EP6の密室トリックについて | 07人目の狩人。

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07th Expansion作品についていろいろ書きます。

まず僕は、盤上の紗音と嘉音は別肉体であるという解釈をしています。
ただし、現実では一つの肉体に紗音と嘉音とベアトの三人の魂が入っているとしてます。

それを踏まえた上で、EP6のいとこ部屋or隣部屋からの脱出について考えてみると、
"隣部屋に所在するのは、秀吉、譲治、紗音、熊沢、南條である!"←【認める。】
【それ以外の全員が、いとこ部屋にいることを認める。】
という人数確認と【いとこ部屋、隣部屋の両部屋の密封は保証されマシタ。】という封印宣言にタイムラグがあることから、
『人数確認のあと、すぐに嘉音がいとこ部屋から脱出した』となりました。

(追記:即座に封印が行なわれたという赤字はありませんし、現実的に考えれば一瞬で封印が行なえるということはありません。
例えばヱリカが扉の封印を行なっている間に、窓から脱出することは可能です)

それを補強する根拠として、
“嘉音が突然、……貧血でも起こしたかのように、………くしゃりと、床に崩れ落ちたのだ。
 何の予兆もなく突然だったので、驚き、みんなが駆け寄る。”
というシーンが挙げられ、これは『遡り手によって、嘉音がいとこ部屋から存在しないことになった』ということだと解釈しました。

人格説(同一肉体説)ならば、ただの幻想描写だと解釈するのでしょうが、
「例え幻想描写であっても、紗音と嘉音が同時に認識されていることはない(二人が揃っているという認識で会話がされていることはない)」
という前提で考えると不自然な気がします。

ただし、もちろん「EP5では(探偵ではない)戦人がはっきりと紗音と嘉音を同時に認識していた」ということなどから、
この前提は出題編限定なのだとするのも、そもそもそんな前提はないのだとするのも問題はないでしょう。

しかし、【ロジックエラー時に隣部屋の窓の封印が暴かれていたことを理由とする青き真実の使用を禁じるものと知り給え。】を厳密に守った場合、人格説でどうやって脱出したのかという疑問が沸きます。
この封印は、のちにドラノールによって解かれましたが、一度出した赤字を撤回することなど、本当に可能なのでしょうか。
それ以前に、ベアトはこの赤字を撤回させなくても、突破可能なトリックを用いたのではないでしょうか。
また、一度出した赤字が撤回不可能であることは、小冊子「ベアトリーチェのホワイトデー」によって証明されています。

(追記:時間経過によって、この赤字は無効化されたという解釈もあるようです。
また、“提示する謎”に組み込むことは禁止されていないとも考えられるとのことです)

そう考えるならば、人格説では、
“「だって密室なんて。………体のある人間たちの問題じゃないか。」
「……え? ………………あ…。」
「僕らはすでに、肉の檻から解放された存在だよ。……密室なんか、僕たちの妨げになるものか。」
「……そ、そんなのいいんですか…? だって、チェーンロックとか、ガムテープの封印とか、赤き真実とか…!」
「そうか。……君は駒の世界じゃなくて、……それより上の世界の存在だったね。……だから僕たちとは違う制約があるらしい。……やれやれ。」”
というやり取りなどを根拠に、『肉体を室内に残したまま、人格だけが脱出した』と考えるのでしょうか。

しかし、それでも、【封印時の隣部屋に居たのは、 秀吉、譲治、熊沢、紗音、南條である。
そして、隣部屋の人数は5人である。この5つの名に該当する者以外は存在しない! 全ての名は、本人以外には名乗れない!!】
というのは不自然ではないでしょうか。
人格説として考えるなら、紗音の肉体の中に嘉音が存在していなければならないはずです。

つまり、やはり嘉音は、最初からいとこ部屋に存在していなければならないのです。
ならば、肉の檻から解放された人格として存在したのだ』としてもいいのですが、
“「僕らはすでに、肉の檻から解放された存在だよ。」”ということは、それまでは肉の檻の中に閉じ込められていたということです。
封印時というのが具体的にいつのことなのかというのは明確ではありませんが、普通に考えれば封印直後、つまり「肉の檻から解放される前」のことでしょう。
以上の根拠から考えると、人格説は破綻します。

続けて、客室からの嘉音の消失ですが、これについては不思議な点は特にありません。
いろいろな説はあるのですが、『嘉音が嘉音ではなくなった』という説明だけでも十分であると考えます。

ただ、物語的に自然であるかどうかを考えると、『紗音、もしくはベアトになった』と言うより、
『嘉音は嘉音の名を捨てて、嘉哉となった』とするのが一番自然かと思います。
あくまでも決闘に敗れた嘉音が客室に閉じ込められたのです。

また、多くの支持を集める説として『クローゼットの中に犬小屋のようなものがあり、そこに隠れた(通称:犬小屋説)』というものがありますが、
これは【無論だ。3人、即ち3体が出入りした。そなたと嘉音は入ったのみ、戦人は出たのみ。】について、
時系列は一切関係ないのだという厳しい視点で見ると、不可能になります。
例え犬小屋であったとしても、「嘉音が客室から出ている」と取れてしまうからです。

そして、
“「定義確認。客室内とは、ベッドルーム、バスルーム、クローゼット内の3区分である。」」
 「【妾もその認識でいるぞ。 そしてすでにそなたは、ベッドルーム、バスルームの2区分で、誰も隠れていないことを赤き真実で確認したはずだ。】
(中略)
【客室に、嘉音は存在しない。………もちろん、クローゼット、ベッドルーム、バスルーム、この全てにおいてである。】」”
というやり取りからも、犬小屋説は否定可能であると考えています。

さらに別の説として、『客室は爆破されて存在しなくなったために、客室内に嘉音はいないということになった』というものもあります。
これはあくまでも、「ベアトの心臓は爆弾である」と考えた場合の解釈であり、
これについては否定できるような明確な根拠はないと思っています。

(追記:これは、
“「……………………。……いや、一手、あるにはある。
……しかしその手は、………二度と使えぬ手だ。……そしてそれは、…ベアトの心臓の一部でもある。」”
というフェザリーヌの台詞から考えたことでしたが、
これについては『客室を爆破することで、客室から戦人を消失させる』というのがフェザリーヌの想定したトリックだったという解釈もあるようです)

ただし、物語的に自然であるかと言われれば、個人的にはあまりそうだとは思えないので採用していません。
何故なら、この解釈では、ヱリカとバトベアがわざわざ人数確認を行なったということに自然な流れで繋がらないように思うからです。

僕の解釈で言えば、この人数確認は「現実世界に複数の名前を持つ一人の人物が存在した」という可能性に、
ヱリカがなんとなく気付いたのだということになります。
そして、さらに「これは現実世界でも再現可能なトリックである」ということにも気付いたかもしれません。
そう考えるならば、やはりこの説でもベアトの心臓を用いたトリックを使ったのだということになります。
上記の嘉音と雛ベアトのやり取りについても、不自然さはないように思います。

以上により、EP6のトリックは別肉体説でも説明可能であり、むしろその方が自然なのではないかと考えています。
ただし、どちらなのかはっきりとさせなかったのは、猫箱の中身を確定させてしまうからであると思います。