試験合格に時間がかかった理由を分析してみた

2022年1月29日

試験にかかった時間

私は合格までに5年かかりました。
今思えば、同年代の友達が「結婚」「出産」「転職」「マイホーム購入」など人生の中でも重要な決断や経験をする中で私はほとんどすべての時間を弁理士試験に費やしたことになります。
合格者の平均受験回数が4~5回なので、私が5年での合格したことは平均的な結果かもしれません。
ましてやほとんどの人が知財の世界のスペシャリストなのでまったく知財のちの字も知らなかった私の結果としてはまずまずだったのかもしれません。
しかし、一方で1年合格の人も稀にいますし2年合格になると割といる気がします。
私も受験時代を振り返ると反省すべき点も多くあります。

分析データのイラスト

短答合格までを振り返る

私の場合、ここは超特急で進みました。
基本的な勉強方法としては、過去問と青本と短答アドヴァンスです。
当時、短答アドヴァンスはLECの窓口で購入することができました。(噂では、アドヴァンスだけ買って講義を受ける人が減ってしまったため、講義の受講生にのみ販売する形式になったとか)
過去問を解いて枝ごとに答えと理由をノートに記載し、答え合わせをします。
理由も含めてきちんと解答できたものは、日付けと〇印をつけておいて次からは飛ばします。
反対に、間違えた枝については 日付けと×印をつけ その条文の青本の記載と短答アドヴァンスの周辺の記載を確認します。
2周目からは、間違えた問題(×がついている問題)のみを解いていきます。
これを何周も繰り返すのです。
さらに短答模擬試験の問題も、そのループに加えて過去問にはない新作問題や改正についての問題をつぶしていました。

短答試験の詳細はこちら↓

短答試験合格の作戦 (タイムマネージメントなど)

論文合格までを振り返る

私の場合、苦労のほとんどは論文の勉強でした。
短答受験中に、論文の勉強を一切していなかったので最初は苦労しました。
趣旨が頭に入っていなかったので、答練でも事例問題の点数は良いけれど趣旨問題の点数が低いという状況が続きました。
ただ趣旨は誰でもやればできるようになります。数か月で基本的なものはマスターして答練の順位が上がってきました。
この時期にゼミにいるベテラン受験生が先生の質問に答えられないのを見て内心バカにしていましたが、数年後自分がベテラン受験生になってしまうことをこの時はまだ知りませんでした。
あとから思い返すと、ベテランにはベテランの悩みや難しさがあります。
少し本題とズレますがベテラン受験生が陥るミスを紹介します。

ベテラン受験生が陥るミス 3選

改正後と改正前がごちゃごちゃになってくる

受験期間が短いうちは、最新の法律で勉強しているのでこの気持ちはわかりませんが、弁理士試験は長丁場で受験期間中に、受験生の事なんてお構いなく法律が改正されていきます。
こうして長くやっている人はつい法改正前の規定で解答してしまったり、そもそもどっちが今の規定かわからなくなってしまいます。

似たような趣旨がごっちゃになる

きちんと体系的な勉強してからしばらくすると、記憶があいまいになってごっちゃになります。
よくあるのはフレッドペリー事件とBBS事件の説明がごっちゃになることです。
こういった間違いをしてしまうと命取りです。

どこの勉強が完成していて、どこが完成していないのかわからなくなる

初学者は、体系的に最初から1年かけて勉強していけば試験対策は完成します。ただし一度この流れを終えているベテラン受験生は、この一連の記憶から徐々に一部が抜けてきます。抜けたところをすぐに補強できればいいのですが、抜けたことに気づかないので穴が多くなっていきます。
これによってベテランなのに基礎的な問題が答えられない状況を生んでしまうのです。
これを避けるために、ベテランなのに基礎講座を受講する方も結構います。またそういったことを推奨するゼミもあります。急がば回れ的な考え方です。

合格が長期化した理由5選

さて、話をもどします。私が論文試験で苦労した理由を、改めて考察していきたいと思います。

短答受験時に論文の勉強をしていなかった

まずこれは、長期化した原因の1つでしょう。
短答の勉強に集中したかったので、短答と論文の勉強と切り離してしまいました。
今思えば、一緒に進めることができれば合格は1~2年早かったでしょう。
というのも、論文の事例問題をやることで短答に必要な知識が定着するメリットがあるからです。例えば論文のパリ優先権の問題なんかは非常に複雑で難しいので、勉強しておくと短答試験ですらすら解けると思います。
また論文の勉強しておけば趣旨が理解できます。短答で趣旨が問われることはありませんが、趣旨から考えれば解くことができる問題はあります。

ゼミを変えなかった

ゼミは合格に必須ではありませんが、大きな影響を与えると思います。
私はゼミをできるだけ変えたくなくて1つのゼミに長居しました。ゼミを変えると勉強方法を変えなくてはなりません。慣れ浸しんだ勉強方法を変えることや新しい教材を買わされるのが嫌でゼミをかえませんでした。
それと、ゼミには一応人間関係もあります。なじみにくいノリのゼミもあって輪に入れなかったりするのも嫌でした。
しかし、いろんな先生のいろんな考えかたに触れたほうが合格が近いと思います。合うあわないもあるので、ゼミを変えたら、より合う先生だったってこともあります。
ゼミにしても、慣れたゼミでベテランとして責任をもってゼミの仲間を引っ張っていくのも1つの道ですが、新しいゼミに入った時はやはり緊張感があります。他の人に負けないように努力することになるでしょう。その頑張りが合格への道を縮めてくれると思います。
ゼミを変えると先生に悪いとかは考えなくて良いです。自分の幸せを第一に考えましょう。

迷ったときに書かなかった

弁理士試験では「迷ったら書け」という言葉があります。私はこの言葉を受験生の最後の方で知りました。
それまでは、迷ったときは書かないスタンスをとっていました。
わたしは受験生の後半、答練では良い点数が取れるけど、本試験では合格できない状況が続きました。
答練では、聞いてくる論点やテーマが明確です。これは問題を作る側も採点する側もその方が都合が良いからです。他方で本試験は、ふわっとした聞き方をしてきます。何が論点なのかわからないことが多いのです。
こういったときに論点決め打ちで解答するは危険です。こっちを聞かれているのかぁと思ったらそっちも書くべきです。加点方式だとしたら、間違ったことさえ書かなければ書いたことで減点はされないと思います。
逆に書かなかった方を、他の受験生が書いていたらかなり厳しい状況になってしまいます。
ただ、だらだら書くのはだめです。時間を浪費して他の設問に影響が出ます。端的に書いて、もしそっちが正解でもなんとか生き延びるレベルで解答するのが良いと思います。

理由を説明する意識が低かった

論文試験と短答試験の一番の違いは、解答を導いた理由があるかないかです。
短答試験は、理由(プロセス)が間違っていても正解をマークすれば正解です。
論文試験は、むしろプロセスの方が大事です。事例に対して、どのような条文を持ってきたか?その条文の要件を事例に当てはめて結論を出したか?
条文を根拠にするときは、条文番号がないのはだめだし要件もすべて検討しなくてはいけません。
判例を根拠にするときは、条文の原則を書いてから、判旨に基づいて慎重に説明する必要があります。
イメージとしてはテーブルの向こう側に、条文集を持った人がいてその人に対して説明するイメージで解答しました。

弁理士試験の論文を創作性のあるものと勘違いしていた

私は理系出身で「論文とはなにか新しいことを自分の表現で論じなくてはならないもの」だと思っていました。
確かに一般的な研究論文を書くときは、何とか誰も考えたことがないような新しいことを書こうとしますが、弁理士試験の論文試験は違います。
極端なことを言うと弁理士試験の論文は、自分の考えを述べる場所ではありません。
新しい自分の考え方を書いても、不合格になります。
法律に基づいて、誰かが考えた文章を引用して説明すればよいのです。
誰かが考えた文章というのは、もちろん青本や判例、基本書です。
こういった先人たちの考えと違うことを書いても、試験においては無資格者のたわごとでしかありません。そういったことは合格後にやればいいし、研究者になってやればよいのです。

司法試験の論文の書き方のテキストは大変参考になります。

まとめ

短期合格を目指すなら

 短期合格を目指すなら 短答と論文の勉強を並行してやる。

 情は捨ててゼミは変えるべき 。

 書くかどうか迷ったら書く。

 論文試験では理由が重要。

 弁理士試験の論文は創作性は求められていない。

 

小ワザ

Posted by kisaragia