視点。
演出は淡白だったとも言えるけど・・・。
6話は聖視点で物語が描かれ、新鮮味が感じられた。
過去回想から3年生組がどんなキャラだったのか、どういった学園生活を過ごしていたのか新たに知ることができた。

 今、考えて知ったけど、祐己と瞳子が姉妹になったのは祥子と祐己が姉妹になったのと類似した点がありましたが、聖と志摩子、志摩子と乃梨子が姉妹になったのも類似する点があったんです。

 聖と志摩子は友好関係にすぐなり、その関係が長いにも関わらず姉妹になるまでは進展しない辺り志摩子と乃梨子の際も一緒な問題が浮上していましたね。


 
 終盤の祐己と祥子のすれ違いはさすがに祥子が祐己に一言残せば、解決するだけの話というのに、祥子は鈍感な所があるから、祐己の心配に気づかなかったのかもしれないけど、このシナリオは微妙でした。




 作画は5話がやけに力入っていた。
この回の作画監督の相澤昌弘さんはシリーズ通してこの回しか担当していない所をみると、ディーン所属ではなく外部の有能なアニメーターさんだったんでしょう。
3年生の卒業という事もあってか、予算が多めに設けられていたのだろうか?
何だかこの作画監督には賛否両論らしいけど、僕個人としては1話だけの担当で終わらせてしまうのは勿体ないと思った。








「マリア様がみてる OVA」(第3期)
 個人的にシリーズの中で一番好きです。
OVAのためか作画はとても安定しており、線も細くなってキレイなものに仕上がっている。
気難しいシナリオはほとんどなく、祐己と祥子が百合百合している場面がシリーズの中で多い。
それに新山百合会は明るいキャラが多いためか、シリアスの少ないOVAはキャラと作風が合っていたように思う。

 1話では冒頭から祐己が祥子と痴話喧嘩していたり、そんな絶対的な信頼をお互い持った状態から始まります。
祐己は祥子と一緒に休暇を楽しみたいのに祥子は自分の事ばかりで祐己に構ってくれない。
かと言って祥子が祐己を大切にしていないわけではなく、古くからの付き合いをしている家柄に自分の妹である祐己をバカにされ、その事に腹を立てている祥子。
そんな家柄からパーティーに誘われ恥かし目を受けることになると分かっていても、負けず嫌いな祥子はこれに参加し、その姉を支えるために祐己も参加。
酷い仕打ちを受けるも2人はそれを乗り越えるというエピソード。
 1話は百合描写も多く且つ、姉妹同士の絆が一層深まるシナリオも面白かった。
作画監督は一番好きな辻美也子さんが担当しているので、本当に文句が出ない話数だった。


 3期は2年生になった祐己が主に学園祭の計画で積極的に行動していて、1年生の時と比べると自発的なキャラに成長したと分かって、そういった点も見応えがある。
祐己だけでなく祥子の男性嫌い克服も3期で描かれていますね。




 3期は決して大きな展開があるわけではなく、1話50分とゆっくりとしたシナリオが展開がされ、箸休め的なものになったけど、キャラの成長だったり可愛さ、信頼の構築が高まっていること垣間見ることができる素晴らしいものになっている。









「マリア様がみてる4期」
祐己が瞳子を妹に迎える物語。
由野は菜々を妹にすると決め、2年生組の妹が確定するシリーズとなっている。


 4期になると祐己-瞳子、由野-菜々という組み合わせをメインに描かないとスールにした理由が見えてこないので、二人のお姉さまである祥子と令はやや一歩下がって二人を見守っている感じになっている。
だから、今まで構築してきた信頼性を楽しむことが少なくなっているように最初思ったんだけど、祥子は祐己と瞳子が姉妹関係になる事をすでに知っているかのような描写があって、祐己という人間を知り尽くしているからこそ、本人よりも本人の事を分かっているかのような表現があり、間接的ではあるけど、非常に暖かいエピソードだったように思える。

 一方、令は由野と菜々が仲良くしているのを見て、嫉妬。
それを同じ立場にいる祥子が慰める事で令は由野に依存気味だったことを自負し、自立する。
令と由野は親戚同士で長い事一緒にいたから、令が嫉妬するのは凄く理解できる。
令の良い所はその気持ちが嫉妬という事を分かっていて、そんな自分を恥ずかしいと思っていること。
普段はクールなキャラなのに感情を露わにする令、良いシーンだったと思います。


 ただ瞳子はどうしても好きになれないキャラだった・・・。
決して悪い子ではないんだけど、自分の気持ちが分かっているのにそれとは真逆の行動をしたり、悪態を吐いたり、思いこみが激しい・・・と可愛げのないキャラ。
最終的には自分の気持ちに素直になり、祐己の妹になりたいと申し出るけど、もう少し面白いエピソードを期待していたので拍子抜け。
そのエピソードのラストも結局、祥子と祐己の関係の深さに感動してしまったので、瞳子が素直になる場面でも彼女に集中する事ができなかった。


 「マリみて」のアニメは今現在4期までしかアニメ化されていないから、この先の物語も知らないので、瞳子が今後どう変わっていくのかも分からないまま、悪いイメージだけが残ってしまった。
是非5期を見たい所だけど、さすがに望みは薄そうですねw
原作はかなりの長編だから、手をつけるのを渋ってしまいます。





 シリーズには面白いのと面白くないのとでコロコロ評価が変わってしまうけど、シリーズ通して観て、とても満足するアニメだったとは思う。
何度も繰り返すけど、祐己と祥子の絡みを見るのがとても面白い。
姉妹、友達、恋人と色々混ぜ込んていて、且つそれを丁寧に繊細に描写する事がこの作品が提唱する百合だったのではないでしょうか。
僕はこの作品の百合要素に魅了されて、そのためか世間で騒がれている百合作品が陳腐に見えてしまうので、今後「マリみて」みたいな百合を描く作品がたくさん出てきてほしいと思うばかり。





 1~4期まで決まってOP前に祐己のセリフが入っていたけど、あのセリフ好きだった。
というか、あのセリフの言い方がとても好き。
キャラになりきって、セリフを読みあげているし、祐己が1年生の頃だった1期のと比べてみると4期の読みあげは余裕が感じられ落ち着きがあるように思う。





あと4期はシリアスな話が多かったけど、特典にSDキャラのゆるい日常を観て笑えた。