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私は自らの手で、戦士の誇りも大切な部下も殺してしまった!

2019-04-22 18:43:09 | ガンダム

 

不定期掲載ガンダム記事、“宇宙世紀に散ったキャラクターたち”。

今回は、“騎士道を重んじ、理想とは程遠い現実を目の当たりにして自ら死を選んだ男”。

機動戦士Vガンダムより、ワタリー・ギラ

 

 

前回のルセット・オデビーから、およそ一年ぶりの記事。

モチベーションがないわけじゃなく、むしろ高い。

各記事の閲覧数も高く、検索エンジンでも割と上位に表示される。

もっと早いペースでどんどん記事を上げたいのだけど、

このシリーズ、作品の見なおしやら関連資料や昔のグッズを引っ張りだしたりとか、

準備にすんごい時間かかるのよ・・・。

 

 

宇宙世紀0153年。

地球圏を支配する地球連邦政府はたび重なる腐敗の末、

軍も弱体化して、その支配力も衰え、

各サイドは私設部隊を強化し、様々な勢力が隆起しては衝突が起きた。

地球圏の至る所で紛争が絶えない、宇宙戦国時代に突入し30年ほどの月日が過ぎていた。

 

 

サイド2で、女王マリア・ピァ・アーモニアを掲げ、ザンスカール帝国が勃興。

マリア主義を主張する帝国第一党、ガチ党の党首であり首相のフォンセ・カガチは、

ザンスカール帝国軍、“ベスパ”を設立。

旧世紀時代のような原始的な恐怖支配によって敵対勢力を黙らせ、

また女王マリアの不思議な力をアピールして、民衆を洗脳してゆき、

ついには地球連邦政府に宣戦布告し、大規模な侵攻作戦を始める。

30年前に起きた、バビロニア建国戦争以来の大規模な戦争、ザンスカール紛争がはじまる。

 

 

ヨーロッパを中心に侵攻を進めるベスパ。

地球攻略の司令、ファラ・グリフォン中佐の指揮のもと、

ベスパの地上攻略部隊、“イエロージャケット”が次々に勢力を拡げていく。

弱体化した地球連邦軍の部隊は、もはやイエロージャケットの敵ではなったが、 

ベスパの地球進行を拒まんと、新たな敵対勢力が現れ暗躍していた。

民間人の有志によって結成されたレジスタンス組織、リガ・ミリティアだ。

 

 

リガ・ミリティアは新たなモビルスーツを開発。

連邦やベスパのそれを上回る高性能のものを生み出していた。

多くの犠牲を出しながらも、リガ・ミリティアは抵抗を続ける。

その中心人物のひとり、オイ・ニュング伯爵はカミオン部隊を率い、

新型のモビルスツーツ、ヴィクトリーガンダムを用いて、イエロージャケットに抵抗していた。

 

 

しかしヴィクトリーガンダムのパイロット、マーベット・フィンガーハットが交戦中に負傷。

ポイント・カサレリアで偶然出会った少年、ウッソ・エヴィンが、

代わりにヴィクトリーガンダムのパイロットとして奮闘する。

ウッソは、わずか13歳の少年でありながら、英才教育によって培われたスペシャリストな能力を発揮し、

イエロージャケットのモビルスーツ、ゾロを撃墜する。

 

 

リガ・ミリティアの新型モビルスーツの情報は、

イエロージャケットの本拠地、ドイツのラゲーン基地にも届く。

ファラ・グリフォン中佐、副司令のゲトル・デプレ大尉らがこのことを察知し、

その対策を考えようとしていたとき、戦友の仇を討たんと、ひとりのパイロットが無断出撃する。

先の戦いで負傷して帰投していた、ガリー・タン少尉。

ガリー・タンは軍医から痛み止めを奪い取り、

それを飲みながら、新型偵察機ゴッゾーラのコクピットに乗り込む。

 

 

ガリー・タンの無断出撃の報がファラ中佐の元に伝わる。

ファラ中佐はすぐにモビルスーツ格納庫へと移動する。

ゲトル・デプレと、そしてもうひとり、大柄の黒人男性がファラに付き添う。

スキンヘッドに口ひげ、強面のパイロット、ワタリー・ギラ大尉だ。

その騎士道を重んじる実直な性格と、

彼が率いる戦闘小隊の戦い方はベスパのなかでも知られていた。

  

 

痛々しい包帯姿のまま、痛み止めを口に放り込み、

コックピットに居たメカニックを無理やり引きずり出し、

戦友の仇打ちのためだと、強引にゴッゾーラに乗り込むガリー・タン。

「やめろガリー!その体では無理だ!独房入りになってもいいのか!?」

その様子を見て、思わず叫ぶワタリー・ギラ。

 

 

「サバトの復讐を遂げさせてください!」

ワタリーにそう言い返し、聞く耳を持たないガリー。

親友であり戦友であった、ライオール・サバトの仇打ちをしようとしていたのだった。

「ガリーを止めろ!」

周囲の兵たちにそう怒鳴るワタリーだったが、ファラ中佐がそれを制止する。

「行かせてやればいい。恋人が殺されれば ああもなろう。」

「はぁ?」

それを聞いて横で怪訝そうな顔をするデプレ大尉。

すぐに続けるファラ中佐。

「たとえ話だ、憎しみはどんな武器よりも力を発揮する。」

 

 

 

それを聞いて、ワタリーもガリーを止めることを諦める。

ファラは不敵に笑みながら、ガリーが出てゆくのを見届ける。

「ワタリーも、ガリーが白いモビルスーツと接触するなら、それを見てからの方が戦いやすかろう?」

「はぁ、もちろんであります。」

ワタリーはそう返したが、ガリーを捨て駒のように扱うファラに対し、少し不満気のようだった。

 

 

ゴッゾーラで単独出撃したガリーの後を追って、

ファラ中佐以下、デプレ大尉とワタリーも、

テスト中の大型モビルアーマー・リカールに乗って、ラゲーン基地を出る。

しかしガリー機の支援など戦闘には参加せず、

ガリーが接触するであろう、リガ・ミリティアの新型モビルスーツの情報収集が目的だ。

 

 

ほどなくしてガリーはリガ・ミリティアのカミオン部隊と接触する。

サバトが撃墜され、自身も戦闘によって負傷した地点。

その付近にリガ・ミリティアの秘密工場が在り、あの新型が潜んでいると見当がついていた。

ガリーの駆るゴッゾーラの急襲に遭い、混乱に陥るカミオン部隊。

少ない人員と武器で応戦する。

ウッソもまた、コアファイターで出撃する。

 

 

 

ヴィクトリーガンダムはコックピットである小型戦闘機がドッキングしてモビルスーツ形態となる、

いわゆる、コア・ブロックシステムを採用した機体。

カミオン部隊が、上半身となるトップリム、“ハンガー”と、

下半身となるボトムリム、“ブーツ”を射出する。

その間、ウッソは牽制しつつ、ガリーの攻撃を避けながら上空で次々とドッキングしてゆく。

 

 

 

小型戦闘機がいつのまにか大型の戦闘機に、そして最終的には人型のモビルスーツになる。

複数の戦闘機とモビルスーツが別個に潜んでいると思っていたガリーは驚愕し、翻弄される。

その戦いの様子を高高度から観察する、リカールに乗っているファラたち。

「判りましたよ、リガ・ミリティアの開発しているマシンは。」

戦闘をモニタリングしながら、ファラにそう告げディスプレイを見せるワタリー。

「ほう、それか。」

感心して見入るファラ。

なるほど、ゾロを撃破できる性能を秘めたモビルスーツだという事が判った。

 

 

「ワタリー、痛みでよく動けんようだな。」

翻弄されるガリーを見て、ファラはワタリーに訊く。

このとき、ファラはガリーのゴッゾーラに対し、リカールでの援護を考えていたかもしれない。

だが、ワタリーが笑みを浮かべて返す。

「戦士に死に場所を与えてやるのも温情と思いますが。」

ガリーの性格を知ってか、もしくは自分の戦士としての美学からか?

ワタリーはファラへ、手出しせずにこのまま帰投するべきだと意見する。

 

 

「そうだな、このリカールとゴッゾーラのテスト飛行のデータも手に入れられた。 」

「メッチェ、基地へ帰投だ。」

操縦士のメッチェ・ルーベンスにそう命令し、リカールは反転。

ファラ達はそのまま苦戦するガリー機を置いて、ラゲーン基地へと帰投する。

 

 

 

ガリーのゴッゾーラは間もなく撃破され、リガ・ミリティアの捕虜となる。

「キサマたちを皆殺しにしてやるからなァ!」

傷だらけになり、ストレッチャで運ばれながらも、暴れ叫ぶガリー・タン。

敵の兵士を目の当たりにして、ウッソは戦っている生身の人間の存在に驚愕するのだった。

 

 

 

その夜、リガ・ミリティアの秘密工場で緊急の集会が開かれていた。

「ここがベスパに知られた以上、一刻たりとも猶予はできないので、

この工場の設備と機体は直ちに分散させる。」

オイ・ニュング伯爵が、大勢のメンバーたちの前でそう告げる。

夜通しで、その作業が開始される。

そして夜が明け太陽が昇る頃、ようやくその第一陣が出発する。

 

 

 

ちょうどその頃、イエロージャケットのラゲーン基地からゾロの中隊が出撃していた。

ワタリー・ギラ率いる、ワタリー戦闘小隊と、爆撃小隊を含めた部隊だ。

司令室から、出撃するワタリー達を見送るファラ中佐。

ガリーが交戦したことで、リガ・ミリティアの秘密工場の場所を突き止めた。

敵のモビルスーツの情報も得た。

直接それを見ていたワタリーに、その殲滅を任せるのは当然だった。 

 

 

 

「第一の目標は、リガ・ミリティアの工場を破壊することである!」

ワタリーはゾロの部隊にそう命令する。

森林のそのポイントに到達すると、いっせいに爆弾を投下し爆撃を開始する。

まだ移設作業の真っ最中だったリガ・ミリティア。

イエロージャケットの急襲に、大混乱に陥ってしまう。

 

 

 

ゾロ全機、爆弾の投下を終える。

「 全機、弾倉を捨て、逃げる者を確固撃破しろ!」

ゾロは地上に降り、森の中を縫って逃げる大型車輛を次々と撃破していく。

「リガ・ミリティアのモビルスーツを捕獲するまでもなかったか。」

あまりに簡単に攻略でき、そうつぶやくワタリー。

爆撃によって、既に破壊してしまったか、まったく出てこない昨日の白いモビルスーツ。

 

 

だが、次の瞬間、小型戦闘機が現れる。

「出たなあ!白いモビルスーツのコクピット!」

先に戦闘を観察してコア・ファイターがドッキングしてモビルスーツになることを把握していた。

だが、なかなかドッキングせず、コア・ファイター一機のみで、ワタリーの戦闘小隊に応戦してくる。

「支援戦闘機にしては火力もない。 逃げるのには都合よかろう!」

敵が逃げることを優先していると考えたワタリー。

 

 

 

「パイロットは素人だ!ビビったぜ!」

「こんなのにサバトとガリーはどうしてやられたんだ!?」

たった一機の小型戦闘機、攻撃も牽制も散発。

ワタリーの部下、バク・チーディ・トランプがそう叫ぶ。

しかしワタリーは二人に怒鳴る。

「油断させようとしているんだろうが!」

そうして続ける、「戦士がどういうものか、教えてやるっ!」

 

 

 

退避と応戦で大混乱のリガ・ミリティア。

カミオン部隊で老人たちの怒号が起こる。

火力のないウッソのコア・ファイターを支援するため、地上からビームライフルを放つ。

そして、コア・ファイターからガンダムになるため、ハンガーとブーツを射出しなければならない。

カミオン部隊と行動を共にしていた少年たちも、戦闘にかりだされる。

 

 

イエロージャケットの空襲によって焼け出された少女、

カテジナ・ルースもまた、カミオン部隊に身を寄せていた。

カテジナはウッソのメールフレンドで、憧れのおねえさんだった。

そんな彼女だったが、戦いに加担するウッソをよく思っていなかったし、

子どもたちを平然と戦争に巻き込むリガ・ミリティアのやり方に異を訴えていた。

しかし、この混乱のなか、カテジナ自身もカミオン部隊の人たちとともに、ウッソの支援をするしかなかった。

 

 

「噂には聞いている、ワタリー・ギラ戦闘小隊の戦い方に興味が湧くが・・・。」

上空の戦闘を見ながら、赤毛の青年がつぶやく。

ベスパのパイロット、クロノクル・アシャー

ザンスカール帝国の女王、マリアの実弟であるクロノクル。

先の戦いで乗機を失い、ラゲーン基地へ帰投できなくなったものの、

リガ・ミリティアの秘密工場にまんまと潜入していた。

そのクロノクルが、リガ・ミリティア組織の内情を知り、オイ・ニュング伯爵という重要人物を認知する。

ワタリー戦闘小隊の攻撃で混乱するなか、クロノクルはそれに乗じて帰投を企てていた。

 

 

 

ウッソは支援を受けつつ、射出されるパーツでドッキングしていく。

「ドッキングすると、武装が強化されるぞ!」

コア・ファイターとトップリムがドッキングした状態、トップファイターの段階で、既にバク機は小破。

ガリーのときと同じく、翻弄されてしまうワタリー戦闘小隊。

 

 

地上では、混乱に乗じてクロノクルがオイ・ニュング伯爵を捕えていた。

「オイ・ニュング伯爵、一緒に来てもらおう。」

銃を突きつけ、周りの人間を制止し、そばに居たカテジナ・ルースにワッパの運転をさせ、

伯爵とカテジナ、ふたりを人質として獲り、まんまとカミオン部隊を離れる。

  

 

「これ以上、ドッキングはさせん!」

そう叫びながら、必死に応戦するワタリーだったが、被弾したバクが狙い撃ちされる。

「ちゅ・・中尉、援護してください!」

たまらず悲鳴をあげるバク。

バクを援護したくても相手が速すぎて、自分たちも応戦に必死なワタリーとトランプ。

「持ち堪えろっ!」

非情にもバクにそう叫ぶワタリー。

 

 

バク機は滞空するための装置、ビームローターの基部をやられる。

「やられたぁ! これ以上飛行はできないっ! なんとかしてください!」

自力で滞空が困難になり、空中での行動がとれなくなったバク機。

モビルスーツを放棄して脱出するよう命令するワタリー。

「うわぁ来たぁぁ!!」

パニックに陥ったバクは、ワイヤーを飛ばしてトランプ機にすがる。

「やめろバク!」

このままでは、バク機もろともトランプ機も狙われてしまう。

 

 

 

「戦士が死を恐れてどうする!」  

部下の醜態に、ワタリーが動く。

「怯えを見せて、なんとするか! バクゥ!!!!」

そう叫ぶと、ビームサーベルでトランプ機に付けたワイヤーを切断。

きびすを返し、そのままバク機のコックピットを貫く。

沈黙し、ゆっくりと落下するバク機。

ワタリーは戦場で見苦しい行動をとった部下を躊躇せず殺した。

 

 

 

 

「ベスパは味方まで殺すのか・・・!?」

その様子を見ていたウッソは、ワタリーの行動に驚愕する。

白いモビルスーツを見てワタリーは、

かつて“ガンダム”と呼ばれた伝説のモビルスーツと重ねた。

「くぅぅ白いモビルスーツがぁ!」

「 ガンダムが抵抗のシンボルなどという伝説は、 このワタリー・ギラが打ち砕いてやる!」

 

 

 

「地球連邦軍という体制に反逆しているのは我々だぞ!

真のガンダムなら、我々と手を組むはずだぁ!」 

鬼の形相でウッソに攻撃を仕掛けるワタリー。

だが、ウッソのトリッキーな応戦により、トランプ機も中破。

「我々は白い奴の武器の展開を見落としていた・・・。」

ワタリー達は一時撤退を余儀なくされる。

 

 

 

「敵はいくつにも別れて脱出しています。」

「ガッダール隊の派遣の必要を認めます。」

司令部へ報告するワタリー。

そこへ一台のワッパが進んで来る。

オイ・ニュング伯爵とカテジナ・ルースを人質に獲り、

カミオン部隊から逃げてきたクロノクルの乗ったワッパだ。

 

 

 

「・・・先ほどの戦い方は、騎士道を重んずるワタリー・ギラ大尉の戦い方とは思えませんでしたが。」

たった一機のモビルスーツにやられたことか?

部下の機体を撃墜したことを責めているのか?

クロノクルは、ワタリーに対しそう意見する。

だが、ワタリー自身、言われなくとも 己のぶざまさを痛感していた。

「貴公に言われるまでもない。」

そう返すワタリー。

 

  

「やめなさいっ!」

カテジナの叫び声。

ワタリーとクロノクルがカテジナの方を見やる。

伯爵とカテジナを見張っていたトランプが、カテジナのスカートをめくっていた。

「えらぶったツラしやがってよぉ! 戦いの後ってのは、こっちだってイラついてんだぜ!」

悪びれる様子もなく、トランプはカテジナに対してそう吐き捨てる。

 

 

「貴様、何をした!?」

トランプに詰め寄るクロノクル。

人質に対し非人道的な行為は許されない。

クロノクルはこのあたり、良識的な人物であった。

「おっしゃいますねえ、自分だけ楽しむだけに女を捕虜にしたなんて言わせませんぜ、中尉殿!」

トランプは下品な笑みを浮かべ、クロノクルに食ってかかる。

女王の実弟ということで優遇されているクロノクルに対し、

トランプら一般兵たちは、妬みと嫌悪感を抱いていた。

 

 

「女王陛下の弟だからって、いつまでも遠慮はしませんぜ!」

トランプとクロノクルの口論がはじまる。

それを静観するワタリー。

「俺達だって体を張っている! そのうえ大尉への口のききようの無礼なこと!」

トランプは続ける。

「アンタだってあの女と遊ぶつもりで連れて来たんだろ?」

そうトランプが怒鳴ると、すぐにカテジナが反論する。

「この方はそんな人じゃないわ!」

伯爵とカテジナを捕虜にした際、そしてここに来るまでの間も、

クロノクルが二人を気遣い、紳士的であったことをカテジナは知っていた。

 

 

カテジナの反論を聞いてトランプがクロノクルに放つ。

「もう地球の女を手なずけたのか?ええ?」

ふたりのもみ合いが続くが、トランプの持つライフルがクロノクルの胸を突く。

「色男はレジスタンスの基地で殺されたことにしとこうかよ!」

そうトランプが叫び、ライフルの引き金に指をかけ、不敵な笑みを浮かべた瞬間、銃声が鳴り響く。

 

 

 

ライフルを落とし、ゆっくりと地べたに倒れるトランプ。

ワタリーがトランプの側頭部を撃ち抜いていた。

助かったものの、唖然とするクロノクル。

「部下の非礼をお許しいただきたい。」

銃をしまいながら、静かにクロノクルに謝罪するワタリー。

そして軍人口調になり、こう続ける。

「ワタリー・ギラ戦闘小隊は、最後の一機まで死力を尽くして戦ったと、

カイラスギリーのタシロ・ヴァゴ大佐にはご報告いただきたい。」

 

 

クロノクルはそれを聞いてうなづきつつも、ワタリーに問う。

「大尉・・・これがあなたの騎士道ですか?」

ゾロのコックピットに進もうとするワタリー。

振り向き、笑いながら答える。

「・・・まさか。 いろいろ予定がありましたがな、騎士道など所詮は理想でありますよ。」 

そう言うと、ゾロに乗り込み、クロノクルたちの前から消える。

 

 

その頃、ウッソの乗るヴィクトリーガンダムは、

行方不明になってしまった、幼馴染みの少女シャクティ・カリンの捜索に出ていた。

森の中を低空飛行しながら、シャクティたちを探すウッソ。

途中、開けた場所で、横たわるゾロの機体を発見する。

さっきワタリーが射殺した、部下のトランプの機体だった。

 

 

 

ウッソ機はゾロの前に立ち、センサーでパイロットの生存を確認していると、

突然、そのゾロが大爆発を起こす。

ワタリーの仕掛けたトラップだったのだ。

爆発に巻き込まれ怯んだヴィクトリーガンダムを、地面に潜んでいたワタリーのゾロが襲い掛かる。

「私は自らの手で、戦士の誇りも、大切な部下も殺してしまった!」

パンチやビームサーベル、怒涛の格闘攻撃でウッソを翻弄する。

 

 

 

 

 

「ガンダム、呪われた名前は、地獄へ落ちろっ!」

「われらの前に立つべき名前ではないっ!」

気迫のこもった攻撃に圧されてしまうウッソ。

「何! なんなんだ、こいつは!?」

ワタリーの攻撃で次々と武器を失うウッソのヴィクトリーガンダム。

「バルカンも、ライフルも、サーベルも・・・!」

丸腰になって、地面に叩きつけられるウッソ。

そこへサーベルを構えて突進するワタリー。

「落ちろよ!」

 

 

 

 

 

「終わりだっ!!何ぃ!?」

だが、切り落とされたガンダムの腕から、サーベルがこぼれていた。

とっさにそれを拾い、ウッソは突進してくるワタリーめがけて投げつけた。

ビームサーベルは、ゾロの胸部に突き刺さり、そのまま落下。

ワタリーは脱出装置を起動するも、「行かせるもんか!」と、

そのコックピットをウッソがワイヤーでからめ取り、その場に落とす。

 

 

「お前が・・・ 白いモビルスーツのパイロットだというのか?!」

コックピットから降り、ウッソと対峙したワタリーは驚愕する。

「いけないですか!? 仕掛けてくるから、ボクは・・・!」

ウッソが答えるが、それを遮ってワタリーが嘆き叫ぶ。

「こ・・・こんな現実が・・・こんな現実があるというのか!?」

大粒の涙をこぼし、号泣するワタリー。

 

 

 

「まだ遊びたい盛りの子どもが・・・こんなとこで、こんなことしちゃ・・・いかん!」

「子どもが・・・戦争をするもんじゃない・・・!」

「こんなことをしていると・・・ぐっ・・・みんな・・おかしくなってしまう!」

「そうなる前に、モビルスーツを降りた方がいい。」 

あまりに非現実的で残酷な現実に絶望し、泣きながらワタリーはウッソに訴え続ける。

「やりたくてやっているんじゃないですよ!」

ウッソも反論するが、ワタリーには到底、受け容れることのできない現実だった。

 

  

 

既に重症を負って、立つこともままならない状態のワタリー。

そのまま倒れ込む。

「くっ・・・現実がこんなに残酷とはな・・・。」

仰向けになり、涙を流し続ける。

そして手榴弾を取り出し、ウッソに言う。

「離れろ・・・私から離れろ! 早く・・行け!」

一瞬、理解できずにたじろぐウッソだったが、すぐに走り出す。

目を閉じたワタリーは最後につぶやく。

「・・・まったく!」

 

 

 

その瞬間、爆発が起き、ウッソは爆風で大きく吹っ飛ばされる。

立ち上る炎と煙。

自分の理想によって、部下を二人も自らの手で殺め、

さらに、そのきっかけとなった敵が、年端もいかない少年だという現実。

それらを受け容れることができず、戦士、ワタリー・ギラは自ら死を選んだのだった。

「どうしてさ・・・どうしてさ!」

ウッソは倒れ込んだまま、悔しがりながら泣き叫ぶのだった。

  

 

その後、クロノクル・アシャーは捕虜二人を連れてラゲーン基地へと生還する。

彼が捕えたリガ・ミリティアの重要人物、オイ・ニュング伯爵は、

その後、ファラ中佐の拷問にかけられるも、口を割ることはなかった。

ザンスカールに刃向った見せしめとして、ギロチンにかけられ公開処刑されてしまう。

だが、伯爵の処刑は、反ザンスカールの声を高めてしまい、

リガ・ミリティアをより結束させ、強固な組織にしてしまう結果になる。

 

 

もうひとりの捕虜だった少女、カテジナ・ルース。

彼女はクロノクルが預かることとなり、ザンスカール本国へと移送される。

クロノクルを慕い、そこでマリア主義に感化され染まってしまった彼女は、

あろうことか、ベスパのパイロットとしてウッソの前に立ちはだかり、

最後までリガ・ミリティアを苦しめる脅威の存在となる。

「怖い人にだけはならないでね。」

ガンダムに乗るウッソに、そう言っていたカテジナが、

作中、いや、宇宙世紀史上、もっとも怖い人物へとなってゆく。

 

 

 

 

ワタリー・ギラ

Vガンダムの序盤、もっとも印象的な死に方をするパイロットなので、覚えている人も多いはず。

スキンヘッドに口ひげ、ガタイの良さなど身体的な特徴もあり、

また、部下を平然と粛清する非道さも、とても印象的だ。

 

 

クロノクルが噂に聞くというだけあり、ベスパ内でも名のとおったパイロットであり、

ファラとデプレに次ぐ立場で、ラゲーン基地での地位はかなり上だったようだ。

小説版では、オイ・ニュング伯爵を捕虜にするのは、クロノクルではなくワタリー。

彼のゾロがリガ・ミリティアの攻撃で不時着した際、同時に不時着したクロノクル機と共謀してのことだった。

単身、カミオンに乗り込み、シートに座っていた伯爵をそのまま連れ去るという荒技をやってのける。

 

 

 

彼の魅力はなんといっても、ラストに号泣して果てるシーン。

主人公の目の前で爆弾で自爆するので、ファーストのランバ・ラルを彷彿とさせる。

子どもが戦争をやっているという現実に絶望して果てる。

ウッソには、それをやめるよう説得して、

常識をもった大人であるように見えるが、

単に子どもにやられたという現実と、部下のことも含め、

自身の理想、思い描いたように事が運ばなかったことへ対する、無念にもとれる。

 

 

 

ワタリーの最期の解釈は人それぞれで、色々激論されている。

その辺も含め、観た人へのインパクトは強烈で、

登場は二話のみと短かかったものの印象に残った人物だった。

「こんなことをしていると、みんなおかしくなってしまう・・・!」

ワタリーの印象的なこのセリフを、

本作のヒロインであるシャクティも、ほぼ同じセリフを発していて面白い。

Vガンダムの全体的に難解で、且つコアな内容を示す、いいキャラクターのひとりだった。

 

 

 

 

次回は、幼い弟妹を養うため、スパイに手を染め大西洋に散った戦災孤児の少女。

 

 

 

ワタリー・ギラ関連のトレカ。

 

 

放映当時、ガシャポンであったVガンダムのリアル頭身フィギュア。

当時は無彩色が一般的だった。

塗料で彩色することを考えると、肌色が出るのが一番ラッキーだった。

色がうまく乗らない赤や青は最悪。

 

 

分離形態、トップターミナルとボトムターミナルのセットも。

 

同シリーズのヴィクトリーガンダムと。

 

 

ヴィクトリーガンダムは、コアファイター、トップファイター,ボトムファイターのセットもラインナップにあった。

 

 

ラインナップ、ゾロは赤いのでクロノクル専用機だな。

 

序盤で登場するベスパの主力量産機なのに、未だプラモデル化されておらず、

立体化したのは、放映当時リリースされていたおもちゃ、MSインポケットのみという不遇なゾロ。

 

以前、ドラクエⅩでワタリー・ギラのコスプレをやったときのもの。

ドワーフ男のデフォルト顔の方が、より似ている。

 

 

ロープで縛ったあと、ちゃっかりカテジナのおっぱいを触っていたトランプ氏。

 

 

 

 



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