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原作の五郎に会いたい! 読み返すたびに腹がへる『孤独のグルメ』

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原作の五郎に会いたい! 読み返すたびに腹がへる『孤独のグルメ』

TVドラマが大ヒットし、松重豊さん演じる主人公・井之頭五郎の「腹がへった」という毎度のセリフが多くのファンの耳になじんでいる『孤独のグルメ』。漫画は2巻まで刊行され、ロングセラーとなっています。ドラマ版とはひと味違うのが、漫画に出てくる、いわばオリジナルの五郎。いったい、どんな店を訪れ、どんな料理を楽しんでいるのか? 漫画『孤独のグルメ』の世界を、今いちど徹底解説します!

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※当記事に記載の内容は全て「ぶくまる編集部調べ」です。また、当記事には一部ネタバレを含みます

『孤独のグルメ』 1~2巻 久住昌之 / 谷口ジロー/扶桑社

『孤独のグルメ』の基本情報

原作は久住昌之先生、作画は谷口ジロー先生が担当。雑誌「月刊PANJA」で1994年から1996年にかけて連載されました。その後、週刊誌「SPA!」2008年1月15日号に、読み切りとして復活。以後、断続的に新作が発表されました。単行本は1巻が1997年10月に、第2巻が2015年9月に発売。1巻と2巻の間には18年の年月が流れているという、実に息の長い作品です。
もともと漫画ファンの注目を集めていた本作が、さらに広く知れ渡ることになったのは、前述したTVドラマ化。2012年1月にSeason1 がスタートして以来、現在までレギュラーシーズンが8期までとスペシャルが6作、世に送り出されてきました。さらに台湾でも独自にドラマ化され、人気を呼んでいます。
漫画は、イタリア、フランス、スペイン、ブラジル、韓国など世界各国で翻訳版が刊行され、世界規模で読まれている作品に。この海外人気には、フランス政府の芸術文化勲章「シュヴァリエ章」などを受章し、特にヨーロッパで高く評価されている谷口ジロー先生の作画が、大きく関係しているように思われます。

『孤独のグルメ』のあらすじ

輸入雑貨の貿易商を営む主人公・井之頭五郎は、個人で仕事をしているため、食事も一人で取ることがほとんど。商談に向かった街で、気になる店を見つけては、「孤独のグルメ」を楽しみます。五郎の好む店は高級店ではなく、庶民的な店ばかり。街を歩いては気になった店にふらりと入り、黙々と(しかし、心の中では饒舌になって)料理を味わうという展開がほとんどで、食事シーンが多くのページを占めているのが、本作の特徴です。

『孤独のグルメ』の登場人物

井之頭五郎(いのがしら ごろう)

本作のメインキャラクターは、主人公の五郎のみ。いったいどんな人物なのか、その特徴を細かく紹介します。

仕事は個人経営の輸入雑貨貿易商、そして独身

『孤独のグルメ』井之頭五郎 輸入雑貨貿易商、そして独身

カタログを持ち歩いて顧客のもとに商談におもむき、店舗を持たないのが五郎の仕事術(事務所はあります)。そのため、いろいろな街に出かけていっては、一人で食事を取ることになるのです。「男は基本的に体ひとつでいたい」というあたりに、五郎の仕事観だけでなく、結婚観もあらわれています。

料理との、静かで熱い対話

『孤独のグルメ』井之頭五郎 料理との、静かで熱い対話

一人で食事をする五郎には、基本的に店員以外に会話する相手がいません。注文が出そろったら、そこからは料理との対話タイム。四角い枠に囲まれたモノローグが多くなり、五郎の心の内が描かれていきます。このモノローグの多さが本作の特徴。五郎は注文を後悔することも少なくなく、正直なモノローグには、微笑ましいものがあります。

アルコールが苦手で、甘党

『孤独のグルメ』井之頭五郎 アルコールが苦手で、甘党

体質的に、酒は一滴も飲めない五郎。その代わり、甘い物には目がなく、特に和食系の甘味が大好物です。

愛煙家

『孤独のグルメ』井之頭五郎 愛煙家

実は喫煙者である五郎。食後の一服は愛煙家にはたまらないという感じでタバコをくゆらせるシーンがいくつも登場します。しかし、タバコを吸える場所がどんどん街からなくなっているのが現状。ドラマ版では、途中から五郎はタバコを吸わなくなったそうです。

食欲旺盛、たまに食べ過ぎも

『孤独のグルメ』井之頭五郎 食欲旺盛、たまに食べ過ぎも

気になったメニューを、食べている途中でどんどん追加オーダーしていく五郎。食欲旺盛で健康的ですが、食べ過ぎることもしばしば。昼からひとり焼き肉を始めた1巻第8話では、肉とご飯をたらふく食べた後にチャプチュ(春雨の五目炒め)を注文し、さらにご飯もおかわり。「うおォン 俺はまるで人間火力発電所だ」は、屈指の名セリフです。

古武道の経験者

『孤独のグルメ』井之頭五郎 古武道の経験者

古武道をたしなんだことがある五郎。あれだけ食欲旺盛でありながら、お腹が出ているということはなく、筋肉隆々のたくましい体の持ち主です。1巻第12話では、洋食屋のイヤミな店主に乱暴されて、つい関節固めをしてしまうシーンも。

列に並ぶのは嫌い

『孤独のグルメ』井之頭五郎 列に並ぶのは嫌い

列ができていたラーメン屋をスルーして、いい感じにさびれた店に入り、料理が来る前のサイダーを味わう五郎。なぜ、並ぶのが嫌いかという、五郎の哲学が語られたシーンです。

かつての恋人も登場?

『孤独のグルメ』井之頭五郎 かつての恋人も登場?

若い頃にパリにいた経験がある五郎。そのときに出会い、恋愛関係に進んだ女性・小雪(さゆき)が1巻第5話に登場します。なんと職業は女優。また、2巻第2話では二人のなれ初めのシーンも。食べているだけではない、五郎の別の一面が分かります。

『孤独のグルメ』の魅力

実在の店が、高い再現性によって登場

『孤独のグルメ』実在の店が、高い再現性によって登場

原作の久住先生は、毎回ストーリーを文章化し、現地取材で撮影した2〜300枚とともに谷口先生に渡していたということ。それを元に描かれた街並みや飲食店は、実にリアルで再現性の高いものになっています。さらに、1巻は最後のエピソードを除いて、全て1990年代に描かれたもの。今はなき店も登場していて、当時を知る読者にとっては、郷愁をそそるものに。たとえば、第18話に登場する渋谷の餃子のお店。五郎が列に並ぶのを嫌がった人気ラーメン店は今でも実在しますが、餃子のお店のほうは既になくなってしまったとのこと。

コンセプトは「ハードボイルドグルメ」?

『孤独のグルメ』コンセプトは「ハードボイルドグルメ」?

谷口先生が本作の作画の依頼を受けたとき、「ハードボイルドグルメです」という説明が、担当編集者からあったそうです。たしかに、ひとりきりで街を歩き、店を探す五郎は、探偵のようなたたずまい。特に連載開始当初は、ポケットに両手を入れて歩いたり、「おまけにどうやら俺はまたも路に迷ったらしい」という、かっこよさげなモノローグがあったりと、ハードボイルドタッチに描かれています。

久住先生による、メニューへのコメントに共感

『孤独のグルメ』久住先生による、メニューへのコメントに共感

五郎が頼んだメニューがテーブルに並ぶと、そこに付けられるのが久住先生による、ひと言コメントです。実際に食べているから書ける実感のこもったものばかりで、しかもユーモラス。このひと言コメントは、ドラマ版にも踏襲されています。

失敗談のあれこれがリアル

『孤独のグルメ』失敗談のあれこれがリアル

店選び、メニュー選びには失敗はつきもの。特に五郎は食に関しては、事前に下調べなどせず、自分の直感に従って行動するタイプなので、思い通りに事が運ばないことがしばしば。そんな失敗談のあれこれが、あるあるネタになっていて共感をさそいます。たとえば、新幹線の中で蓋を開けた温かいシュウマイ。周りから「シューマイ臭せェ〜〜」と言われてしまった時のいたたまれなさは、分かる! という感じ。

なんでやってしまうのか、食材被り

五郎の失敗で多いのが食材被り。しかし、どれも美味しければ、結果オーライなのです。一番最初の食材被りは、1巻第1話のブタ肉。

『孤独のグルメ』1巻第1話のブタ肉

2巻第1話ではイモ。コロッケはもちろん、きぬかつぎもむかごもイモです。ホントに「あちゃあ」です。

『孤独のグルメ』2巻第1話ではイモ

さらに、同じ店で今度はマグロ被りに。しかし、「ひとり飯誰気にすることなし」と食材被りを楽しむのが五郎。食べたいときに食べたいものを食べる。それが五郎にとっての、最高の贅沢です。

『孤独のグルメ』今度はマグロ被り

谷口ジロー先生の作画力

『孤独のグルメ』谷口ジロー先生の作画力

フランスのバンド・デシネの作家から強い影響を受けた谷口先生。料理や背景のリアルさは言うまでもなく、日本だけでなく世界の読者を魅了しています。
1巻の巻末には久住、谷口両先生と芥川賞作家の川上弘美先生の鼎談が掲載されていて、作画の裏話もたくさん語られています。それによると、ひとコマに一日かけることは普通とのこと。また、1巻で最も苦労したのは、大阪のたこ焼き屋のシーン。たくさんの登場人物が狭い店内で会話を繰り広げる様子をどう自然に見せるか、緻密な演出が施されているのです。

五郎の軽妙なセリフが面白い

『孤独のグルメ』五郎の軽妙なセリフが面白い

2巻に入ると、特に増えてくるのが五郎の軽妙なセリフ。「なくてけっこう コケコッコー」なんていう言葉は、連載開始当初の五郎には、ちょっと想像できません。でも、年月を得て柔らかみを増した谷口先生のタッチとも相まって、この軽妙さがとても心地良く、面白いのです。
2巻第10話では「こんな名店があるとは思いもヨルダン大使館」といったダジャレも。こういうダジャレは、ドラマ版の松重さんの五郎と通じるものがあります。

漫画にも海外編が

『孤独のグルメ』漫画にも海外編が

2巻の最終話の舞台はパリ。かつてパリで暮らしていた頃によく通ったアルジェリア料理店を、五郎は久しぶりに訪れます。異国の料理を食べつつも、つい欲しくなってしまうのがライス。オシャレなパリにいても五郎は五郎です。

おわりに

惜しまれながら、2017年2月にこの世を去った谷口ジロー先生。漫画の「孤独のグルメ」は現在発表されているものが全てとなってしまいました。しかし、全2巻で描かれた井之頭五郎は、我々、読者の中で生き続けます。
ドラマ版は今後の展開もありそうですし、グルメ系アニメも多い昨今、本作のアニメ化も見てみたい気が。とにかく、毎日の食事を楽しむように、手元に置いて何度も読み返したい作品です。

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