タイトル:かもめのジョナサン

著者:リチャード・バック

訳者:五木寛之

発行:新潮社

発行日:2014年6月30日

 

 

 

 

 

 

 

 

あらすじ 

カモメの群れからひとり離れ、餌には目もくれず飛ぶことの練習に夢中になっている変わり者のジョナサン・リヴィングストン。

とにかく速く飛ぶことだけを考え日夜訓練していたが、その奇行故にある日群れから追放となってしまう。

 

 

 

1970年にアメリカで出版され、しばらくは反響がなかったが、

口コミで広まり、突然爆発的に売れた―――という不思議な経緯の本。

寓話的で薄っぺらで、カモメの写真がやたらとたくさん挟まっている・・・というのが、いかに当時のアメリカ図書に置いて『特殊』だったのかはわからないが、

そういう面白い経緯もあり、今や全世界で4000万部以上の大ベストセラーとなった。

 

私が小学生の時に、夏休みの読書感想文の推薦図書の1つだったが、

結局きちんと内容を知らないまま今になってようやく手に取った本。

当時は第三章までで『未完』であったが、2012年に著者が事故により九死に一生の経験をし、第四章の収録に至った。

 

以下、めちゃくちゃネタバレあります。閲覧注意。

 

 

 

 

なーんだろうね・・・

『不思議な』本だな、と思った。

第一章は、主人公のジョナサンが飛行訓練に夢中になっている様子が書かれている。

スピードをより出すにはどうしたらいいか、ひたすら自己研鑽を積み研究していくひたむきさ、

飛ぶことをいかに楽しんでいるかが描写されている。

 

だけど第二章。

異端として群れから追放されたジョナサンの前に、突然光り輝く二羽の理解者が現れる。

天国のような不思議な空間で、同じく飛ぶことを魅力に感じる『不思議な』カモメたちと飛行訓練を行い、そして瞬間移動を覚える。

 

そして第三章。

ジョナサンは地上に戻り、かつての自分と同じように、飛ぶことに夢中になり群れから追放されたカモメたちを弟子にとり、飛行訓練の教鞭をとった。

そして、自分たちを追放した群れに、その飛行訓練の成果を披露しに戻り、

群れに飛ぶことの素晴らしさを伝授する。

そして一番弟子のフレッチャーに『飛行訓練所』の先生役を引き継がせ、

ジョナサンは光の中に消えた。

 

幻の追加された第四章。

ジョナサンは『聖ジョナサン』として、教祖のように伝説のカモメとして後世に語り継がれ崇め奉られていた。

ジョナサンの教えの言葉のみが世代に伝えられ、記念碑が立てられ、崇拝のみが残り、ジョナサンの教えた『飛行』は失われた―――

 

 

 

 

 

第一章は非常に面白かった。

純粋に飛ぶことに焦点を当てて描かれ、

著者も飛行機乗りだからとても飛ぶことの楽しさが伝わってくる、そういう内容だった。

 

だけどなんで急に『瞬間移動』なんて覚えちゃったのよ?

二章から急にあふれ出た宗教色の強さに、第一章と同じ著者とは思えなかった。

そして第四章では、逆に宗教批判のような―――そういう風に読み取れるストーリー展開だった。

 

結局、この『かもめのジョナサン』とは、何の物語なのか・・・。

何を訴えたかったのか、何を意図して書かれたのか・・・

私にはわからなかった。なにこれ難しい。

 

どうしてこの作品を読書感想文の推薦図書にしたのかもわからない。

子どもたちに何を考えさせたかったのだろう・・・?

自己研鑽の素晴らしさ?

自分の好きなことを、群れから追い出されても貫き通す意志の強さ?

自分を追い出した群れにも、習得した飛行技術の素晴らしさを伝授しようとした見返りを求めない献身的な『愛』の姿勢について?

 

『創訳』とのことで、どれほど原文が残っているかわからないけども、

第一章の美しい風景描写も後半には失われている。

 

これは・・・なかなかに難しい作品だぞ・・・というのが正直な感想でした。

小学生の時分に読まなくてよかったと思う。

多分、本書の抱える『違和感』というか『不思議さ』というか、

そういうものをちゃんと呑み込めなかっただろうし、消化もできなかったと思う。

というかむしろ気がつけるかも怪しいものだ。

だから、『今』手に取れてよかった。

 

 

 

P35

もしこのスピードで両翼をひろげたら、たちまち爆発して何万というカモメの切れはしになってしまうだろう。

それを考えて彼は思わず息をのんだ。

だが、彼にとってスピードは力だった。

スピードは歓びだった。

そしてそれは純粋な美ですらあったのだ。

 

 

個人的にはなんとなく不評な感じに書いてしまいましたが、

名著であることは間違いないし、読者の感想なんて時代によっても大きく変わってくるので、

是非是非お手に取って自身の目で本作をお楽しみくださいね!

 

 

 

 

 

全然関係ない話なのだが、

ジョナサンが行った、群れに飛行技術を教える、という内容。

これは著者が知っていたのか創作なのかはわからないが、

鳥類で、群れに技術が伝播していく、というは実際に確認されている。

カラスのくるみ割り行動などは代表例だ。

他にも一羽がある遊びを覚えたりすると、それを見ていた仲間内でそれが流行する、というのもあるよう。

仲間を攻撃した人間の顔を覚えて、群れ全体で「あの人間はヤバイ」みたいな認識も共有しているようなので、鳥類の情報共有網は優れているのかもしれない。

(私の研究対象がカラスだったから、カラス以外の鳥類のその手の論文やデータは持ち合わせていないのだけれど、恐らく他の鳥類でもある程度は似た事象を確認できるのではないだろうか)

 

 

 

カモメの知能ってどうなのかしらね?

カラスやオウム系が賢いのは割と知られているけれど・・・

水鳥ってどうなの・・・?

(水鳥ファンに怒られそうだからこれ以上の言及はやめにしよう)

 

 

 

 

トップ画は以下からお借りしました!

気持ちよさそうに大空を飛ぶカモメ - No: 24402633|写真素材なら「写真AC」無料(フリー)ダウンロードOK (photo-ac.com)

 

 

 

近くの公園にカラスが群集していてねー。

ハシボソさんもハシブトさんもいて、なかなか観察にはもってこいなのよね。

涼しくなったらまた行動観察をしたいなと思うこの頃。

ちょっと忙しくてバイオリンすら放り出す日々ですが、なんとか読書ペースを維持したい気持ちはある。

秋には途切れちゃうかもしれないけど・・・