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VMIとは?メリットとデメリット、活用時のポイントまでどこよりも分かりやすく

VMIとは?メリットとデメリット、活用時のポイントまでどこよりも分かりやすく

在庫管理の負担軽減のため、VMIの導入を検討しているが、どのように運用すれば良いか分からずお困りではないでしょうか。VMIは商品発注者側の在庫管理の負担を軽減し、効率的な運用体制の構築が可能です。その結果商品の提供者は販売予測が立てやすくなり、売上の安定化を得やすくなります。

ただし適切な運用体制が構築できなければ、思うような成果は得られず、失敗してしまう可能性もあるでしょう。本記事では、VMIとは何か、メリットとデメリット、運用のポイントについて分かりやすく解説します。

目次

1. VMIとは

ここでは、VMIとはどのようなものか、定義やVMIの運用に欠かせないVMI倉庫について解説します。

VMIの定義

VMIとは「Vendor Managed Inventory」の頭文字を取ったもので、ベンダー側で在庫管理をすることです。ここでいうベンダーはサプライヤーとほぼ同義で、商品を提供している会社を意味します。JIT(ジャスト・イン・タイム)体制に対応するためには、VMIの導入が欠かせません。

JITとはトヨタ自動車が最初に導入したトヨタ生産方式を支える要素の1つで、「在庫をもたず、必要なものを必要なときに、必要な分だけ」仕入れる仕組みです。VMI方式に対応した倉庫が納入先の近くにあれば、発注から納品までの時間を限りなく短くでき、在庫を持たない状態で、常に生産を行えるようになります。

従来であれば、商品の在庫はスーパーやメーカーなど発注者であるバイヤーが在庫管理し、必要に応じてベンダーに対して必要な材料や商品を発注する方法が一般的でした。

VMIの場合は在庫管理をベンダー側で行い、事前に取り決めたルールに応じて在庫を補充します。例えば、「部品Aは常に100個の状態を維持する」というようなルールがあった場合には、ベンダー側が在庫の状況を確認した際に、100個に満たない分を自動で補充します。

VMIそのものは以前からあるものでしたが、IT技術の向上により、在庫状況をリアルタイムに確認できるようになったことで、注目を集めるようになりました。

VMI倉庫とは

VMI倉庫は、VMIで発注される部品や材料、商品を1箇所にまとめて保管するための倉庫です。一般的には、ベンダー側が用意します。

VMI倉庫があることで、部品や材料の発注元がバラバラであっても、1つの倉庫でまとめて管理できる点が特徴です。このようにすることで、「Aの部品1個、Bの部品3個のセットを常に10セット確保する」などのような体制がつくれ、柔軟に在庫管理できます。

2. VMIのメリット

VMIを導入するメリットは、バイヤー側とベンダー側で異なります。ここでは、バイヤー側とベンダー側のメリットをそれぞれ解説します。

バイヤー側のメリット

バイヤー側のメリットとしては、欠品の回避と、在庫管理の手間の削減が挙げられます。

欠品を回避できる

バイヤー側のメリットは欠品を回避できることです。一定のルールに基づき、在庫がなくならないように自動で補充できるため、「発注し忘れ」や生産の遅れなどによる欠品が起こりにくくなります。

在庫管理の手間を削減できる

バイヤー側は在庫管理をする必要がなく、在庫管理に使っていた手間を大幅に削減できます。在庫管理はベンダーが行うもので、在庫数の確認や発注などの業務をベンダー側で行う必要がありません。

ベンダー側のメリット

ベンダー側のメリットは生産や販売数の予測が立てやすく、販売機会のロスを回避できることです。

生産数や販売数の予測が立てやすい

VMIを導入することで、必要な生産量や販売数の予測をしやすくなります。バイヤーの状況を把握できるようになり、必要があればすぐに納品できるためです。

その結果、不良在庫を抱えるリスクをある程度回避できます。

販売機会のロスを防止できる

VMIを導入することで、販売機会のロスを防止できます。従来の発注方法の場合、バイヤーの在庫状況が分からないため、バイヤーが発注しても在庫がないという事態が起きる可能性もありました。

しかしVMIであれば、バイヤー側にいつ商品を納入すべきか分かるため、欠品のリスクを回避できます。

3. VMIのデメリット

VMIはバイヤー側とベンダー側それぞれ、導入するデメリットもあるため、事前に起こりうるデメリットについて対策することが大切です。それぞれのデメリットを次で解説します。

バイヤー側のデメリット

バイヤー側のデメリットとしては、初期投資の高さと、在庫が増えるリスクです。

初期投資が必要

VMIを導入するためには、在庫管理のためのITシステムを構築することが必要です。VMIの実施には、リアルタイムでの情報共有が欠かせず、そのための設備投資が必要になります。

またITシステムを導入する際には、在庫管理に関わるワークフローの見直しが必要になる可能性もあるでしょう。

在庫が増えるリスク

本来であれば、在庫管理の負担を減らすためのVMIですが、適切な導入ができない場合、在庫がかえって増える可能性があります。在庫管理を最適にして、欠品のリスクをバイヤーが回避するためには、高度な需要の予測が必要になるためです。

またVMIに関する取り決めをする際に、ベンダー側が一定量の発注を確保するため、最低発注量に関する取り決めをする可能性もあります。そのような場合に、発注量が過剰になり、余分な在庫を抱えるリスクも0ではありません。

ベンダー側のデメリット

ベンダー側のデメリットとしては、バイヤーに依存しやすく、契約の負担が大きいことです。

バイヤー側に依存しやすい

ベンダー側のデメリットは、VMIの実施がバイヤーに依存しやすいことです。バイヤーがどの程度の情報提供体制を作ってくれるか、どの程度的確な需要分析ができるかどうかが、VMIを最適化させるためには重要になります。

需要予測ができなければ、不良在庫を抱えるリスクが増え、バイヤー側の負担が大きくなるため、VMIを維持できません。しかし、これらの情報はバイヤー側の能力やノウハウに依存するものです。

そのため、VMI契約をする際には、バイヤー側に適切な能力やノウハウがあるかどうかの見極めが必要となります。

契約時の負担が大きい

VMIは契約時に細かい取り決めが必要で、負担が大きくなります。適切なルールを決めずにVMI契約を結んでしまうと、実施後にトラブルが起こりやすいためです。

例えば「情報が提供されるタイミングが遅く、納品が間に合わなかった」などのようなトラブルが起きる可能性があります。

4. VMI導入時のポイント

VMIはバイヤー側とベンダー側でそれぞれ、準備をして導入することが大切です。導入時に失敗しないよう、大切なポイントを解説します。

契約のルールを明確に

VMIは明確なルールを定め、トラブルが起きないよう細かい取り決めが必要です。例えば、需要予測を見誤るなどして起きる余剰在庫に関する取り決めなど、どちらかに負担が偏らないように配慮する必要があります。

また取り決め内容によっては、下請法(下請代金支払遅延等防止法)に抵触してしまうため、注意が必要です。下請法では下請け代金の支払遅延の禁止や、書面の交付義務(書面の不交付、交付遅れ、記載事項の不備)が定められています。

そのため、VMIに関する取り決めをする際には、書類のやりとりの仕方や、支払いに関して、法律に反さないよう、しっかりとした体制をつくることが重要です。

情報共有をしやすい体制づくりが重要

バイヤー側の在庫状況を、いかにしてベンダー側が把握するのか、事前に情報共有しやすい体制づくりが大切です。在庫状況をIT管理することに加え、IT管理が適切に運用できているかが重要です。

適切に管理できていない場合、ベンダー側は必要に応じて、バイヤー側の在庫状況を現地で確認しなければならなくなるなど、余分な業務が発生し、かえって効率が悪くなる可能性があります。

在庫の所有移転のタイミングに注意する

VMIに関する契約で決めるべき重要な項目の1つが、所有権移転のタイミングです。一般的には、納入と同時に所有権が移動します。しかし、商品の出荷、販売、使用のタイミングで所有権が移動するという方法もあります。

特に理由がなければ、商品の受け取り時点での変更が一般的です。

相互に信頼関係を構築できるかを重視する

VMI契約を成功させるためには、相互に対等な信頼関係を構築できるかどうかが重要です。バイヤーとベンダーのどちらかが優位に立っていると、取り決め内容で、片方に負担を強いてしまう可能性が高まります。

決めたことをきちんと守って運用されるかどうか、双方がウィンウィンの関係を構築できるかどうか、お互いがお互いの利益のためにVMIを運用するという意識が必要です。そのような意識がなければ、トラブル発生時に、どちらかの不利益が大きくなり、VMIの運用継続が困難になります。

5. まとめ

本記事では、VMIとは何か、導入のメリットとデメリット、運用時の注意点について解説しました。VMIをうまく運用できれば、バイヤー側は在庫管理の負担が軽くなり、ベンダー側は安定した発注を受けられます。

しかしそのような状態を維持するためには、ベンダー側とバイヤー側が相互に対等であり、信頼関係を築けるかどうかが重要です。

本当にVMI契約を結ぶべきか、どのような内容で取り決めるべきなのか、判断の参考にしてください。


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BeMARKE編集部
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