【開幕】「円空 ―旅して、彫って、祈って―」あべのハルカス美術館(大阪市)で4月7日まで 壮大な「円空ワールド」広がる! その生き様や祈りに思いをはせる展覧会 

両面宿儺坐像 1685年(貞享2年)頃 岐阜県・千光寺

「円空 ―旅して、彫って、祈って―」があべのハルカス美術館(大阪市)で4月7日(日)まで開催されています。江戸時代前期に美濃国(現在の岐阜県)に生まれた円空(1632年~95年)は、修験僧として日本各地を巡りながら、庶民の声に耳を傾け、祈りを込めて神仏を彫り続けました。穏やかに微笑みながら、エネルギーに満ちた「円空仏」は、今も人々の心を癒やします。

大小様々な円空仏が大集合!

円空は「生涯に12万体彫る」と誓ったと言われ、現存する円空仏は5,000体を超えます。本展では、約160体の円空仏が集結します。

「金剛力士(仁王)立像(吽形)」 1685年(貞享2年)頃 岐阜県・千光寺

展示冒頭の「金剛力士(仁王)立像(吽形)」は見上げるほどの大きさで、インパクト抜群。

手前:「千面菩薩像・千面菩薩厨子」 1676年(延宝4年)頃 愛知県・荒子観音寺

一方で、木端仏(木の破片を削って作った仏像 )のような小さな彫刻も並びます。大小様々な円空仏が展示室を埋め尽くし、鑑賞者を壮大な円空ワールドに引き込んでいきます。

円空独自の「両面宿儺」

両面宿儺坐像 1685年(貞享2年)頃 岐阜県・千光寺

注目作の一つが、「両面宿儺(りょうめんすくな)坐像」。円空が晩年に滞在した千光寺(岐阜県)に伝わります。両面宿儺は『日本書紀』では朝廷に背き討伐されたとありますが、飛騨や美濃では地域を守った英雄と語り継がれています。両手で斧を持ち、もう一つの顔が後ろからのぞいているという、ユニークな姿。円空のイマジネーションの広がりが感じられます。

暮らしに寄り添った仏さま

「観音三十三応現身立像」1685年(貞享2年)頃 岐阜県・千光寺

「観音三十三応現身立像」は千光寺に三十一体現存。一体一体個性が感じられます。もともとはさらに多く作られ、近隣の村人が病気のときに借りて、快復を祈ったと言われています。円空仏が、人々の身近な拠りどころとして親しまれてきたことがうかがえます。

作風の変化を実感

左:「護法神像(荒神像)」 寬文13年 (1673年)頃 奈良県・栃尾観音堂 右:「大日如来坐像」 1671年(寛文11年) 奈良県・法隆寺

円空仏といえば、鋭いノミ跡が残り、ゴツゴツとした作風が特徴です。が、実は初期の円空仏は、表面がすべすべしていて、丁寧に彫り込まれています。展示室を進みながら、初期から晩年までの作風の変化をたどることができます。

円空の和歌も一緒に

展示風景

実は円空は、数多くの和歌を残しました。展示室では、円空の歌も合わせて紹介されています。

円空の歌には、古今和歌集などの和歌を学んだ跡が見られ、過去の和歌を引用した本歌取りの歌も多くあります。

「柿本人麻呂坐像」 1685年(貞享5年)頃 岐阜県・東山神明神社

なかでも、代表的な万葉歌人・柿本人麻呂を尊敬し、坐像を残しています。優しく微笑み、くつろいだ人麻呂の姿を彫りながら、和歌の上達を願ったのでしょうか。

「円空像」 大森旭亭筆 岐阜県・千光寺

円空自身について語る資料は少なく、その生涯は謎に包まれています。円空仏の包み込むような表情、パワフルな造形が映し出すのは、円空が旅先で出会った人々の苦しみや悩み、たくましさなのかもしれません。円空の人柄や生き様、祈りに思いはせる展覧会です。

手前:「大黒天立像」 個人蔵
「護法神立像(左)・善財童子立像(右)」 1684年(貞享元年)頃 岐阜県・神明神社

(読売新聞美術展ナビ編集班・美間実沙)

円空 ―旅して、彫って、祈って―
会期:2月2日(金)~4月7日(日)
会場:あべのハルカス美術館 (大阪市阿倍野区阿倍野筋1-1-43 あべのハルカス16F)
開館時間:火~金  10:00~20:00/月土日祝 10:00~18:00*入館は閉館30分前まで
観覧料:一般 1,800円 /大高生 1,400円/中小生 500円
休館日:2月5日(月)、3月4日(月)
アクセス:近鉄「大阪阿部野橋」駅 西改札、JR「天王寺」駅 中央改札、地下鉄御堂筋線「天王寺」駅 西改札、地下鉄谷町線「天王寺」駅 南西/南東改札、阪堺上町線「天王寺駅前」駅 よりすぐ
詳しくは同館の展覧会HPへ。