ひとまわり前の子年に起こした人形で、今戸人形最後の生粋の作者であった尾張屋 金沢春吉翁(明治元年~昭和19年)がお作りになっていた人形をお手本にして作ったものです。このねずみ自体大黒様の姿をしているわけではありません。裃姿でも口入狐のプロポーションとも微妙に異なります。推定ですが口入狐は裃雛のプロポーション、この大黒天ねずみは福助(叶福助ではなく、福助お福の対の福助)のプロポーションと同じように考えられます。
なぜこの姿のねずみが「大黒天ねずみ」なのかといえば、もともとねずみは大黒様のご眷属だといわれていますが、その上に、両手で二股大根と宝珠を持っています。ここがミソで「大根喰う=だいこくう=大黒」つまり「地口由来」なんです。こういうのって昔の江戸東京の洒落た感覚ですね。
背面に「大黒天」の朱書きがあるのも尾張屋さんとおりです。
これまでこの「大黒天」ねずみの色違いの配色を確認しながら三通りの配色を塗り分けて出していたのですが、ご存じのとおり今年は何度も入退院を繰り返していたため準備に時間を十分とれなかったためとりあえず画像のようにねずみ色の裃、朱色の振袖のパターンだけ間に合わせて作りました。
第二の配色は画像と同じねずみ色の裃に振袖が群青色、第三の配色は裃がべんがらの茶色に振袖が群青色、つまり今戸の福助の配色と同じです。 、、、というように春吉翁は色違いで塗っていらっしゃたと把握していました。しかし最近また新たなパターンを発見しました。
時間があればやってみたいとは思っています。