史上初!「平治物語絵巻」現存三巻同時公開

蕭白の「雲龍図」でも話題の「ボストン美術館 日本美術の至宝展」(東京国立博物館)ですが、それに並んで注目されているのが在外二大絵巻とも称される「吉備大臣入唐絵巻」と「平治物語絵巻」の里帰り展示です。

うち「吉備大臣入唐絵巻」はボストン美術館展に全巻出ていますが、「平治物語絵巻」に関しては三巻に分かれているため、残念ながら一続きで見ることは叶いません。


「平治物語絵巻 三条殿夜討巻」(展示風景)鎌倉時代 *「ボストン美術館 日本美術の至宝」(東京国立博物館平成館)

しかしながら今、ボストン美術館展での里帰りにあわせ、残りの二巻が同じく東京国立博物館の総合文化展(平常展)、及び二子玉川の静嘉堂文庫の「東洋絵画の精華 珠玉の日本絵画コレクション」で公開されています。

ボストン本が海を渡って以来、この三巻の「平治物語絵巻」が同じ時期に展示されたことは一度たりともありません。つまり現在、まさに史上初めて、場所こそ違えどもこの絵巻を一挙に楽しめるわけでした。



「ボストン美術館 日本美術の至宝」 東京国立博物館(拙ブログ)

まずは東京国立博物館の「ボストン美術館 日本美術の至宝展」に出ている「三条殿夜討巻」です。途中巻替なしの全巻公開に興奮された方も多いかもしれません。

ここでは物語の切っ掛けともなった藤原信頼と源義朝の上皇拉致、そして政敵である信西の首を求めて焼き払われる御所の様子が、極めて臨場感のある表現で示されています。


「平治物語絵巻 三条殿夜討巻」(部分)鎌倉時代 *「ボストン美術館 日本美術の至宝」(東京国立博物館平成館)

とりわけ印象深いのは燃え上がる御所の前で繰り広げられる凄惨なまでの合戦の光景です。逃げ惑う人、また首を挙げんと刀を振り上げる武士、そして滴り落ちる鮮血などの生々しい描写は並大抵ではありませんでした。



「東洋絵画の精華 珠玉の日本絵画コレクション」 静嘉堂文庫美術館(拙ブログ)

さて続いては静嘉堂文庫の「東洋絵画の精華 珠玉の日本絵画コレクション」で公開中の信西巻です。結果的に追われて果てる信西の最期が描かれています。


「平治物語絵巻 信西巻」(部分)鎌倉時代 *「東洋絵画の精華:珠玉の日本絵画」(静嘉堂文庫美術館)

自ら刃をとって自害する信西、そして首を高らかに掲げて進軍する兵列、さらには何食わぬ顔で首の検分を行う藤原惟方の描写などが印象に残るのではないでしょうか。

また静嘉堂は冒頭にこの作品のためにケースを据え、場面毎の解説もつけるなど、言わば別扱いでの展示でした。

そして最後は実は今日、東京国立博物館の総合文化展で見て来たばかりの「六波羅行幸巻」です。本館2階の国宝室で展示されています。


「平治物語絵巻 六波羅行幸巻」(部分)鎌倉時代 *「総合文化展」(東京国立博物館 本館2室)

物語のラストは脱出です。幽閉された二条天皇が清盛の六波羅邸へと逃れる光景が繰り広げられました。


「平治物語絵巻 六波羅行幸巻」(部分)鎌倉時代 *「総合文化展」(東京国立博物館 本館2室)

図像的な武士団の配置、また牛車の配列など、繊細な描写の中に光る構図の妙味に感心された方も多いかもしれません。また状態も良好、色味をじっくり楽しむことが出来ました。

さて改めて「平治物語絵巻」三巻同時公開を整理しておきましょう。

「三条殿夜討巻」
会場:東京国立博物館平成館「ボストン美術館 日本美術の至宝」
会期:3/20(火・祝)~6/10(日)

重文「信西巻」
会場:静嘉堂文庫美術館 「東洋絵画の精華 珠玉の日本絵画コレクション」
巻替:第1期(4/14~4/26)「信西追捕の詮議と信西自害の場面」、第2期(4/27~5/8)「信西自害から首実検までの場面」、第3期(5/9~5/20)「都大路の武者行列と西獄門の場面」
会期:4/14(土)~5/20(日)

国宝「六波羅行幸巻」
会場:東京国立博物館総合文化展(本館2室・国宝室)
会期:4/17(火)~5/27(日)

最も早く公開を終えるのは静嘉堂文庫美術館で5月20日です。続いて東博の国宝室が同月27日、同じく東博「ボストン美術館展」が6月10日に展示を終了します。

なお上記の通り静嘉堂文庫の「信西巻」のみ巻替えがあります。現在は最終期、第3期の「都大路の武者行列と西獄門の場面」の展示です。ご注意下さい。


「平治物語絵巻 六波羅行幸巻」(展示風景)鎌倉時代 *「総合文化展」(東京国立博物館 本館2室)

私はボストン展→静嘉堂文庫→東博平常展の順に見終えましたが、次はいつやって来るかも分からないこの機会、たとえ静嘉堂が巻替えであろうとも、追いかけて良かったと思いました。

ちなみに東博と静嘉堂文庫では「平治物語絵巻相互割引」と題し、各半券を見せると東博では100円引き、静嘉堂文庫では200円引きとなります。また言うまでもなく東博の総合文化展はボストン美術館展のチケットでも観覧出来ます。

それに静嘉堂では展示作品、絵巻の場面解説などを記載したリーフレットもいただけました。

「すぐわかる絵巻の見かた/榊原悟/東京美術」

上野と二子玉川を通じての世紀の「平治物語絵巻」同時公開、是非ともお見逃しなきようにおすすめします。

注)「平治物語絵巻 三条殿夜討巻」の写真は、「ボストン美術館 日本美術の至宝展」の報道内覧会時に主催者の許可を得て撮影したものです。
コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )
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コメント
 
 
 
やはり3巻見ねば... (noel)
2012-05-17 01:56:56
といてもたってもいられず(笑)静嘉堂に行ってきました! 素晴らしかったですね~~
トーハク国宝室はまだなので、ボストン美再訪も兼ねて、早く三巻制覇せねばです!
 
 
 
Unknown (はろるど)
2012-06-12 01:46:17
@noelさん

こんばんは。

>早く三巻制覇

いやはやこの機会を逃すと次いつか出来るか分かりませんよね。

コンプリートされたようで何よりでした。
 
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