20世紀を代表する芸術家、サルバドール・ダリ（1904~1989）。彼の芸術とその人生を、体験型のデジタルアート展示で紹介します。12月18日に行われた内覧会で取材しました。

スペインに生まれたダリ。幻想的で非現実的な独自の内面世界を写実的な技法で描き、数々の名作を生み出しました。絵画だけでなく、版画、彫刻、オブジェ、舞台芸術、宝石デザイン、広告、映画、執筆と幅広く活動しました。特徴的な口ひげで親しまれ、特異な言動でメディアも頻繁に賑わせました。

本展では、《記憶の固執》(1931)、《聖アントワーヌの誘惑》(1946)、《レダ・アトミカ》(1949)などよく知られた作品をはじめ、写真、インスタレーション、映画、記録写真などで構成した映像を、32台のプロジェクターを使って360度に映写。全12幕、35分間の作品を繰り返し上映します。来場者は立ったり、歩いたり、座ったりして自由に鑑賞できます。

ダリ作品による登場する虎や、ぐにゃりと解けた時計など。自在に様々なモチーフが浮かんでは消えていきます。

足元もよく注意してみたいです。床にもダイナミックな動きが演出されています。

ソファでゆったりとくつろいで見ることもできます。

ダリが手掛けた高級ジュエリーなども紹介。多彩な才能を実感できます。全編を流れる音楽はピンク・フロイド。既存のアートの世界を拡張した点で、ダリと通じるものがある、としてフィーチャーしているそうです。

ダリの作品世界を感覚的に接するだけでなく、学ぶコーナーも充実しています。

「言葉の回廊」のコーナーではダリの自伝から抜粋した言葉を空間全体に展示。彼の世界観を言語の情報からも垣間見できます。

年表や写真、パネルなどでダリの生涯をたどる展示もしっかり。多角的にダリのイメージをつかむことができる構成です。

角川武蔵野ミュージアムでは、これまでも「浮世絵劇場 from Paris」（2021年）、「ファン・ゴッホー僕には世界がこう見えるー」（2022年）という体感型デジタルアートを開催、好評を博しました。今回は第３弾。ダリのファンはもちろん、「何か見てみたいけれど、美術館はちょっと窮屈そうで」という方にもおすすめできます。アートへの入り口として気軽に足を運んでみてはいかがでしょう。

（美術展ナビ編集班　岡部匡志）