知的財産研究室

弁護士高橋淳のブロクです。最高裁HPに掲載される最新判例等の知財に関する話題を取り上げます。

創作説と混同説

2011-06-07 07:52:31 | 意匠法

意匠の類比の判断について創作説と混同説とが対立している。意匠法の目的からは創作説が自然であるが、判例は混同説である。

判例が混同説を採る理由は、創作性の大小の判断が主観的かつ困難であることを前提にして、創作性の高い意匠は混同可能性が高いという経験則の下、混同可能性というより客観性の高い基準を志向するためと思われる。

しかし、創作性の大小の判断の主観性・困難性と混同可能性の判断の主観性・困難性とは、程度の問題にすぎないし、創作性の大小の判断については、調査官、専門委員の活用により、客観性を高めることも可能である。

従って、意匠の類比の判断については、混同可能性をベースにしつつも、その判断の際には、創作性の大小(新規性・非容易性)を重視すべきである。この意味において、創作説と混同可能性説は統合されるべきである。

また、近時の裁判例を見ると、類比の範囲が狭いのではないかとの疑問があり、これは、意匠の審査において、類比が狭く把握されていることによると思われる。しかし、特徴のある意匠を適切に保護するという観点からは、裁判においては、意匠の審査実務にとらわれることなく、虚心坦懐に類比判断を行うべきであり、そのような判断が、ひいては、審査実務jの改善をもたらすと思われる。

他方、審査実務に関しては、公知意匠のみならず、デザインにおける常識をも加味して判断することにより、「新規性・非容易性」を欠くとの判断を積極的に行っていくべきと思われる。


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